
「来週には退院です。それまでにケアマネジャーさんを決めておいてください」
病院でそう告げられて、はじめて「ケアマネージャー」という言葉に向き合う方は少なくありません。どこにいるのか、誰に頼めばいいのか分からないまま、退院の日だけが近づいてくる——。
結論から言うと、ケアマネージャーに出会うための最初の窓口は、今の状況で決まります。
入院中なら病院のソーシャルワーカー、在宅で要介護認定を受けているなら居宅介護支援事業所、要支援・未申請なら地域包括支援センターです。
この記事では、状況別の探し方と、「担当がいっぱい」と断られて見つからない時の相談先、担当が決まったあとの付き合い方までをまとめました。
※本記事では、検索されやすい「ケアマネージャー」を見出しなどで使用していますが、本文では正式名称の「ケアマネジャー」で統一します。
元ケアマネジャー歴14年(支援300件以上、相談1000件以上)。退院が決まってから、慌ててケアマネを探し始めるご家族は少なくありません。状況ごとに「最初にどこへ電話すればいいか」をまとめました。
この記事でわかること
- 入院中・在宅・要支援別、ケアマネに出会うための最初の相談先
- 「担当がいっぱい」でケアマネが見つからない時の対処法
- 電話や訪問で、良い事業所を見分けるポイント
- ケアマネと「何でも言える関係」をつくるコツと、初回面談の準備
ケアマネージャーはどこにいる?状況別の最初の相談先
ケアマネジャーの多くは、「居宅介護支援事業所」に所属しています。ただ、いきなり事業所を探し始めるより、今の状況に合った窓口から入る方が早く、確実です。
| 今の状況 | 最初の相談先 |
|---|---|
| 入院中 | 病院のソーシャルワーカー(MSW) |
| 在宅で、要介護1~5の認定を受けている | 居宅介護支援事業所 |
| 要支援1~2、またはまだ申請していない | 地域包括支援センター |
入院中の場合|病院のソーシャルワーカー(MSW)に頼む
退院を急かされているなら、自分で探す前に病院のソーシャルワーカー(MSW)を頼ってください。
「自分では探せないので、連携している事業所をいくつか紹介してほしい」
この一言が、最も確実な近道です。MSWは退院支援の仕事を通して、地域のケアマネジャーと日頃から連携していることが多いからです。介護保険をまだ申請していない場合も、入院中に申請できます。病状が落ち着いていれば病院で認定調査を受けられることもあるので、あわせて相談しましょう。
※ソーシャルワーカーが在籍していない病院の場合は、地域包括支援センターに相談してください。
在宅で要介護認定を受けている場合|居宅介護支援事業所に連絡する
要介護1〜5の認定を受けていれば、居宅介護支援事業所に直接連絡して、担当を依頼できます。
事業所の一覧は、市区町村の介護保険の窓口や地域包括支援センターでもらえます。厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」でも、住所から近くの事業所を探せます。
ケアマネ目線メモ
なぜ窓口は「ここが良い」と教えてくれないの?
不親切に感じるかもしれませんが、行政の窓口には、特定の1社をすすめられない「公平性のルール」があるためです。この後の「良い事業所を見分ける3つの視点」を参考に、一緒に絞り込んでいきましょう。
要支援・まだ申請していない場合|地域包括支援センターに相談する
まだ申請していない方や、認定結果を待っている方は、地域包括支援センターに相談してください。介護保険の申請の相談から、認定後のサービス利用まで、高齢者に関する相談を無料で受け付けている総合相談窓口です。
要支援1〜2の方は、地域包括支援センターの職員がケアプランを担当するほか、民間の居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当になることもあります。どちらの場合でも、最初の相談先は地域包括支援センターで大丈夫です。
「担当がいっぱい」でケアマネジャーが見つからない場合
近年はケアマネジャー不足が深刻で、「担当がいっぱいで受けられない」と断られるケースが増えています。1か所で断られても諦めず、最低3か所には連絡してみてください。
それでも見つからないときは、地域包括支援センターや市区町村の介護保険の窓口に「どこも満員で困っている」と相談しましょう。受け入れに空きがありそうな事業所の情報など、探す手助けをしてもらえます。入院中の場合は、病院のソーシャルワーカーに伝えてください。
ケアマネジャーとは?役割と費用の基本

連絡する前に、ケアマネジャーが「何をしてくれる人か」を押さえておくと、良い担当者を見極める目が格段に変わります。
一言でいうと、ケアマネジャーは「介護の設計士」です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 介護支援専門員 |
| 主な仕事 | ケアプラン(介護サービス計画書)の作成・サービスの手配と調整 |
| 利用者の費用負担 | 原則0円(介護保険から全額支払われる) |
| 訪問頻度 | 原則月1回以上の自宅訪問(条件を満たせば、2か月に1回はオンライン面談も可) |
| 担当できる件数 | 1人あたり原則44件まで ※これが「担当がいっぱい」と言われる理由 |
MEMO
ケアプランの作成に自己負担はかかりません
ケアプラン作成の費用は、介護保険から全額支払われます。訪問介護やデイサービスと違い、利用者が自己負担を払う仕組みではありません。遠慮なく頼ってください。
良い事業所を見分ける3つの視点

良い事業所かどうかは、リストを眺めているだけではわかりません。以下の3つの視点で、実際に確かめてみてください。
視点1|デジタル化の対応を確認する
近年、LINE WORKSなどのビジネスチャットツールを導入し、家族との連絡や事業所内の情報共有をスムーズに行っている事業所が増えています。連絡手段がFAXや電話だけの事業所と、デジタルツールを活用している事業所では、情報共有のスピードと正確さが大きく異なります。さらに、緊急時の対応力にも差が出ます。
電話や訪問で担当を依頼するときに、こう確認してみてください。
「緊急時や日常の連絡は、どのような方法で取ることができますか?電話以外にも、LINEやチャットツールなどは使われていますか?」
この一言で、その事業所のデジタル対応力と、家族との連携に対する姿勢の両方が見えてきます。
視点2|できれば実際に事業所を訪問してみる
時間が許すなら、実際に事業所を訪問することをおすすめします。
訪問することで、パンフレットや電話だけではわからない、事業所の雰囲気や働き方が見えてきます。そして「ここにお願いする」という安心感にもつながります。
【訪問時にチェックしたいポイント】
- デスクの上が整理されている
- 書類が山積みになっていない
- 壁に紙やメモが雑然と貼られていない
- 全体的に落ち着いた雰囲気がある
事務環境が整理されている事業所は、利用者の情報管理も丁寧である可能性が高いです。逆に、書類が散乱している事業所は、情報の管理が行き届いていないおそれがあります。
視点3|時間がない方は電話対応で見極める
仕事や育児との両立で訪問の時間が取れない場合は、電話口での受け答えに注目してみてください。
【電話口でも感じ取れること】
- こちらの話をきちんと最後まで聞いてくれるか
- 落ち着いて話せる雰囲気があるか
- 忙しいときでも、言葉を遮らずに丁寧に答えてくれるか
電話口の対応は、その事業所の「普段の姿」が出やすい場面です。訪問でも電話でも「何か引っかかる」「信頼できない」と感じたなら、それ自体が重要なサインです。無理に進める必要はありません。
さらに絞り込むなら|近さ・前職・事業所のタイプも確認
候補がいくつかあって迷うときは、次の3点も判断材料になります。
- 自宅から近いか:近い事業所ほど、急なトラブルにも駆けつけてもらいやすくなります。
- 前職(元の資格)は何か:ケアマネジャーは元の資格によって得意分野が異なります。困りごとを伝えて、経験のある方がいるか聞いてみましょう。
- 「併設型」か「独立型」か:ケアマネジャーだけの「独立型」は中立性が高いとされ、訪問介護やデイサービスを併設する「併設型」は、サービス同士の連携がスムーズという利点があります。
面談での具体的な質問例や、資格別の見極め方は、次の記事で詳しくまとめています。
担当が決まったら|「何でも言える関係」が信頼を築く

どんなに優秀なケアマネジャーでも、家族が本音を伝えられなければ、本当に必要なサポートにはつながりません。
ケアマネ目線メモ
「遠慮」が介護者を追い詰める
14年の現場経験の中で、ケアマネに本音を言えず、限界まで一人で抱え込んでしまう介護者に出会うこともありました。
そうした方は、「夜中に何度も起こされて眠れない」「もう限界かもしれない」——そんな切実な声をケアマネに伝えられないまま、心身ともに消耗していきました。
ケアマネは、介護する家族の「困った」を聞くことも仕事です。遠慮はいりません。
「言いにくい」と感じたら、それは変更のサイン
「合わない」と感じながら我慢して付き合い続けることは、介護者にとって大きな消耗になります。担当の変更は制度上いつでも可能で、同じ事業所の中で担当者だけを変えてもらうことも、事業所ごと変えることもできます。
もしケアマネジャーに対して、
- 「本音を話せない」
- 「話すと否定される気がする」
- 「相談しても流される」
と感じることが続くなら、それは担当者を変更すべきサインかもしれません。
実例アドバイス
今の担当者に「変更したい」と言い出しにくい方は、地域包括支援センターに「ケアマネの変更を考えていて、相談したい」と伝えてみてください。担当者に直接言わなくても、進め方を一緒に考えてもらえます。理由も「合わないと感じている」程度で大丈夫です。
同じ事業所の中で担当者だけを変えてほしい場合は、事業所の管理者に伝える方法もあります。
【無料ダウンロード】初回面談に使える「わが家の困りごと整理シート」
担当が決まって初めて会うときは、慌ただしさの中で「何から話せばいいか」迷うものです。元ケアマネジャーの視点から「これだけは伝えておかないと、後で家族がパンクする」項目を絞り込んだ整理シートを用意しました。
すべてを埋める必要はありません。気になる項目をスマホにメモしておくだけでも、面談で伝えられることがぐっと増えます。
| 項目 | 具体的に書くことのヒント |
|---|---|
| 1. 緊急度・切実さ | 今、一番何に追い詰められていますか?(例:夜眠れない、本人が怒鳴る、仕事に行けない) |
| 2. あなた自身への影響 | 自分の通院ができない、持病がある、介護で疲れ切っている、など |
| 3. 仕事への影響 | 急な休みが増えている、残業・出張ができない、仕事中に電話が頻繁にかかってくる、など |
| 4. 介護への思い | 他人に任せることへの抵抗感、兄弟姉妹の協力状況、など |
| 5. 本人の性格・こだわり | 介護されるのを嫌う、入浴は夕方と決めている、他人を家に入れたくない、など |
| 6. 本人の変化と不安 | 最近「以前と違う」と感じることは?(例:怒りっぽくなった、火の不始末がある、同じことを何度も聞く、など)※病名以上に、日々の生活で「危ない」と感じる具体的な場面が助けになります。 |
| 7. 本人との関係性 | 折り合いが悪い、遠方で頻繁に行けない、など |
| 8. 経済的な懸念 | 月〇万円以内に抑えたい、いずれは施設も検討したい、など |
| 9. ケアマネへの期待 | 本人を説得してほしい、とにかく話を聞いてほしい、テキパキ進めてほしい、など |
よくある質問
今の状況によって、最初の相談先が変わります。入院中なら病院のソーシャルワーカー、在宅で要介護認定を受けているなら居宅介護支援事業所、要支援・未申請なら地域包括支援センターに相談しましょう。事業所の一覧は、市区町村の介護保険の窓口や地域包括支援センターでもらえます。
まずは病院のソーシャルワーカーに「退院までにケアマネジャーが見つからない」と早めに伝えてください。連携している事業所を紹介してもらえることが多いです。ソーシャルワーカーがいない病院の場合や、それでも見つからない場合は、地域包括支援センターや市区町村の介護保険の窓口に相談しましょう。
地域包括支援センターに相談してください。介護保険の申請の相談から、認定が出たあとのサービス利用まで、無料で相談できます。入院中の場合は、病院のソーシャルワーカーに相談すると、入院中に申請を進められることもあります。
2024年度から、市区町村の指定を受けた居宅介護支援事業所であれば、要支援の方も直接契約して担当してもらえるようになりました。ただし、すべての事業所が指定を受けているわけではありません。希望する事業所がある場合は、その事業所か地域包括支援センターに確認してみてください。
現在の制度では、ケアプランの作成やサービスの調整にかかる費用は介護保険から全額支払われるため、利用者の自己負担はありません。ただし、ケアマネジャーが手配した訪問介護やデイサービスなどのサービスには、所得に応じて1〜3割の自己負担がかかります。
変えられます。同じ事業所の中で担当者だけを変えてもらうことも、事業所ごと変えることもできます。今の担当者に言い出しにくい場合は、地域包括支援センターに「ケアマネジャーの変更を考えていて、相談したい」と伝えると、進め方を一緒に考えてもらえます。
まとめ|ケアマネジャーは「自分自身の生活」を守るための協力者です
「こんなことまで相談していいのかな」と、ケアマネジャーに遠慮する必要はありません。ケアマネジャーは、家族と一緒に介護体制を組み、日々の生活を回していくための実務的なパートナーです。
介護は、家族の自己犠牲だけで成り立つものではありません。専門職に関わってもらい、公的なサービスを適切に組み込んでいくこと。それが、介護する人自身の生活を守ることにつながります。
入院中なら病院のソーシャルワーカー、在宅で要介護認定を受けているなら居宅介護支援事業所、要支援・未申請なら地域包括支援センター。まずは今の状況に合った窓口に、電話を1本かけるところから始めてください。





