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高齢者の食欲不振はどう改善する?食べない原因と対策 

2025年5月10日

体のエネルギーは食欲によって調整されますが、高齢になるとそのバランスが崩れやすくなります。例えば、入院や夏の暑さで食欲が低下し体重が減ると、元の食事量に戻すのが難しくなることがあります。食欲も体重も十分に回復せず、栄養不足が続くことで健康に影響を及ぼすことも少なくありません。

食欲不振を改善するには、まず原因を正しく理解することが大切です。食欲低下には、治療できる病気の影響や生活環境の変化など、改善できる要因が含まれています。

そのため、原因に応じた適切な対応を取ることで、食欲を回復し、健康的な食生活を維持することが可能です。

食欲不振の主な要因

食欲不振の原因はさまざまですが、大きく 生理的な要因、病的な要因、生活環境や社会的な要因 の3つに分けることができます。ここでは、それぞれの要因について詳しく説明します。

加齢による生理的な要因

高齢になると、身体の働きにさまざまな変化が生じ、それが食欲不振につながることがあります。

【体を動かす機会が減る】
筋力が衰えると動くことが億劫になり、活動量の低下につながります。この状態が続くと、さらに運動を避けるようになり、悪循環に陥ることがあります。また、運動量が減ることでエネルギー消費が少なくなり、食欲の低下にもつながることがあります。

【エネルギー消費が少なくなり、代謝が落ちる】
加齢とともに基礎代謝が低下し、エネルギー消費が少なくなります。その結果、体が必要とする食事量が減り、食欲の低下につながることがあります。また、消化機能が衰えることで食後の満腹感が長く続き、食事量がさらに減少しやすくなります。こうした変化が重なることで、代謝がさらに落ちる悪循環を招くこともあります。

【噛む力や飲み込む力が弱くなる】
加齢により顎の筋力が低下し、硬い食べ物が噛みにくくなります。また、唾液の分泌が減ることで食べ物が口の中でまとまりにくくなり、飲み込みづらく感じることがあります。嚥下機能も衰え、うまく飲み込めないことで誤嚥のリスクが高まり、食事への不安から食欲が低下しやすくなります。

【口の中の環境が悪くなる】
高齢者は歯周病のリスクが高まり、炎症や痛みが食欲低下の原因となることがあります。さらに、歯の喪失や合わない義歯によって噛む力が弱まり、食事のしづらさから必要な栄養を十分に摂取できなくなります。こうした状態が続くと栄養不足を招き、体力の低下や健康への影響が懸念されます。

健康上の要因

高齢者の食欲不振には、病気や薬の影響が関係している場合もあります。これらの要因によって食事を摂ることが難しくなり、結果として栄養不足に陥ることがあります。

【胃や腸などの消化機能に関わる病気】
消化器系の疾患は食欲低下を招き、食事を楽しむことが難しくなることがあります。例えば、慢性的な胃炎や胃潰瘍があると、食後の不快感や痛みを避けるために食事の量を減らすことが多くなります。また、腸の不調で便秘が続くと腹部の張りや違和感が増し、食べる意欲が低下しがちです。反対に、頻繁な下痢は胃腸に負担をかけ、食後の不快感につながることで食欲が落ちることがあります。

【記憶力や判断力に影響を与える病気】
記憶力や判断力が衰えると、食事を忘れたり、時間の感覚が曖昧になることがあります。特に認知症が進行すると、食事の管理が難しくなり、食事のリズムや摂取量が乱れやすくなります。さらに、食事への関心が薄れると、栄養不足が進んで健康に影響を及ぼす可能性が高まります。

【飲んでいる薬の副作用による影響】
服用している薬の副作用も、食欲不振を引き起こす要因のひとつです。高齢者は複数の薬を飲むことが多く、それぞれの薬が消化器官や味覚に影響を与えることがあります。

例えば、特定の降圧剤や抗うつ薬は、味覚に変化をもたらし、食べ物の味が分かりにくくなることがあります。また、胃腸の働きを鈍らせる薬があると、食べてもすぐに満腹感を感じてしまい、十分な量を食べられなくなることがあります。さらに、一部の薬には吐き気を引き起こす副作用があり、これが続くと食事を避けるようになってしまうことがあります。

生活環境・社会的な要因

高齢者の食欲不振は、身体的な変化だけでなく、生活環境や社会的な要因によっても引き起こされることがあります。

【食事の環境が変わる】
高齢になると、食事の環境が大きく変化し、一人で食べる機会が増えることがあります。これまで家族や友人と囲んでいた食卓が、次第に孤食へと移行すると、食べること自体への関心が薄れることもあります。

【社会的なつながりが減少する】
人との交流が減ると、生活の充実度が低下し、それが食欲にも影響を与えることがあります。人と会話する機会が少なくなると気分が落ち込みやすくなり、食事への興味も薄れがちです。

【食事の選択肢が限られ、準備が負担になる】
体力の低下や外出の困難さによって買い物の頻度が減ると、新鮮な食材を揃えることが難しくなり、栄養の偏りにつながることがあります。特に、野菜や魚、肉の摂取量が減ると、必要な栄養が不足しやすくなります。

さらに、関節の痛みや疲れやすさから調理を避けるようになり、簡単な食事が増えることで栄養バランスが崩れやすくなります。最近では物価高騰の影響で安価な食品を選ぶことで、必要な栄養を十分に摂れなくなることもあります。こうした要因が重なると、食事の選択肢が限られ、食への関心が薄れてしまうことがあります。

食欲不振の改善に役立つ対策

食欲不振を改善するためには、原因に合わせた適切な対応を取ることが大切です。食事の環境を整えたり、体の状態を見直したりすることで、食欲を引き出し、健康的な食生活を維持することができます。

医師に相談する

食欲不振が長く続く場合は、医師の診察を受けて原因を特定することが重要です。病気や薬の副作用が影響している場合は、治療や服薬の調整によって改善できることがあります。また、栄養状態が悪化している場合は、必要な栄養素を補うための具体的なアドバイスを受けることができます。定期的な健康チェックを行いながら、食欲低下を防ぐための対策を考えることが大切です。

口の中の健康を維持する

口腔の状態は、食事を楽しむために欠かせない要素です。歯の不調や義歯の違和感があると、食べること自体が負担になり、食欲低下の原因になってしまいます。歯科で定期的に検診を受け、歯や歯茎の状態をチェックすることで、噛む力を維持し、食事を快適に楽しむことができます。口腔ケアを習慣化し、歯磨きや口腔内の清潔を保つことも重要です。

規則正しい生活を送り、適度に体を動かす

生活リズムの乱れは食欲低下につながりやすいため、毎日決まった時間に起床し、日光を浴びて体のリズムを整えことが重要です。適度な運動を取り入れることで消化機能が活性化し、自然と食欲が湧いてきます。散歩やストレッチなどの軽い運動を習慣にすることで、体調を整えながら食事への意欲を高めることができます。

また、デイサービスを利用すると生活リズムが安定し、体操を通じて筋力や体力を維持しやすくなります。多くの施設では食前に口腔体操を行い、噛む力の低下を防ぐ工夫がされています。

一人での食事を減らし、食事の時間を楽しむ

食事は単なる栄養補給ではなく、生活の楽しみのひとつです。しかし、一人での食事が増えると食べることへの関心が薄れ、食欲不振につながることがあります。家族や友人と食卓を囲む機会を増やし、食事を楽しむ時間を作ることが大切です。特に一人暮らしの高齢者は意識して孤食が続かないようにしましょう。

介護保険サービスを利用している場合はデイサービスやデイケアを利用し、複数人と食事ができる環境を取り入れるようにしましょう。自立度が高い場合は、地域の食事会やコミュニティの活動に参加するのも良い方法です。

栄養補助食品・飲料で補う

どうしても食事量が増えない、あるいは体調不良や歯の不具合で一時的に食事が十分摂れない場合は、栄養補助食品や栄養補助飲料を活用するのもひとつの方法です。高齢者向けの栄養補助飲料は、バランスよく栄養を補うことができ、食事の量が少ないときでも効率的に必要な栄養素を摂取することができます。

配食サービスや冷凍弁当を活用

食事の準備が負担に感じられる場合は、配食サービスや冷凍宅配弁当を活用することで、栄養バランスの取れた食事を手軽に楽しむことができます。調理の手間を減らしながら、必要な栄養をしっかり摂ることができるため、食欲が低下しているときにも食事の質を維持することが可能です。自分に合ったサービスを選び、無理なく食事を楽しめる環境を整えることが大切です。

水分をしっかり摂る

水分不足は食事に影響を与え、意識がぼんやりする原因になります。また、唾液の分泌も減るため食べ物が飲み込みにくくなり、誤嚥のリスクが高まることもあります。水分は食事の前後も含め、しっかり補給することが大切です。

特に認知症を発症している場合は、水分が症状を左右します。水分不足は認知機能の低下を加速させることがあり、判断力や集中力の維持が難しくなることがあります。そのため、定期的な水分補給を習慣化できるように意識しましょう。

訪問介護サービスを利用する

介護保険サービスを利用している場合、訪問介護のヘルパーの支援を受けることで、調理や買い物の問題を解決できることがあります。特に、一人では調理や買い物の負担を感じる場合、ヘルパーのサポートによって、栄養バランスの取れた食事を続けやすくなります。

また、経済的に余裕がない場合でも、ヘルパーに食材を無駄なく活用できるように支援を受けることで、限られた食費の中で効率よく栄養を摂る工夫が可能になります。訪問介護を上手に活用しながら、食事の質を維持していくことも検討してみましょう。

最後に

高齢者の食欲不振は、加齢や病気、生活環境の影響によって起こることがあります。しかし、食欲が落ちる原因を正しく理解し、それに合った対応を取ることで改善できる場合もあります。

一度落ちた食欲を回復するには時間がかかるかもしれませんが、適切な対策を継続することで、徐々に改善が期待できます。食環境を整えたり、口腔ケアや生活習慣の見直しを行うことで、食べる楽しさを取り戻し、健康的な食生活を維持することを目指しましょう。

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