
「「親の介護があるから、結婚は難しい」
「この状況を伝えたら、大切な人が離れていってしまうのではないか」
そんな思いを抱え、ご自身の幸せを後回しにしていませんか?
今、この記事を読んでいるあなたは、これまで十分に親御さんと向き合い、最善を尽くされてきたはずです。それゆえに、「これ以上の両立は難しい」という限界と、「それでも自分の未来を諦めたくない」という切実な葛藤の間に立たされているのではないでしょうか。
結論からお伝えします。 親を想うことと、あなた自身の結婚を天秤にかける必要はありません。
元ケアマネジャーとして多くの家族を見守ってきたからこそ断言できるのは、誰かの犠牲の上に成り立つ介護は、いつか限界を迎えるということです。親御さんの介護を大切にしながら、自分も幸せになる道は「精神論」ではなく、持続可能な「システムの構築」にあります。
この記事では、共倒れを防ぎ、あなたの人生を再始動させるための「具体的なステップ」を解説します。
介護が「結婚の壁」になってしまう真の理由

介護と恋愛・結婚の両立が難しいのは、あなたの努力が足りないからではありません。構造的に、以下の3つの重圧が「個人の限界」を超えてしまうからです。
1.「終わりが見えない」ことへの恐怖
介護の期間は平均して5年1ヶ月。さらに、約18%の方は10年以上に及ぶという調査結果があります(※)。
「いつまで続くかわからない」という不透明さは、パートナーに対する「いつまで苦労をかけるかわからない」という不安に直結し、結婚への一歩を躊躇させる一因となります。しかし、この「平均5年」という月日は、あなたが一人で抱え続けなければならない期間を指すものではありません。
※出典:(公財)生命保険文化センター「2021年度 介護にまつわる意識調査」より
2. 経済的な「境界線」の曖昧さ
親御さんの年金だけでは生活費が不足し、ご自身の給料から補填しているケースは少なくありません。しかし、自分の生活を削っての仕送りは、結婚生活において「家計の不透明さ」という深刻なリスクになります。
3. 誰にも言えない「負の感情」
実際の介護は、穏やかな微笑ましいことばかりではありません。そこには、大切な人にさえ容易には打ち明けられない、生々しい現実が横たわっています。親の尊厳に関わることだからこそ、一人で抱え込み、結果として「自分さえ我慢すればいい」という思考に陥ってしまうのです。
共倒れを防ぐための境界線

これまで紹介したケースで共通していたのは、誰もが「親を大切にしたい」という純粋な想いを持っていたことです。しかし、その献身さが、皮肉にもご自身の未来を狭めてしまう要因となっていました。
日々の負担を「自分の忍耐」で解決しようとせず、持続可能な形へと整えていく。あなたの人生を再び前へと進めるために、見直していただきたい3つのポイントがあります。
ポイント1:経済的な自立を明確にする(世帯分離の活用)
ご自身の収入や貯金を親の介護に充て続けることは、長期的には共倒れのリスクを孕んでいます。もし親御さんの収入が限られており、あなたの経済的負担が重いのであれば、住民票上の世帯を分ける「世帯分離」という選択肢があります。
これは、公的な制度を正しく活用するための合理的な手続きです。世帯を分けることで所得に応じた負担軽減が適用され、介護保険の自己負担額が抑えられたり、高額介護サービス費の還付を受けやすくなる可能性があります。経済的な境界線を引くことは、あなたが新しい家庭を築く上での、大切な基盤を守ることに繋がります。
ポイント2:地域包括支援センターを「仕組み作り」の相談先に
地域包括支援センターは、介護の入り口となる公的な相談窓口です。まずはここを訪ね、「自分の人生(仕事や結婚)を優先しながら、親を支えたい」という本音を伝えてください。
センターの職員は、あなたの状況を聞き取った上で、適切な介護サービスを提案してくれます。その後、具体的にどのデイサービスやショートステイを使うか、日々の詳細な計画(ケアプラン)を共に作成するのが「ケアマネジャー」の役割です。 センターを通じて信頼できるケアマネジャーと繋がることで、あなたの自由時間を確保するための「仕組み作り」が動き出します。
ポイント3:パートナーに「介護の役割」を求めない
良好なパートナーシップを維持するためには、相手を「介護の協力者」として数えないという決断も必要です。あなたが相手に求めるべきは、身体的な介助のサポートではなく、「介護から離れた一人の自分に戻れる、心安らぐ時間」を共有することです。
入浴や排泄などの介助といった実務的な負担は、すべてプロのサービスに委ねる。そして、二人の時間は「介護」を一切持ち込まない場所として大切に育む。この明確な切り分けこそが、相手に安心感を与え、二人の関係を永く健やかなものにします。
自分の時間をさらにコントロールするための「工夫」

公的なサービスを導入するだけでなく、日々の細かな不安や連絡を効率化することで、介護に縛られない「自分たちだけの時間」をより確実に作り出すことができます。
1. デジタルツールで「安心を可視化」する
親の様子が気になって目の前の会話に集中できない状況は、ツールで解決できます。
- 見守りツールの活用
スマホで確認できる「見守りカメラ」や、ドアの開閉で安否がわかる「人感センサー」などの導入が役に立ちます。
- 通知機能の利用
「何かあればスマホに通知が来る」という環境を整えることで、自ら頻繁にスマホを確認する必要がなくなります。「通知が来ない=安全」という確証を持つことが、パートナーと向き合うための確かな時間を作り出します。
2. 職場との「両立の合意」を形成しておく
キャリアと生活の安定は結婚の基盤です。急な対応で慌てないための準備をしておきましょう。
- 制度を「体制構築」のために使う
介護休業・休暇は、直接介護をするためだけでなく、「ケアマネジャーとの面談」や「施設見学」など、自分が手を離せる仕組みを整えるために活用してください。
- 周囲への共有
上司や人事に現状を伝えておくことで、突発的な事態でも「自分ひとりが動かなければならない」という状況を回避でき、パートナーに過度な負担をかけるリスクも減らせます。
3. 専門職との連絡を「自分のタイミング」にシフトする
ケアマネジャーやサービス事業所との電話連絡は、仕事中やパートナーとの時間であっても、強制的に意識を介護へと引き戻される負担があります。
- メールやメッセージアプリの活用
緊急時以外の報告や相談は、メールやLINEなどのメッセージツールで行えるよう相談してみてください。
- この方法のメリット
自分の都合が良い時に確認・返信ができるため、大切な時間を電話で中断されることがなくなります。また、やり取りが文字で残るため、あとで状況をパートナーへ正確に伝える際の手間も省けます。
自分の人生を「介護の一部」にしないために

介護と結婚の両立において最も大切なのは、介護の手法(在宅か施設か)を選ぶ前に、あなた自身の人生を主軸に置くという意識の転換です。
「自分を主軸に置く」介護の捉え方
介護に直面すると、どうしても「親のために何をすべきか」という視点に偏りがちですが、これからは「自分の人生をどう歩むか、その中に介護をどう配置するか」という視点を持ってみてください。
- 介護を抱え込みすぎず、自分が健やかでいられるペースを維持する
- 親の要望をすべて優先するのではなく、自分の生活と両立できる範囲を見極める
こうした考え方は、決して親御さんを軽んじることではありません。あなたが主体的に生きることが、結果として持続可能なサポートに繋がり、結婚という新しいステップへ踏み出す力になります。
納得できる「選択肢」をフラットに検討する
自分を主軸に置いて考えたとき、一つの有効な手段として浮上するのが「施設への入所」という選択肢です。
「施設に入れるのはかわいそう」と感じ、それが結婚を躊躇させる要因になっている場合もあります。しかし、ご自身が疲弊して心からの笑顔を失ってしまうことは、親御さんにとっても本望ではないはずです。
施設という選択は、親御さんに専門職による24時間の安心を提供すると同時に、あなたが心にゆとりを持って親御さんと接するための環境づくりとも言えます。結果として、落ち着いた環境で結婚について考えられる余裕ができてきます。在宅であれ施設であれ、大切なのは「あなた自身が、納得感を持ってその形を選んでいるか」ということです。
最後に:あなたの幸せを、親孝行の一部にする
親を想うことと、誰かを愛すること。この二つを天秤にかける必要はありません。
大切なのは、一人で抱え込むことを解決策とせず、「介護は社会の仕組みや道具に任せ、自分は愛する人との時間を豊かにする」という選択を、自分自身に許してあげることです。あなたが自分らしく、健やかな姿でいることこそが、親御さんにとっても何よりの安心に繋がるはずです。
まずは地域の窓口で、「自分の生活を維持するための選択肢」を尋ねてみることから始めてみませんか。適切な境界線を引くことで、今の状況を整理し、落ち着いてこれからのことを考えられるようになるはずです。


