
「こんなこと、誰にも話せない…」
介護の苦労は、友人や家族にも打ち明けにくいものです。一人で抱え込み、心が疲れていませんか?
介護者が陥りがちな「孤立」や「罪悪感」は、自分自身の心を深く傷つけます。そんなとき、専門のカウンセリングを受けることは、決して特別なことではありません。それは介護を続けるために、そして自分自身の心を守るために、最も有効な選択肢の一つです。
この記事では、介護で孤立しがちな家族介護者の方向けに、カウンセリングがもたらす効果や、その活用方法についてお伝えします。
カウンセリングとは?

カウンセリングと聞くと、身構えてしまう方もいるかもしれません。でも、それはあなたが抱える負担や感情を整理するための、安全な場所となります。
- 悩みの答えではなく、心の整理をする場所
カウンセリングは「悩みの答え」を教えてもらう場所ではありません。誰にも言えなかった本音や感情を安心して話すことで、自分の中にあるモヤモヤとした感情が整理され、状況を客観的に捉え直せるようになります。
- 感情とうまく向き合うヒントを得る
介護生活では、予期せぬトラブルや感情の波に直面することがあります。カウンセリングでは、そうした感情にうまく対処し、コントロールするための具体的なヒントを学ぶことができます。
- 「自分」を再発見するきっかけ
多くの介護者は、被介護者を優先するあまり、自分を後回しにしがちです。カウンセリングは、自分自身の感情や体の変化に気づき、改めて「自分を大切にすること」の重要性を再認識するきっかけとなります。
家族介護者にこそ必要な理由

カウンセリングは、単に「悩みを解決する」だけでなく、介護という特殊な環境で生じる心の問題に対処するために、以下のような役割を果たします。
- 介護の特性
介護は終わりが見えない長期戦です。そのため、一時的な相談ではなく、継続的なサポートが必要になります。
- 社会的な孤立
介護者の多くが社会的に孤立し、感情のはけ口を失っています。専門家との定期的な対話は、孤立を防ぎ、心の健康を保つために不可欠です。
- 複雑な感情
被介護者への愛情と、介護による疲労や怒りといった相反する感情に苦しむことがあります。専門家によるサポートは、そうした複雑な感情とうまく向き合う手助けとなります。
このように、心の安全を守るための手段として、一人で抱え込まずにカウンセリングを考えてみましょう。
カウンセリングの進め方と効果

実際にカウンセリングはどのように行われるのでしょうか。
カウンセリングの流れ
- 初回面談
介護の状況や、今感じているつらさ、カウンセリングで何を期待するかなどを話します。
- 対話と傾聴
ウンセラーはあなたの話をじっくりと聴き、感情や考えを否定せず、受け止めます。質問を通じて、あなた自身の内面にある答えを引き出します。
- セッションの継続
一度で全て解決するわけではありません。多くの場合、数回のセッションを継続することで、少しずつ心が軽くなり、状況が好転していきます。
得られる具体的な効果
- 介護の負担が軽くなる
感情が整理されることで、介護に対する気持ちが前向きになり、負担感が軽減されます。
- コミュニケーションが円滑になる
介護者自身の心が安定することで、被介護者や家族とのコミュニケーションが改善されます。
- 新たな視点が見つかる
一人で考えていた時には気づかなかった、介護サービスの活用や、気分転換の方法など、新たな選択肢が見つかることがあります。
カウンセラーの探し方と選び方のコツ

「どこでカウンセリングを受けられるの?」と不安に思う方もいるかもしれません。カウンセリングは身近なものでありながら、実際に探すとなると戸惑うことも多いものです。ここでは、あなたに合ったカウンセラーを見つけるためのヒントをお伝えします。
探し方
- 公的な窓口
地域の保健所や、市区町村の福祉相談窓口、地域包括支援センターなどで紹介してもらえる場合があります。
- 医療機関
精神科や心療内科の医療機関に、カウンセリング専門の部署が併設されていることもあります。
- 専門機関
家族介護者向けの専門相談窓口や、NPO法人が運営するカウンセリングサービスもあります。
- オンラインカウンセリング
自宅など、好きな場所からビデオ通話やチャットでカウンセリングを受けられるサービスが増えています。外出が難しい方や、夜間・休日に相談したい場合に有効です。
- 勤め先
会社に産業医やカウンセラーが常駐している場合、無料で利用できることがあります。
- 友人や知り合いからの紹介
すでにカウンセリングを受けている人から話を聞くことで、信頼できるカウンセラーを見つけられることがあります。
- ネット検索や口コミ
カウンセラーの専門サイトや口コミサイトで、自身の状況に合ったカウンセラーを探すことも可能です。
選び方のコツ
【相性】カウンセラーとの相性は非常に重要です。初回のセッションで「この人には安心して話せる」と感じられるかを確認しましょう。
【専門性】介護や家族問題に詳しいカウンセラーを選ぶと、より的確なサポートが受けられます。
【料金】公的な機関は比較的安価ですが、民間のカウンセリングは料金体系が異なります。事前に確認しましょう。
カウンセリングを受ける上での心構え

カウンセリングの効果を最大限に引き出すために、少しだけ心構えを持つことも大切です。
- 期待しすぎない
カウンセリングは魔法ではありません。一回で全てが解決するわけではないことを理解し、焦らずにじっくりと取り組みましょう。
- 「話すこと」がもたらす効果を信じる
うまく話そう、完璧に状況を説明しようと思わなくても大丈夫です。思ったことをそのまま言葉にするだけで、自分でも気づいていなかった本音や感情が見えてくることがあります。
- まず自分を一番に考える
「カウンセリングは贅沢だ」「私より家族が大変なのに」とためらう必要はありません。あなた自身が元気でいることが、介護を続ける上で何よりも大切なことなのです。
カウンセリングを受ける際の注意点

カウンセリングをより効果的に、そして安全に進めるために、以下の点に注意しましょう。
- 相性は最も重要
カウンセリングは、カウンセラーとの信頼関係が何よりも大切です。たとえ専門家であっても、「話しにくい」「どうも相性が合わない」と感じることはあります。
カウンセリングの効果を最大限に引き出すには、あなたが安心して本音を話せる相手を見つけることが不可欠です。初回で違和感を覚えたら、無理に継続する必要はありません。自分を責めず、他のカウンセラーを探すことも大切な選択です。
- 上手く話そうとしなくて大丈夫
カウンセリングでは、うまく状況を説明しよう、完璧に話さなければと身構えてしまうかもしれません。しかし、その必要はまったくありません。
カウンセリングは心の整理をする場所です。何から話していいか分からなくても、「とにかくつらい」「何だかモヤモヤする」といった、今の率直な気持ちをそのまま伝えてみてください。
カウンセラーは、あなたの言葉を否定せず受け止め、あなたが自分の気持ちに気づく手助けをしてくれます。沈黙の時間も大切な対話の一部なので、焦る必要はありません。
- 主治医への相談が必要な場合も
すでに精神科や心療内科に通院している場合は、カウンセリングを受ける前に必ず主治医に相談しましょう。病状によっては、カウンセリングが心身の負担になったり、治療の効果に影響したりする可能性があるためです。
主治医の許可を得ることで、より安全にカウンセリングを進めることができます。
最後に
カウンセリングは、単に介護の悩みを解決するだけでなく、思いもよらないところに根本的な問題を見つけるきっかけになることもあります。たとえば、過去の経験や人間関係のあり方など、根本的な原因に気づくことで、心の重荷が軽くなる人も少なくありません。
介護という大変な状況が、自分自身を見つめ直し、新しい自分を発見する機会になることもあるのです。
カウンセリングを活用して心を回復させ、再び前向きな気持ちで介護と向き合えるようにしましょう。それは、介護を続けるため、そしてあなた自身を守るための確かな支えとなります。
