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介護者が倒れたらどうする?「もしも」に備える家族のBプラン

2025年11月8日

介護は、終わりが見えない長期戦です。「もしも」の事態は、ある日突然やってきます。

介護者が病気になったり、けがで入院したりするような予期せぬ出来事は、誰の身にも起こり得ます。もし、主たる介護者が倒れてしまったら、介護の継続が困難になる可能性があります。

この記事では、主介護者が介護を続けられなくなった場合に備える、安心のための「Bプラン」について解説します。「もしも」に備えることは、後ろめたいことではありません。それは、大切な人を守り、自分自身の人生を守るための、最も賢明な選択なのです。

介護のバトンタッチ|緊急時の「誰に頼るか」を考える

「もしも」の時に慌てないためには、あらかじめ「誰に頼るか」を決めておくことが重要です。これを「介護のバトンタッチ」という考え方で捉えてみましょう。

1. 家族・親戚との連携

まずは、身近な家族や親戚に相談してみましょう。介護の負担を一人で抱え込まず、早い段階で周囲に協力を求めることが、共倒れを防ぐ第一歩です。日頃からコミュニケーションをとり、いざという時に頼れる関係を築いておきましょう。

  • 緊急連絡先リストの共有

ケアマネジャー、主治医、かかりつけの病院、近隣の友人など、緊急時の連絡先リストを作成し、共有しておきましょう。

リストは、紙に書くだけでなく、LINEのグループや共有できるメモアプリを活用して共有するのがおすすめです。必要な時に、すぐに全員が情報にアクセスできます。

  • 役割の分担

「何かあったら、このタスクをお願い」と、事前に役割分担をしておきましょう。緊急時に協力者がいても、誰が何をすべきか曖昧だと、かえって混乱を招きかねません。

例えば、「連絡係」「介護の交代要員」「金銭管理」といった具体的な役割を決め、家族や親戚間で共有しておきましょう。

これにより、緊急時も慌てずに対応できるだけでなく、日頃から「介護はみんなで支えるもの」という意識が芽生え、特定の誰か一人に負担が集中するのを防ぐことにもつながります。

2. 公的な支援サービスの活用

地域や社会が提供するサービスを頼ることは、介護を継続していく上で欠かせません。介護を自分たちだけで何とかしようとせず、社会全体で支える体制を築くという意識を持つことが、介護者の負担を減らす鍵となります。

  • ケアマネジャーへの相談

ケアマネジャーは「もしも」の事態に備えるプロです。介護者の負担や、緊急時の対応について事前に相談しておきましょう。「介護者が体調を崩したら、どうすればいいか」「急な入院が必要になった時の手続きは?」といった具体的な不安を伝えることで、緊急時の対応策や利用できるサービスについて、事前に話し合っておくことができます。この緊急対応策こそが「Bプラン」となるのです。

  • 地域の情報共有

地域の相談窓口や、利用できる緊急対応サービスについて情報収集しておきましょう。ケアマネジャーに相談すれば、地域の緊急ショートステイの空き状況や、夜間対応が可能な民間サービス、自治体が提供する緊急通報サービスなど、具体的な情報を得られます。いざという時に慌てないよう、連絡先や利用条件を確認しておきましょう。

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 介護者が倒れた場合の具体的な行動「Bプラン」

「Bプラン」とは、主に介護を担っていた人が、何らかの理由で介護を続けられなくなったときに、事前に決めておいた「介護のバトンタッチ」を使い、介護が必要な家族の生活を維持するための緊急対応策です。

ここでは、もし介護者自身が倒れてしまったら、どう行動すべきかを具体的に解説します。

1. 迅速な連絡と支援要請

もし介護者自身が倒れたり、体調を崩したりした場合は、すぐに事前に決めておいた協力者へ連絡しましょう。緊急時に最も大切なのは、冷静に状況を伝え、迅速に支援を要請することです。

  • 協力者への連絡

連絡係に指定した家族や親戚にすぐに連絡し、介護が必要な家族の現在の状況(食事や排泄の状態など)と、介護者が倒れた旨を簡潔に伝えましょう。事前に役割を分担しておけば、慌てずスムーズに介護が必要な家族の介護を代わってもらうことができます。

Memo

主介護者自身が連絡できない場合に備え、緊急時の連絡先や介護が必要な家族の状況を、協力者と定期的に共有しておきましょう。これにより、主介護者から直接連絡がなくても、協力者が事態を把握し、すぐに対応することができます。

  • ケアマネジャーへの連絡

協力者への連絡が済んだら、すぐにケアマネジャーに連絡してください。「介護者が体調を崩した」と正直に伝えることで、ケアマネジャーは夜間や休日の訪問介護、緊急ショートステイなど、緊急性の高いサービス利用に向けた調整を迅速に行ってくれます。

2. 公的サービスの緊急活用

ケアマネジャーに支援を要請した後は、介護者が安心して療養できる環境を整えることが大切です。事前に決めておいた「Bプラン」を実行に移しましょう。

  • 緊急ショートステイの利用

介護が必要な家族を短期間、施設に預けることで、介護者は治療や休息に専念できます。緊急の場合、空きがあればその日から利用できる場合もあるため、ケアマネジャーにすぐに相談することが重要です。

  • 訪問介護・デイサービスの増回

介護者不在の間、必要に応じて訪問介護やデイサービスの利用回数を増やしてもらうことで、介護が必要な家族の食事や入浴、排泄といった日常生活の世話を任せることができます。これにより、介護が必要な家族も普段通りの生活を維持できます。

Memo

公的サービス外の活用
介護保険サービスだけでは対応しきれない場合や、より柔軟な支援が必要な場合は、自費で利用できる民間サービスを活用するのも有効な手段です。

  • 家事代行サービス:介護者不在の間、掃除や料理を依頼できます。
  • 配食サービス:栄養バランスの取れた食事を自宅まで届けてもらえます。
  • 見守りサービス:離れていても、安否確認や緊急時に対応してもらえます。

このように、「Bプラン」を事前に考えておけば、介護者が倒れてしまった緊急時でも、あらかじめ決めておいたサービスをすぐに活用できます。

今回ご紹介した「Bプラン」は、介護者が体調を崩した際の緊急対策です。しかし、この考え方は急な出張や冠婚葬祭、心身の疲労から介護を一時的に休む「レスパイト」などにも応用できます。

最後に

「もしも」の事態は誰にでも起こり得ます。介護者が倒れてしまうと、介護そのものが立ち行かなくなるだけでなく、介護が必要な家族は混乱と不安に陥ってしまいます。

しかし、事前に「介護のバトンタッチ」や「Bプラン」を準備しておけば、緊急時にも慌てず冷静に対応できます。一人で抱え込まず、家族やケアマネジャーといった専門家と連携することで、介護者自身と大切な人を守るための備えができるのです。

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