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認知症の母に優しくできない・怒鳴ってしまう…自己嫌悪から抜け出す方法を元ケアマネが解説

2024年10月12日

TOP画像:タイトル「認知症の介護、どうしてやさしくできないの?」

「また怒鳴ってしまった…」
「あんなに怯えた顔をさせるつもりじゃなかったのに」

認知症の母に優しくできない——そんな後悔で胸を痛めていないでしょうか。でも、それはあなたが悪いのではありません。ずっと我慢してきた気持ちが、ある日ふと溢れてしまっただけです。

💡 ここでは「母」として書いていますが、父や義理の親、配偶者の介護でも、同じ苦しさを抱える方はたくさんいます。ご自身の状況に置き換えて読んでいただければと思います。

元ケアマネジャーとして14年・数百件の家族介護に関わってきた経験から、後悔のループを抜け出し、共倒れを防ぐ具体的な方法をお伝えします。

なぜ「認知症の母に優しくできない」のか?その本当の理由

頭を抱える女性と傾いた家のイラスト きっと大丈夫

「私はひどい子どもだ」と自分を責める前に、一度立ち止まって考えてください。

認知症の介護で感情的になってしまうのは、性格や愛情の問題ではありません。脳と心が、許容量を超えた負荷にさらされているからです。

介護者の脳は「慢性的な戦闘状態」にある

認知症の親を介護すると、毎日のように「予測できない出来事」が起きます。突然の怒鳴り声、同じ訴えの繰り返し、拒否、徘徊の不安——。

人間の脳は、予測できない刺激にさらされ続けると「扁桃体(へんとうたい)」が過活性化し、些細なことでも怒りや涙が出やすい状態になります。これは「意志の弱さ」ではなく、脳の疲弊による生理的な反応です。

親子だから「まあいいか」が言えない

他人の介護職員なら言える「まあいいか」が、子どもには言えません。これまで自分を育ててくれた親が変わっていく現実、立場が逆転する戸惑い、兄弟間の温度差、自分の仕事や家庭との板挟み——。

家族介護には、プロでも背負わない「感情の重さ」が乗っています。そのような状況で感情をコントロールできないのは、当然のことなのです。

怒鳴ってしまう前に、介護者の心に何が起きているのか

遠距離介護の不安・焦り・心配を表すイラスト

遠距離介護をしていたAさんのケースを紹介します。

「鍵がない!」1日に何度もかかってくる電話

最初は3〜4日おきだった母からの電話が、次第に1日に何度もかかってくるようになりました。
「家の鍵がない」
「誰かがお金を盗んだ」

仕事中に鳴り響くスマホの着信音に、次第に動悸がするように。ネットで調べるほど、徘徊・火事・詐欺など最悪のシナリオが頭をよぎり、仕事も手につかなくなっていきます。

1年ぶりの帰省で「醤油の買い置き7本」を発見

意を決して、車を3時間走らせ帰省しました。会ってみればいつも通りの母。しかし、台所の戸棚を開けると、同じ醤油が7本も並んでいました。「

いつもと何が違うか」をメモし始めると、衣類の汚れ、入浴の拒否など、電話では見えなかった異変が次々と浮き彫りになっていきます。「このまま放っておけない」――そう痛感した私は、それから毎週、往復6時間をかけて実家へ通う生活を始めたのです。

Memo:ケアマネからひとこと

「正常性バイアス」という言葉があります。「そんなはずはない」と打ち消そうとする心の防衛反応です。帰省して初めて実態が見えるケースは、決して少なくありません。気になったときが、動くときです。

「あの怯えた表情」が胸に刺さって離れない

腐った食材を捨てようとしたとき、母から激しい罵声を浴びせられました。親のためを思ってやっているのに、なぜこんなに責められるのか。

「いい加減にしてよ!」

思わず怒鳴り返したとき、母が見せたあの「怯えた表情」。その後も怒りが爆発することが続き、一人になると涙が流れて止まりませんでした。

Aさんは決して冷たい人ではありませんでした。離れて暮らしながらも母のことを気にかけ、毎週往復6時間をかけて通い続けた、愛情深い人です。あの怒鳴り声は、限界まで頑張ってきた心が発したSOSのサインだったのです。

これはAさんだけの話ではありません。もし今、介護の中であなたの感情が振り切れてしまうことがあるとしたら——それは「気付かなければいけない心のサイン」だと受け止めてください。

自分を責めるのをやめる、3つの対処法

職場に相談・勤め先の制度・地域包括支援センターの活用を示すイラスト

仕事を辞めてそばにいるしかない——そう思い詰めたときこそ、極端な決断をする前に、次の3つを試してみてください。

対処法1|会社に「今の状況」を話す

まず職場の上司か人事担当者に、現状を打ち明けましょう。「介護休業制度」「介護休暇制度」「勤務時間の短縮」など、会社には法律で定められた両立支援制度があります。

一人で抱え込まず、周囲に知ってもらうことが第一歩です。話してみると、ほっとしたという声をよく聞きます。

対処法2|地域包括支援センターに現状を打ち明ける

すでにケアマネジャーがついている方は、まずケアマネジャーに今の気持ちを伝えてみてください。まだサービスを使っていない方は、地域包括支援センターへの相談が第一歩です。高齢者の総合相談窓口として、苦しさや限界をそのまま話せる場所です。

Memo:相談の第一歩

地域包括支援センターに相談すると、介護の専門家「ケアマネジャー」を紹介してもらえます。保険の手続きからサービスの調整まで、介護を一緒に考えてくれる伴走者のような存在です。

対処法3|ケアマネジャーという「伴走者」を持つ

プロの目による見守り体制を整えましょう。ケアマネジャーが入ると、デイサービス・訪問介護・配食サービスなど、介護を「チーム」に分散できます。

一人で背負っていた重さを、複数のプロで分け合う。それだけで、感情的になる回数は劇的に減ります。Aさんも、サービス導入後は毎週の帰省が月1回になり、「お互いに笑顔でいられる時間」を取り戻すことができました。

父や義理の親、配偶者の介護でも同じことが言えます

ここまで「母」を例に紹介してきましたが、この記事でお伝えしている内容は、介護する相手が誰であっても本質的に変わりません。

父の介護は「感情が見えにくい」つらさがある

感情をあまり言葉にしない世代の父親は少なくありません。「何を考えているのか分からない」まま、一人で介護方針を決めなければならないケースが目立ちます。怒りや苛立ちの矛先が見えにくい分、逆に静かな消耗が積み重なりやすいのも特徴です。

義理の親の介護は「感情を出しにくい」つらさがある

配偶者の親を介護する場合、「他人だから」と気を遣い、実の親以上に感情を抑え込んでしまう方が少なくありません。怒鳴ってしまった自分を責める気持ちも、実の親の場合よりさらに強くなる傾向があります。

どちらの場合も、ここまでご紹介した対処法1〜3(会社への相談・地域包括支援センターへの相談・ケアマネジャーとの伴走)は、そのまま活用いただけます。相手が誰であれ、一人で抱え込まないことが、共倒れを防ぐいちばんの近道です。

専門家のサポートで「遠距離介護」は続けられる

離れていても安心 見守る目を増やすことを示すイラスト

Aさんがデイサービス・訪問介護・配食サービスを導入した結果、母に規則正しい生活リズムと「他人の目」が加わりました。混乱が落ち着き、Aさんは仕事を辞めることなく、月1度の帰省で穏やかな時間を持てるようになりました。

ひとりで抱え込んでいた介護を「複数のプロが支える体制」にしたこと。それだけで、母と私の関係は変わった。Aさんはそう話してくれました。

よくある質問

あなたはもう、十分に頑張っています

家族の立場で、常に平常心を保つことは不可能です。特に認知症介護は、日々の変化に心が削られます。

大切なのは、「自分を許すこと」と「プロに頼る勇気を持つこと」。

介護はひとりでするものではありません。周囲のサポートを受け入れる力こそが、これからの生活を守る最大の鍵になります。また自分を責めてしまいそうになったら、一度だけ深く息を吸って、こう思い出してください。

「怒鳴ってしまうのは、心がそれだけ限界まで頑張ってきたからだ」と。

プロの手を借りる、という選択

「介護保険の範囲では足りない」「急に手が必要になった」そんなときに頼れるのが、保険外の訪問介護サービス「イチロウ」です。認知症ケアにも対応しており、日中・夜間の見守りや通院付き添いなど、ご家庭の状況に合わせてオーダーメイドで手配してもらえます。遠距離介護で「自分がいない間が心配」という方にも、選択肢のひとつとして検討してみてください。


tefutefu

この記事を書いた人

tefutefu

元ケアマネジャー(支援300件以上、相談1000件以上)。企業向け「仕事と介護の両立」セミナー、一般の介護者向けセミナーの講師としても活動。これまでの経験をもとに、在宅介護者向けの認知症ケア情報や、介護をひとりで抱え込まないための情報を発信中。

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