気持ちのバランス

親の介護で結婚を諦めたくない|リアルな現実と将来のこと

2025年2月1日

「親の介護で結婚できないかも」

「介護を理由にパートナーと別れることになるかも」

少子高齢化の影響もあり、このような悩みを抱える人が増えています。結婚や恋愛関係を続けたいという気持ちと親の介護の間でジレンマが生じ、苦しい思いから抜け出せずにストレスや疲労が蓄積されていきます。時間や経済的な負担に加え、パートナーやその家族に対して説明や理解を求める場合もあり、それが受け入れられるかどうかでさらなる悩みが深まることもあります。

最終的に親の介護を優先し、自分の幸せを後回しにする選択を余儀なくされる状況も少なくありません。結婚や恋愛を諦めることで心の支えを失い、孤独感や将来への不安を増大させる要因となっています。

この記事では、介護と結婚や恋愛の両立に悩む方々のために、介護へのかかわり方や両立するために役立つ情報を事例とともにお届けします。

親を想う気持ちと恋愛のバランスがうまくいかない

親の介護に時間を注ぎたいという気持ちと、パートナーとの時間を大切にしたいという気持ちのジレンマは、簡単に解決できることではありません。さらに仕事や日常的な家事も加わって、限られた時間の中で全てを行うことは非常に難しくなります。

介護はどのくらい大変?

介護の大変さは親の身体状況や病状、環境、家族構成などによって変わってきます。具体例を見ていきましょう。

比較的軽度な介護で、協力者が多いケース

Aさんの母親がうつ病になり、家事ができなくなりました。父親が慣れない家事をしていますが、腰痛もあり十分にこなせません。そこで、兄弟姉妹で役割分担を決めました。Aさんは母親の通院に付き添い、Aさんの妹は週末に料理の作り置きを担当します。Aさんの弟は海外勤務のため、金銭的な援助を行っています。

両親ともに介護が必要で、介護者は一人のケース

Bさんの父親は脳梗塞の後遺症で車いすの生活となりました。入浴やトイレには介助が必要です。さらに母親が認知症を発症し、落ち着かない症状が増えたことから目が離せない状態となりました。同居していたBさんは、仕事以外の時間をほとんど介護に費やすことになり、場合によっては仕事を休む必要がありました。Bさんは一人っ子なので、他に介護を頼める人はいません


2016年社会生活基本調査(総務省)では、「介護者の1日にかける平均介護時間」について以下のような調査結果を出しています。

  • 女性:2時間28分
  • 男性:2時間32分

この時間数は平均であり、実際は親の疾患や身体状況によって変わってきます。兄弟姉妹がいるか、同居か別居かでも、介護体制に違いが生じます。

さらに、仕事をしている場合、毎日2時間半の介護時間をどう感じるでしょうか。例えば、18時半に帰宅してから21時まで介護を行うとすると、介護負担としてそれほど軽くないことがわかります。

金銭的な負担・悩み

親の介護で結婚や恋愛にブレーキがかかる人は、金銭的な悩みを抱えている人も少なくありません。親の年金額が低い場合や、医療や介護費用がかさむ場合、経済的な負担が大きくなります。自分自身の生活費や将来の貯蓄にも影響を及ぼすため、深刻な悩みとなります。

そのような状況で結婚を考えると、パートナーに金銭的な負担を強いるのではないか、迷惑をかけるのではないかという不安が生じます。

介護と金銭的な悩みから結婚をためらうケース

Cさんは最近プロポーズをされましたが、結婚を断ろうかと考えています。理由は一緒に暮らしている母親の介護と金銭問題です。両親ともに年金額が低く、貯金もほとんどありません。兄がいますが、職を転々として収入が不安定です。Cさんは会社員として働いていますが、生活費、水道光熱費、病院代などで月の給与の半分以上がなくなってしまいます。結婚しても相手に金銭的な迷惑をいつまでかけ続けるかわからず、明るい未来が想像できません

介護の相談ができない

介護の悩みは相談しづらいことが多く含まれています。認知症の症状や排せつの問題など、他者に知られたくない内容があり、一人で悩みを抱え込んでしまうことがあります。

相談しにくい理由は様々ですが、以下のようなことが挙げられます。

  • 恥ずかしさ:介護に関する問題はプライベートな内容が多く、他者に話すことが恥ずかしいと感じることがあります。
  • 理解の難しさ:介護の大変さや問題を他者に相談しても、十分に理解されず、共感を得られないことがあります。
  • 負担をかけたくない:他者に相談することで、その人に負担をかけることを恐れることがあります。

パートナーに介護状況を話したくても、引かれるのではないか、幻滅させるのではないかと不安になり、言い出せないこともあるでしょう。

認知症の母親との同居が理由で結婚が破談になったケース

Dさんの母親は車で40分ほどのところに兄と二人で暮らしています。母親は若くして認知症を発症し、1年後には介助がないと食事もできなくなりました。兄には結婚を考えている相手がいましたが、母親に会わせるために家へ招いたことがきっかけで結婚を断られました。結婚相手は母親との同居に同意していましたが、現実を目の当たりにして心変わりしたようです。Dさんは兄に代わって同居しようと考えましたが、介護の大変さを考えると躊躇してしまいます。

このように、介護の大変さは状況や環境によって違いがあり、悩みも複雑になっていきます。

介護と結婚や恋愛を両立するために必要なこと

親の介護と結婚や恋愛の両立は、多くの人にとって非常に難しい問題です。しかし、適切なサポートや対策を講じることで、両方をうまく調整し、どちらも大切にすることが可能です。以下に、介護と結婚や恋愛を両立するために必要なポイントを紹介します。

ポイント1:最初の介護相談は地域包括支援センターから

地域包括支援センターは、介護に関する総合的な相談窓口です。ここでは、介護保険の利用方法や介護サービスの提供方法、さらには介護者自身の悩みについても相談できます。専門職がアドバイスや利用できる制度の紹介、手続きの手順などを教えてくれるので、最初の相談先として非常に頼りになります。

直接行って相談したい場合は、担当者が外出している可能性もあるため、必ず電話でアポイントを取りましょう。また、最初の相談は電話でも受け付けてもらえます。遠距離や仕事で直接行かれない場合は、電話で問い合わせてみましょう。

相談例

  • 「親の介護をしていて、まだどこにも相談していないので連絡しました。どんな支援が受けられるかお聞きしたいのですが」
  • 「介護保険サービスを利用したいのですが、説明の時間をいただけますか」
  • 「親が介護を要する状態ですが、何からすればいいのかわかりません。相談できますか」

最初はこのような聞き方で十分です。あとは地域包括支援センターの担当者主導で話が進むので、安心して連絡を入れてください。相談費用も一切かかりません。

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ポイント2:介護サービスの活用

介護保険を利用して、訪問介護やデイサービスを積極的に活用しましょう。プロの介護サービスを利用することで負担を軽減し、生活実態に沿った支援が受けられるようになります。

介護保険サービスを利用するためには、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらう必要があります。ケアマネジャーは具体的なサービスの利用についても連絡調整を担ってくれるので、心強い存在です。家族介護者の支援も責務としてあるため、自分自身の介護負担についても相談しましょう。ケアマネジャーも地域包括支援センターと同様に、相談・支援は無料で受けられます。

「デイサービス利用で認知症の親を介護しながらパートナーと時間を確保するケース」

認知症の親を介護しているEさんは、介護保険サービスを利用して月~土曜日までデイサービスを利用することにしました。パートナーとは祝日と土曜日に会うことにしています。

介護保険サービスを利用するには、要介護認定の申請を行う必要があります。市区町村のホームページに申請方法が詳しく載っています。

Memo

金銭的な問題もケアマネジャーや地域包括支援センターで相談することができます。高額介護サービス費や医療費控除、介護サービス費用の減免、生活保護など、制度を利用した解決策を検討してみましょう。

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ポイント3:仕事と介護のバランスを取る

厚生労働省は「介護離職ゼロ」を掲げ、仕事と介護を両立するための施策として「育児・介護休業法」を打ち出しています。
介護休業や介護休暇を活用し、必要なときに休みを取得できるようにしましょう。また、制度を利用した柔軟な働き方を選択するのも、介護と仕事の両立を継続していく手段となります。

勤め先が制度をどのように整備しているか、まずは確認してみましょう。職場の上司や人事・労務課などに相談し、必要に応じて制度を利用していきます。勤務先の制度が明確になっていない場合でも、法律に基づいて利用することができます。

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ポイント4:パートナーとのコミュニケーション

結婚や恋愛と介護の両立は「話し合う」ことが鍵となります。介護の現実を共有し、お互いの気持ちを率直に伝えることで、理解を深めることができます。また、問題が生じたときや悩みを感じたときにも、隠さずにパートナーに伝えることで、共に乗り越える力を育むことができます。

具体的な方法としては、以下のような点を心がけると良いでしょう。

  • 定期的な時間を作って、心の内をシェアする:介護や日常生活の中で感じる悩みや気持ちを、定期的に共有する時間を大切にしましょう。そうすることで、お互いの気持ちを理解し、支え合うことができます。
  • 共通の目標を持つ:お互いに共通の目標を持ち、それに向かって一緒に努力することで、絆が深まります。例えば、「親の介護をしながらも、週に一度は二人だけの特別な時間を大切にする」といった具体的な目標を立てるのも良いでしょう。
  • 感謝の気持ちを伝える:パートナーに対して感謝の気持ちをいつも忘れずに伝えましょう。小さなことでも「ありがとう」と伝えることで、関係を温かく保つことができます。

大切なのは「言葉」でしっかり伝え、パートナーとの良好なコミュニケーションを保つことです。お互いの気持ちや状況を理解し合い、共感を持って接することが大切です。

さまざまな制度やサービスを組み合わせて、パートナーとの関係を深めたケース

Fさんは、パートナーと結婚前提でお付き合いをしています。父親の介護のため仕事を時短勤務にし、毎日仕事終わりに父親宅へ通っていました。そのためにパートナーと会う時間がとれず、気持ちが行き違うことが増えました。

Fさんは介護保険サービスを利用し、訪問介護を週3日、デイサービスを週3日利用することにしました。夕食は配食サービスと冷凍弁当を活用し、毎日父親宅へ行かなくても良い体制に整えました。さらに毎月4日間、介護保険施設のショートステイ(施設に宿泊するサービス)を計画的に利用し、パートナーと時間を気にせず過ごせる日を作りました。

Fさんは介護の悩みをパートナーにも話し、気持ちを共有することで支えてもらっています。

ポイント5:テクノロジーの活用

結婚、恋愛、仕事などと介護の両立するためには、テクノロジーの活用が欠かせません。介護関係者との連絡をメールやSNSにするだけで、電話連絡に振り回されることがなくなります。さらに、コミュニケーションツールは場所にこだわらず話し合いをすることもできます。スマートホームデバイスでエアコンなどの遠隔操作も可能ですし、見守りのカメラを設置することで、安全を確認することもできます。

介護を楽にできるツールが増えているので、情報を積極的に集め、活用していきましょう。

まとめ

大切なパートナーとの関係を維持しながら親の介護を続けることは容易ではありません。介護と同時進行でパートナーとの時間をうまくやりくりする必要がありますし、互いの理解と協力が不可欠です。

まずは介護保険サービスなどの制度を活用し、協力者や支援者を増やすことで介護負担を軽減しましょう。そのためには、自分がどうしたいか、自分のできる範囲はどこまでかをしっかりとケアマネジャーに伝えることが大切です。介護に専念してパートナーとの未来を諦めるのではなく、自分自身が元気で幸せな姿を見せることができる親孝行を目指しましょう。

この記事では、介護と結婚や恋愛の両立に悩む方々に向けて、具体的なポイントや事例を紹介しました。適切なサポートとコミュニケーションを通じて、介護と結婚や恋愛のバランスを取りながら、充実した生活を送るための参考にしてください。

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