介護をもっと楽にする

ケアマネが解説|「疲れた」を伝える!介護負担を減らすケアマネ連携術

介護は体力的・精神的な負担を感じることもあり、続けるのが大変に思えることもあるでしょう。そんな家族介護者の一番身近な「専門家」であり「支援者」となるのが、担当のケアマネジャーです。

でも、「ケアマネさんとの関係性って、これでいいのかな?」「もっとサービスをうまく使いたいけど、どう頼めばいいんだろう?」と感じたことはありませんか? 漠然とした不安や要望を抱えながらも、どう伝えて良いか分からない、遠慮してしまう、という声をよく聞きます。

この記事では、14年の現場経験を持つ元ケアマネジャーの視点で、家族介護者の皆さんが担当ケアマネジャーとより良いパートナーシップを築き、効果的に活用するための「連携術」を具体的にお伝えします。「ケアマネさんって、本当は何をしてくれるの?」「こんな時、どう伝えればいいの?」といった疑問にお答えし、皆さんの介護生活が少しでも楽になるヒントを提供できれば幸いです。

意外と知られていない:ケアマネジャーの役割、実はどこまで?

ケアマネジャーの基本的な役割は、本人の状態や家族の状況を踏まえ、最適な介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、サービス事業所との連絡・調整を行います。

さらに、ケアマネジャーは、時には以下のような役割も担っています。

代弁者・擁護者(アドボケイト)としての役割

本人や家族の意思、状況をサービス事業所や医療機関に正確に伝え、必要な支援を受けられるよう働きかけます。本人がうまく伝えられない思いや、家族が遠慮してしまう気持ちを汲み取り、代弁することもあります。

  • 地域の介護資源(リソース)の専門家

介護保険サービスだけでなく、地域の配食サービス、見守りサービス、ボランティア団体、地域の助成制度など、様々な介護関連情報を最もよく知る存在です。

  • サービスや事業所選びの相談相手

数あるサービス事業所の中から、本人や家族に合った事業所を選ぶ際の相談に乗ります。事業所の雰囲気や得意な分野についても、ある程度情報を持っています。

  • 制度や手続きのナビゲーター

介護保険以外の関連制度(医療保険、障害者福祉など)との連携が必要な場合や、施設入所を検討する際の手続きなどについても助言できます。

  • 心理的サポート(ただし限界あり)

介護の悩みや不安を聞き、共感することで、精神的な支えとなることもあります。ただし、ケアマネジャーは専門のカウンセラーではないため、深刻な精神的な問題については専門機関への橋渡しを行います。

意外と知られていないケアマネジャーの限界

一方で、ケアマネジャーには物理的、制度的な限界もあります。

  • 直接的な介護はできません

ケアマネジャーは介護サービスを「計画・調整」する立場であり、直接的な身体介護や生活援助を行うことはできません

  • 業務負荷が高い

一人のケアマネジャーが担当できる数は法的に定められていますが(基本上限:44件)、実際にはそれ以上の多忙を極めているケアマネジャーも少なくありません。そのため、連絡してもすぐに対応できない場合もあります。

  • 制度の枠を超えられない

ケアプランは介護保険の枠組みの中で考えます。保険外のサービス(介護保険がきかないサービス)をプラン案に加えることはできますが、その費用は全額自己負担となり、介護保険サービスとは根本的に異なる扱いになります。

  • 診断や治療はできません

医療的な判断や治療方針に関わることはできません。医療的な相談は医師や看護師に行う必要がありますが、ケアマネジャーは医療職との連携をサポートします。

ケアマネジャーも一人の人間であり、完璧ではありません。役割と限界を理解することで、より現実的な期待を持ち、効果的に連携できるようになります。

こんな時、どう伝える?:具体的なケース別・ケアマネジャーへの効果的な相談術

「ケアマネさん、忙しそうだし、こんなこと相談してもいいのかな…」と遠慮していませんか? あなたが抱えている困りごとや要望は、ケアマネジャーにとってケアプラン作成の重要な情報源となります。遠慮なく、でも効果的に伝えるためのコツをご紹介します。

ケース1:「正直、もう疲れた、休みたい」レスパイト・限界を感じている時

これは、ケアマネジャーが最も知りたい、そして支援したい情報の一つです。にもかかわらず、多くのご家族が「頑張らなきゃ」「迷惑をかけたくない」と一人で抱え込んでしまいがちです。

伝え方のポイント

  • 余裕がないことを伝える

「ちょっと疲れていて…」ではなく、「〇〇な状況で、正直、心身ともに休む時間が必要です」「このままでは、介護を続けることが難しくなりそうです」と具体的に、切迫感を伝えることが重要です。

  • 具体的な休息のニーズを伝える

「週に〇時間は自分の時間が欲しい」「月に〇回はショートステイを利用したい」など、具体的な希望があると、ケアマネジャーはプランに落とし込みやすくなります。

  • 状況を具体的に説明する

「夜中に何度も起こされる」「一日中離れる時間がない」「自分の通院にも行けない」など、なぜ休息が必要なのか、その背景を伝えてください。

  • 「共倒れを防ぎたい」という視点

「私が倒れてしまったら、父(母)の介護ができなくなる。だからこそ、私が休息することは長期的に介護を続けるために必要なことなんです」と伝えるのも効果的です。ケアマネジャーは、家族の健康が持続可能な介護の基盤であることを理解しています。

あなたが休息を必要としていること、どうぞ遠慮なくケアマネジャーに伝えてください。それが、必要な支援につながる第一歩です。

ケース2:「今のサービス、合ってる?変更したいんだけど」(サービスの質・内容への不満や希望)

サービスの担当者には直接言いにくいことも、ケアマネを通して伝えることができます。

伝え方のポイント

  • 現状をはっきりと伝える

単に「あのヘルパーさん、合わない」「デイサービスに行きたがらない」と伝えるだけでなく、「〇〇な点で少し困っています」「具体的に〇〇といったサービスをお願いできますか?」のように、具体的な状況や希望を伝えましょう。

例:「食事の準備をお願いしているのですが、本人の好みに合わないようで残してしまうことが多いです。調理法について、もう少し柔軟に対応いただくことは可能でしょうか?」「デイサービスから帰ってくると機嫌が悪くなるのですが、日中どのような様子か教えていただけますか?また、本人がより楽しめるような活動はありますか?」

  • 事実と感情を分けて伝える

「〇〇な状況(事実)で、私はこう感じています(感情)」と落ち着いて話す方が、ケアマネも状況を理解しやすくなります。「~してくれなくて困る」だけでなく、「~してもらえると助かる」という建設的な伝え方も有効です。

  • 代替案の相談

「もし今のサービスが難しければ、他の事業所を紹介していただくことは可能ですか?」と、代替案の相談をすることも有効です。

サービス事業所へのフィードバックは、サービスの質の向上にもつながります。遠慮せず、でも感情的になりすぎずに伝えましょう。

ケース3:「費用の負担が厳しいんだけど…」(経済的な不安)

介護には費用がかかります。経済的な不安は、介護者の大きなストレス源の一つです。

伝え方のポイント

  • 正直に経済状況を伝える

「〇〇円以上の費用は継続的に負担するのが難しい状況です」「今後、費用が増えると困ります」など、率直に伝えてください。

  • 利用サービスの見直しを相談

現在利用しているサービスの中で、優先順位を見直したり、頻度を調整したりできないか相談しましょう。

  • 利用できる減免制度や助成制度について尋ねる

介護保険には高額介護サービス費の払い戻し制度などがありますが、それ以外にも市区町村独自の助成制度などがある場合があります。ケアマネが全ての制度を知っているわけではありませんが、情報を持っている可能性や、調べる手助けをしてくれる可能性があります。

  • 介護保険外サービスの選択肢について相談

保険外のサービスの中にも、比較的安価なものや、ピンポイントで必要な支援を受けられるものがあります。予算内で利用できる選択肢について相談してみましょう。

ケアマネはファイナンシャルプランナーではありませんが、制度内での費用調整や、利用可能な関連制度の情報提供は重要な役割です。経済的な不安も、介護を続ける上での重要な要素であることを理解してもらえます。

これからの時代に適した介護の考え方

ココを押さえれば大丈夫!サービス担当者会議の効果的な参加方法

サービス担当者会議は、ケアマネジャー、サービス事業所の担当者(各事業の専門職)、そして本人や家族が集まり、ケアプランの内容を確認・検討する場です。この会議は、ご家族の意向をケアプランに反映させるための非常に重要な機会です。

参加の心構え

この会議は、あなたが日頃感じていること、困っていること、こうしてほしいという希望を伝えるための場です。専門家の前だからと遠慮する必要はありません。あなたの率直な声が最も重要です。

【日頃の様子を具体的に伝える】
サービス利用時だけでなく、それ以外の時間帯の本人の様子(食事の様子、睡眠、気分、家族との関わり、困った行動など)は、家族にしか分からない貴重な情報です。サービス担当者はその情報がないと、ケアプランが実態に合わないものになってしまいます。

【自分の状況も伝える】
自分自身の体調、介護の負担、介護以外で抱えていることなども、簡潔に伝えましょう。「私も腰痛があって、移乗が大変な時があります」「自分の仕事が忙しく、夜間の対応が難しい日が増えました」など、ご自身の状況を伝えることで、必要なサービスの検討につながります。

効果的な発言のために

【事前に話したいことを整理しておく】
メモに箇条書きにしておくと、伝え忘れを防げます。

【分からないことはその場で質問する】
専門用語が出てきたり、説明が分かりにくかったりした場合は、「もう少し詳しく教えていただけますか?」と遠慮なく質問しましょう。

【決定事項を確認する】
会議の終わりに、誰が、いつまでに、何をするのか、といった決定事項を簡単に確認しておくと、後で混乱を防げます。

サービス担当者会議は、「サービスを受ける側」ではなく「チームの一員」として参加する、という意識が大切です。

ケアプランに「家族の休息時間」を組み込む

持続可能な介護のためには、介護者であるご家族自身の休息が不可欠です。この「家族の休息」をケアプランにしっかりと位置づけることは可能ですし、ケアマネジャーの重要な役割の一つです。

どう依頼するか

【率直に伝える】
ケアマネに直接、「介護保険サービスを使って、私(介護者)が休息する時間を作りたいです」と明確に伝えましょう。

【具体的な理由を添える】
説得力が増すために理由をしっかりと伝えます。「気分転換する時間が全く取れない」「介護から離れないと心身ともに疲弊してしまう」「持病の通院に行けない」など、ご自身の状況を説明してください。

【具体的なサービスを希望する】
「ショートステイを〇か月に一度利用したい」「特定の曜日の〇時間だけ、デイサービスまたは訪問介護を利用して、私は外出したい」など、具体的なサービス名や利用方法を提示すると、ケアマネも検討しやすくなります。

ケアプランでの確認

作成されたケアプランの「長期目標」「短期目標」「サービス内容」の項目を確認します。

【長期・短期目標】
「家族の心身のリフレッシュ」「介護負担の軽減」といった文言が入っているかを確認しましょう。

【サービス内容】
あなたの休息確保を目的としたサービス(ショートステイ、デイサービス、訪問介護など)が具体的に位置づけられているかを確認してください。もし反映されていない場合は、ケアマネにその理由を確認し、再度要望を伝えましょう。ケアプランはご家族の同意を得て作成されるものですから、遠慮する必要はありません。

「自分のための時間なんて贅沢…」と思わないでください。それは、あなた自身のためだけでなく、質の高い介護を長く続けるために必要不可欠な「投資」なのです。

「うちのケアマネさん、これでいいの?」良いケアマネの見分け方・変更を考えるサイン

ケアマネジャーとの相性も重要です。良いケアマネジャーに出会えれば、介護の道のりは心強いものになります。

良いケアマネジャーのサイン

  • 傾聴姿勢がある:あなたやご本人の話をしっかりと聞き、共感しようと努めてくれる。
  • フットワークが軽い:連絡への応答が早く、必要な対応を迅速に行ってくれる。
  • 情報提供が豊富:制度やサービスについて分かりやすく説明し、様々な選択肢を提案してくれる。地域のリソースにも詳しい。
  • ご本人とご家族、双方の立場を尊重する:ご本人の意向を最大限に尊重しつつ、ご家族の状況や負担にもしっかり配慮してくれる。
  • 他事業所との連携がスムーズ:関係機関との連絡調整を適切に行い、必要な情報共有ができている。
  • 話しやすく、信頼できると感じる:安心して相談できる雰囲気がある。

ケアマネジャーの変更を検討するサイン

  • 連絡しても応答が遅い、またはない:必要な時に連絡が取れない、対応してもらえない。
  • 一方的に話を進める、話をきちんと聞いてくれない:ご本人やご家族の意向を無視して、ケアマネ主導で物事を決めてしまう。
  • 提案の幅が狭い、知識不足を感じる:限られたサービスしか提案しない、制度に関する質問に的確に答えられない。
  • サービス事業所との連携がうまくいっていない様子がある:事業所との間で情報のやり取りが不十分で、トラブルが多い。
  • 「これ以上は無理」「制度ではできません」と、検討せずに突き放すような言動が多い。
  • 単純に相性が合わない、不信感がある。

もし、現在の担当ケアマネジャーとの関係性に不安や不満を感じる場合は、事業所や地域包括支援センターに相談して、変更を検討することも可能です。ケアマネジャーにも様々な人がいます。あなたとご家族にとって、最も心強いパートナーを見つけることが大切です。

最後に

ケアマネジャーとして様々なご家族に関わらせていただきました。その中で強く感じるのは、介護は一人で抱え込むものではない、ということです。そして、担当ケアマネジャーは、その介護の道を共に歩むことができる、非常に重要な存在だということです。

ケアマネジャーは、単なる制度の手続き屋さんではありません。あなたの声に耳を傾け、あなたと一緒に考え、利用できるあらゆる資源を使って、ご本人とご家族の生活を支えるためのプロフェッショナルです。

今日お伝えした「ケアマネ連携術」が、皆さんが担当ケアマネさんとより深く、より効果的に連携し、介護生活を少しでも楽にするための一助となれば幸いです。

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