
「今日も嫌がられた、明日どうすればいい」そんな朝が続いているご家族に、この記事が少しでも役に立てればと思います。
デイサービスへの拒否は、多くの場合、一時的なものです。「行きたくない」という言葉の裏には、気持ちの不安、体調のつらさ、環境へのなじみにくさといった背景が絡んでいることがほとんどです。やみくもに説得しようとするより、その背景に目を向けることが状況を変える近道になります。
元ケアマネジャー歴14年(支援300件以上、相談1000件以上)。家族側・施設側の両方の現場を見てきた経験から、送り出しがラクになる具体的な工夫をお伝えします。
この記事でわかること
- デイサービスを嫌がる・行きたがらない理由
- 体調から整えるアプローチの具体的な方法
- 今日から使える声かけ例とNGワード
- ヘルパーやデイサービスと連携して送り出しを楽にする方法
- 家族が一人で抱え込まないためのチームづくりのヒント
認知症の親がデイサービスを嫌がる・行きたがらない理由

認知症の方にとって、デイサービスへの外出は不安を伴うことがあります。まずは、なぜ拒否が起きるのか、その背景を理解することから始めましょう。
- 環境の変化に対する不安
記憶の連続性が保ちにくくなると、場所や人に対してなじみが持てず、警戒心が生じやすくなります。毎回「初めて行く場所」のように感じてしまうため、外出そのものへの抵抗が強まります。
- 身体的な不快感
体調が優れない、あるいは便秘などの不快感があるとき、それをうまく言葉にできず「行きたくない」という拒否として表れる場合があります。本人が「なんとなくつらい」と感じていても、その理由を伝えられないことが多いのです。
こうした背景が重なっているとき、家族だけで何とかしようとすると、どうしても無理が生じてしまいます。大切なのは、一人で抱え込まず、ケアマネジャーやデイサービスのスタッフと一緒に状況を整えていくことです。
次のセクションでは、体調面と環境面から取り組める具体的な方法をお伝えします。
まず整えたい体調管理|拒否が減る身体からのアプローチ

精神的な安定は、身体のコンディションと深く結びついています。「機嫌が悪い日」「やけに拒否が強い日」には、体調が影響していることが少なくありません。
水分管理:1日1,500mlの目安
軽い脱水状態になるだけで、認知症の方は意識の混濁やイライラが生じやすくなります。これが「理由のない拒否」の正体であることも少なくありません。日頃から1日1,500mlを目安に、こまめな補給を意識しましょう。
特にデイサービス通所日の朝は、お迎えまでに200〜300mlの水分を摂るように心がけてみてください。朝食をしっかり摂ることで、水分とエネルギーの両方が補給され、穏やかな朝を迎える土台となります。
排便のケア:不快感を取り除く
便秘による腹部の膨満感や不快感は、認知症の方の気持ちの乱れや行動の変化を引き起こしやすい要因の一つです。
言葉にできない「お腹が苦しい」「なんとなく不安だ」というもやもやした気持ちが、「デイサービスなんて行かない!」という強い拒否として表れてしまうことがあります。排便のリズムを整え、身体的なすっきり感を取り戻すことで、こうした気分のムラが落ち着くケースが多く見られます。
✓ 下剤の使用は慎重に行いましょう。激しい腹痛や夜中の排便による不眠を招くと、かえって翌朝の拒否を強める恐れがあります。まずは食事や水分でリズムを整え、薬については主治医に相談しながら調整するのが安心です。
デイサービスへの送り出しを変える声かけと仕組みづくり

送り出しをスムーズにするには、家族の声かけを工夫しながら、ケアマネジャーやヘルパーと連携して仕組みを整えることが大切です。
1.今日から使える声かけ例とNGワード
認知症の方への声かけで最も避けたいのは、正論で説得しようとすることです。「体のためだから行きなさい」「もう車が来ているよ」といった言葉は、本人の不安や抵抗感をかえって強めてしまいます。大切なのは、本人の気持ちに沿った言葉で、外へ向かう気持ちを自然に引き出すことです。
【場面別・声かけ例】
- 「行きたくない」と言われたとき
NGワード:「もう車が来てるから早くして」「体のためだから行かないとダメ」
おすすめの声かけ:
- 「そうですか、今日は気分が乗らないですね。少しだけ顔を出してみませんか」
- 「〇〇さん(スタッフの名前)が待っていますよ」
- 「今日はお昼に好きなものが出るみたいですよ」
- 準備を嫌がるとき
NGワード:「早くして」「何度言えばわかるの」
おすすめの声かけ:
- 「一緒に準備しましょうか」
- 「今日はお出かけの日ですよ、いい服にしましょうか」
- 「お天気がいいから、外の空気が気持ちいいですよ」
- 車に乗るのを拒否するとき
NGワード:「乗ってください」「行かないと困ります」
おすすめの声かけ:
- 「少しだけドアまで行ってみましょう」
- 「送ってくれる方があそこで待っていますよ、ご挨拶だけでも」
どうしても乗れない日は、無理に乗せようとせず、スタッフに状況を伝えて引き継ぐことも大切な対応の一つです。
ケアマネ目線メモ
「説得」より「誘う」という意識で言葉を選ぶことが大切です。また、声かけは家族よりヘルパーや送迎スタッフが行った方がスムーズにいくケースも多くあります。うまくいかないときは一人で抱え込まず、担当のケアマネジャーに「どんな声かけが効果的か」を相談してみてください。
2. 通所頻度を調整して習慣化を促す
認知症の方は、間隔が空きすぎると通うたびに「知らない場所へ行く特別なこと」として感じてしまい、緊張や拒否が強まりやすくなります。
導入初期はあえて通所頻度を多めに確保し、「ここは安心できる場所だ」という感覚を定着させることが大切です。内容を具体的に覚えていなくても、その感覚が根付けば、通所への抵抗は自然と減っていきます。
ケース1
週1回から週4回へ増やしたことで安定したケース
導入当初、週1回の利用では毎回「ここはどこだ」「帰る」と混乱されていた方の事例です。ご家族と相談し、1カ月間だけ週4回に増やしたところ、デイサービスが「たまに行く場所」から「いつもの場所」へと変化しました。スタッフの顔や建物の雰囲気になじんだことで、次第に笑顔で過ごせる時間が増えていきました。
生活リズムが整い、本人の状態が安定してきたら、徐々に回数を減らして様子を見ることも可能です。まずは「慣れること」を最優先に、ケアマネジャーとスケジュールを検討してみましょう。
こうした「人を限定する」工夫は、介護サービス全般に共通する視点です。
例えば、訪問介護を毎日2回利用する場合、毎回違うスタッフが来れば1週間で14人と接することになります。これでは認知症のない方でも落ち着かないのは容易に予想できます。
3. 顔なじみのスタッフを固定する
毎回違うスタッフが迎えに来ると、本人の戸惑いや警戒心は強くなります。送迎スタッフを一定期間固定してもらうよう依頼し、「安心できる人」との関係を作ることが通所のきっかけになります。
ケース2
お迎えを「お散歩」に変えた工夫
デイサービスを拒んでいた方の事例です。自宅と施設が近距離だったこともあり、導入初期の数回、決まったスタッフが車いすでお迎えに来てくれました。そのスタッフは「施設へ行きましょう」ではなく「一緒にお散歩に行きましょう」と声をかけ、外の空気を楽しみながら自然な形で連れ出してくれました。
4. ヘルパーによる送り出しの活用
家族が声をかけると反発してしまう場合でも、ヘルパーという「他者」が介在することで、スムーズに身支度が進むことがあります。プロの手を借りることで、朝の心理的な摩擦を減らすことができます。
ケース3
ヘルパーの介在で通所が安定したケース
デイサービスの拒否が強く、家族が通所を諦めかけていた方の事例です。朝の送り出しをヘルパーに依頼したところ、本人は驚くほどスムーズに身支度を済ませ、車に乗り込むことができました。これは第三者が入ることで本人に「外向きの意識」が芽生えた結果です。2カ月後には通所が習慣化し、家族による送り出しでも拒否なく通えるようになりました。
5. 施設側に依頼できる工夫
デイサービス側でも、以下のようなアプローチで本人の意欲を引き出せる場合があります。家族から直接施設へ交渉するより、ケアマネジャーを通じて相談するとスムーズです。
- 到着時間の個別調整
他の利用者を乗せた送迎車が自宅前で待っていると、焦りが拒否を強める原因になることがあります。利用が定着するまでの間、時間をずらした個別対応が可能か相談してみましょう。
- 利用者同士の交流を活用する
同年代の利用者に「一緒に行きましょう」と声をかけてもらう方法です。スタッフではなく仲間から誘われることで、通所への意欲につながることがあります。
6. ケアマネジャーへの相談
送迎時間の調整やスタッフの固定など、複数の課題を同時に整理したい場合は、ケアマネジャーに相談するのが最もスムーズです。ケアマネジャーは家族の困りごとと施設の対応可能範囲を客観的に判断し、プロ同士の視点で調整を行ってくれます。
家族が一人で抱え込まないために

どれだけ工夫を重ねても、うまくいかない日は必ずあります。そんなときに最も避けたいのは、「自分の対応が悪かったのではないか」と家族が自分を責めることです。
認知症の方は、論理的な正論で説得されるほど「責められている」と感じ、かえって頑なになる傾向があります。その日、どうしても行けなかったとしても、それは家族の責任ではありません。
よくある質問
体調や睡眠、便秘などの身体的な状態が大きく影響しています。「気分のムラ」に見えても、その日の体のコンディションが原因であることが多いため、まず水分補給や排便のリズムを整えることから試してみてください。
「行かないとダメ」などの正論より、「〇〇さんが待っていますよ」「少しだけ顔を出してみませんか」など、誘うような言葉が効果的です。強く説得しようとするほど拒否が強まりやすいため、柔らかい言葉で外へ向かう気持ちを引き出しましょう。
家族に対しては甘えや緊張が出やすく、第三者が介在することで「外向きの意識」が生まれるためです。ヘルパーによる送り出し支援はよく使われる方法で、2〜3カ月で通所が安定するケースも多くあります。
認知症の方は前日の説明を忘れてしまうことがあります。毎回説明するより、通所頻度を増やして「いつもの場所」という感覚を定着させる方が効果的です。まずはケアマネジャーに頻度調整を相談してみてください。
すぐにやめる必要はありません。拒否が続く場合は、施設の雰囲気や送迎のタイミングなど環境面に原因があることが多いです。ケアマネジャーを通じて施設側と調整することで、改善できるケースが多くあります。
まとめ
デイサービスへの拒否は、本人からの「何かがつらい」というサインであることが多いです。その背景にある体調や不安に目を向け、声かけを工夫しながら、ケアマネジャーやヘルパーと連携して仕組みを整えていくことで、状況は少しずつ変わっていきます。
一人で抱え込まず、プロの力を借りながら、無理のない介護生活を続けていきましょう。






