
「ヘルパーさんと相性が悪いけれど、我慢するしかない?」
「交代をお願いして、逆恨みされたりサービスを断られたりしない?」
そう悩んでいる間に、介護の負担はどんどん重くなってしまいます。結論から言えば、相性が合わないと感じたら、迷わず「サービス提供責任者」か「ケアマネジャー」に相談してください。
ヘルパー交代は介護現場では日常的な調整であり、決して「わがまま」ではありません。この記事では、円満に交代を進めるための具体的な伝え方と手順を、元ケアマネジャーの視点で論理的に解説します。
1. 【結論】どちらか一方に伝えればOK

ヘルパー本人に直接伝える必要はありません。以下の「どちらか相談しやすい方」一人に連絡するだけで、交代の手続きは動き出します。
- サービス提供責任者(サ責)
訪問介護事業所の「ヘルパーのリーダー」です。
メリット
現場のシフトを管理している当事者なので、話が早いです。
こんな時に
事業所自体には満足しており、「特定のヘルパーさんだけを変更してほしい」と明確に決まっている場合。
そのまま使える!角を立てない「伝え方」例文
電話やメールで伝える際は、「ヘルパーさんの否定」ではなく「利用者の安心感」を理由にするのがコツです。
- ケアマネジャー
ハードルが低く、客観的なアドバイスがもらえます。
メリット
事業所に対して中立的な立場なので、「こんなことで変えていいのかな?」という悩みから相談に乗ってくれます。
こんな時に
「事業所そのものを変えるべきか」迷っている場合や、直接事業所に言いづらい場合。
そのまま使える!角を立てない「伝え方」例文集
電話やメールで伝える際は、「ヘルパーさんの否定」ではなく**「本人の安心感」を理由にする**のがコツです。
以下に、状況に合わせて使い分けられる3つのパターンを用意しました。( )の部分をご自身のケースや希望に合わせて書き換えてご使用ください。直接話しにくい場合は、まずはメールやLINEで送るのも有効な手段です。
- パターンA:性格や雰囲気の「相性」が合わない場合
相手の非を指摘するのではなく、「本人の性格的な特徴」と「リラックスできる環境」を理由にすることで、円満な調整を促します。
- パターンB:家事(料理・掃除)の質に不満がある場合
特定の技術に対する不満は、「ヘルパーさんのスキル不足」を責めるのではなく、「親のこだわりや家庭の習慣」を主軸に伝えると、角が立ちません。
- パターンC:言葉遣いや距離感に違和感がある場合
「失礼だ」と怒るのではなく、慣れ合いによる「本人の尊厳や不安」を理由にします。
2. 交代を検討してもいい「ミスマッチのサイン」

「わがままかも」「これくらい我慢すべき?」と迷う必要はありません。介護は毎日のことですから、「小さな違和感」は交代を検討する十分な理由になります。
もし、以下のサインが一つでも出ているなら、それは相性を見直すタイミングかもしれません。
- 心のサイン:訪問の前後で気持ちが沈む
- 【同居】 ヘルパーが来る直前になると、家全体に憂鬱な空気が流れ、訪問後はどっと疲れが出る。
- 【別居】 親からヘルパーへの不満や愚痴の電話が増え、対応する家族側も精神的に消耗している。
- 【共通】 次回の訪問予定を考えると、家族も本人もため息が出たり、気分が重くなったりする。
- 意思疎通のサイン:家庭のルールや希望が届かない
- 調味料の置き場所や掃除の仕方など、繰り返し伝えても改善されない
- ヘルパーが「良かれと思って」、こちらの生活スタイルや希望を無視したケアを優先してしまう。
- 家族からの質問や確認に対して、納得のいく説明や誠実な返答が返ってこない。
- 信頼のサイン:安心して「親」を託せない
- 訪問時間の遅れや連絡不足が続き、家族が不安を感じる
- 言葉遣いや態度が、その家庭が大切にしている価値観(丁寧さや距離感など)と大きくかけ離れている。
- 「この人に大切な親を安心して任せられない」という、家族としての直感が拭えない。
Memo
本人の口からヘルパーへの苦情が出たとしても、認知症の影響で「事実と思い込み」が混在している可能性があります。家族がその言葉をすべて鵜呑みにして交代を急ぐと、逆に本人の混乱を招き、問題が悪化することも少なくありません。まずはケアマネジャーに「本人の訴え」をありのまま伝え、現場で何が起きているのか、事実関係の確認から始めることが大切です。
3. スムーズに交代を進めるための4ステップ

「交代をお願いしよう」と決めても、いざとなると「担当の方を傷つけないか」「今後の関係が悪くならないか」と、伝え方に悩んでしまうものです。
円満に、かつ確実に状況を改善するためには、感情をぶつけるのではなく、「無理のないサポート体制を作るための相談」として手順を踏むのが近道です。以下の4つのステップに沿って、落ち着いて準備を整えていきましょう。
Step1:不満を「具体的」に書き出す
いきなり「交代してください」と伝える前に、まずは今の違和感を整理してみましょう。不満を具体的に言語化することは、単なる文句ではなく「より良いケアを受けるための改善案」として、ケアマネジャーや事業所に納得してもらうための重要な準備になります。
【コツ:抽象的な「不満」を、具体的な「事実」に言い換える】
× コミュニケーションの不一致
声が大きくて、静かに過ごしたい母が驚いてしまう
× 期待するスキルとのミスマッチ
掃除の仕上がりにムラがあり、家族がやり直している
× 距離感への違和感
接し方が非常にフレンドリーで、礼儀を重視する父が戸惑っている
× 優先順位の把握が不十分
料理に時間がかかり、予定していた入浴の時間が遅れている
Step2:関係者に「早めに」相談する
我慢の限界が来てから怒りをぶつけると、事業所側も困惑します。「少し違和感があるのですが」と、早めの段階で相談の種をまいておくのがスムーズな交代のコツです。
【なぜ「早め】が良いのか?】
マッチングしやすくなる
ヘルパーの予定は数週間先まで埋まっています。早めに伝えれば事業所も「条件に合う人」を調整する時間を確保できます。
「前向きな相談」になる
冷静に話せる段階で相談することで、感情に流されず「なぜ合わなかったのか」という理由を正確に共有でき、次の人選ミスを防げます。
Step3:要望をセットで伝える

単に「今の担当者が合わない」と伝えるだけでは、事業所側も判断に迷ってしまいます。交代をリクエストする際は、「次はどのような人が望ましいか」というポジティブな条件をセットで伝えましょう。
【具体例:求める役割を明確にする】
聞き上手・穏やかなタイプを希望する場合
「母が話し好きなので、急かさずに相槌を打ちながら、ゆっくり話を聞いてくださる方を希望します」
実務・テキパキタイプを希望する場合
「限られた時間内で、家事をテキパキと正確にこなしてくださる実務的な方を希望します」
適度な距離感を希望する場合
「本人に礼儀を重んじる面があるため、あまりプライベートに踏み込みすぎず、節度ある態度で接してくださる方を希望します」
Step4:感謝を添えて「完了」させる
交代が決まったら、最後は事務的な手続きとして、これまでのお世話に対する一言を添えましょう。
【ポイント:人格ではなく「プロの仕事」を評価して区切りをつける】
このように伝えると、事業所側も「家族が本人のことを考えて出した結論」として受け止め、わだかまりなく次の調整に動くことができます。
4. 新しい担当者と「良い関係」を築くために

スムーズな再スタートの鍵は、現場で細かく指示を出すことではなく、サービス提供責任者への「情報の事前共有」にあります。
今回の経緯を踏まえ、配慮してほしい点をあらかじめ伝えておくことで、新しい担当者への確実な引き継ぎが可能になります。家族は「本人にとって外せない接し方のポイント」の共有に留め、実務はプロのやり方を尊重する。この適切な役割分担こそが、良好な関係を長く続けるためのコツです。
Memo
信頼関係は「お互いの歩み寄り」で築くもの
ヘルパーの交代は、より良いケアを受けるための正当な手段ですが、同時に「信頼関係は双方の努力で築くもの」という視点も忘れてはなりません。
介護サービスには、法律や契約で定められた「できること・できないこと」の範囲があります。家族側からの要望が過剰になりすぎると、どれほど担当者を変えてもミスマッチは解消されず、地域の介護資源を失うことにもなりかねません。プロの技術を尊重し、できないことを無理に強いない。この「お互いへの敬意」があって初めて、安定したサポート体制が完成します。
まとめ:より良いケアと、穏やかな日常のために
ヘルパーとの相性に悩むことは、現在のケアが本人の暮らしに適しているかどうかを、客観的に見直しているプロセスに他なりません。
違和感を抱えたままサービスを続けると、本人の生活の質に影響するだけでなく、支える家族の負担も大きくなってしまいます。適切な交代は、本人の生活を安定させると同時に、無理なく介護を継続できる体制を整えるための手段です。
親にとって適切なサポート環境を整えることは、結果として家族の平穏な生活を守ることにもつながります。プロの力を正しく借りることで、双方にとって持続可能な介護の形を目指しましょう。


