
久しぶりに帰省したら、親の歩き方が以前より遅くなっていた。電話で話す声に、なんとなく元気がない気がする——そうした小さな違和感を覚えたとき、多くの方が「様子を見よう」と先送りにしてしまいます。しかし、介護は早めに動き出せるほど、本人にとっても家族にとっても選択肢が広がります。
とはいえ、「誰に、どこへ相談すればいいのか」が分からず、動き出せない方も多いのではないでしょうか。最初の相談先として頼りになるのが、地域包括支援センターです。高齢者に関わる人なら誰でも、無料で相談できます。この記事では、相談できる内容や対応してくれる専門職、初めて相談するときの準備と流れを解説します。
元ケアマネジャー歴14年(支援300件以上、相談1000件以上)。地域包括支援センターは、介護保険の申請前から頼れる最初の窓口です。日々やり取りしてきた立場から、相談できる内容と、初めて相談するときの準備をまとめました。
この記事でわかること
- 地域包括支援センターとは何か、どんな専門職が対応してくれるのか
- どんな相談ができて、費用はかかるのか
- 初めて相談するときの準備と流れ
- 本人でなくても、離れて暮らす家族でも相談できるのか
地域包括支援センターとは

地域包括支援センターは、高齢者やその家族の暮らしを支える、地域の総合相談窓口です。介護保険の申請前でも相談でき、相談は無料です。
市区町村が設置していて(運営を社会福祉法人などに委託している場合もあります)、全国に約5,500か所あります(令和7年4月末現在、厚生労働省)。担当する地域が住所ごとに決まっているため、親の介護の相談は、親が住んでいる地域のセンターにします。
「介護の備え」という意味でも、役割や相談方法を知っておくと、いざ介護が始まったときに動きやすくなります。
地域包括支援センターでは、どんなことを相談できる?
「こんなことで相談していいのかな」と迷うような段階でも大丈夫です。実際に多いのは、次のような相談です。
- 親の様子が気になる(物忘れが増えた、歩き方が変わった、家の中が散らかってきた)
- 介護保険を使いたいが、何から始めればいいか分からない
- 認知症かもしれないが、どこに相談すればいいか分からない
- 一人暮らしの親の見守りや、お金の管理、詐欺被害が心配
- 介護を続けている自分自身が疲れてきた
相談するのは、本人でなくてもかまいません。離れて暮らす家族や、近所の高齢者を心配している方からの相談も受け付けています。
地域包括支援センターの4つの役割
介護・医療・保健・福祉の面から高齢者を支える「総合相談窓口」で、主な役割は次の4つです。
総合相談支援
介護や暮らしの困りごとの相談を受け、必要なサービスや制度につなぎます。家族からの相談も受け付けています。
介護予防ケアマネジメント
要支援の方や、介護予防が必要な方が、自立した生活を続けられるよう支援します。
権利擁護
成年後見制度の活用支援や、詐欺被害・虐待の防止と早期発見など、高齢者の権利を守ります。
包括的・継続的ケアマネジメント支援
地域のケアマネジャーへの助言や、医療・介護の関係機関との連携づくりを行います。主にケアマネジャーを支える役割なので、家族が直接使う場面は多くありません。
地域包括支援センターの頼れる専門職

保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)の3職種が配置され、チームで相談に対応します。
保健師(または経験のある看護師)
健康や介護予防、認知症に関する相談
社会福祉士
暮らしの困りごとや在宅介護の悩み、権利擁護に関する相談
主任介護支援専門員
地域のケアマネジャーを支える役割で、支援が難しいケースの助言などを行います
高齢者の人数が少ない小規模な自治体などでは、国の特例により、配置される職種や人数が少ない体制になることもあります。
初めて相談するときの準備と流れ

地域包括支援センターの管轄地域に住む65歳以上の高齢者、またはその支援などに関わっている人が利用できます。
初めて相談する前に知っておきたい5つのこと
地域包括支援センターを利用する場合、以下のことに注意しておくと相談がスムーズに進みます。
- 相談したい対象者が住んでいる地域の地域包括支援センターを利用する
親の介護相談であれば、親が住んでいる場所の地域包括支援センターを利用します。
自治体独自のサービスが異なる場合や、介護予防への取り組みにも地域差があるため、相談できる地域包括支援センターはどこなのか調べておきましょう。
親の住所の市区町村名と「地域包括支援センター」で検索するか、市区町村のホームページや役所の高齢者担当窓口で確認できます。
- アポイントメントを取る
地域包括支援センターの職員は、高齢者宅への訪問で不在のことも多いため、相談が必要な場合は日程をあらかじめ調整しておくことがおすすめです。
- 最初の相談は電話でも可能
相談は電話でも可能です。
遠方に住む親が心配だけれど、仕事や家庭の事情などで行くことができないときは、電話で問い合わせをしてみましょう。
- 相談したいことをメモしておく
いざというときに、聞きたいことがまとまらなかったり、聞き忘れてしまうことがあります。
例えば認知症の症状などは、言葉にするとうまく説明できないこともあります。
念入りな準備は必要ありませんが、何を相談したいのか・聞きたいのかをまとめておくとよいでしょう。
実例アドバイス
ケアマネが相談を受けるとき、よく確認する項目です。すべて分からなくても大丈夫です。分かる範囲でメモしておくと、話がスムーズに進みます。
- 困りごと:いつ頃から、何が気になっているか
- 生活の様子:食事・服薬・入浴など、日常生活でできていること・難しくなっていること
- 通院先:かかりつけの医療機関
- 本人の気持ち:相談することを本人が知っているか、どう思っているか
- 介護保険の申請の有無:すでに申請しているか、まだか
- 相談は無料
地域包括支援センターへの相談は無料です。一方、介護保険サービスなどを実際に利用する場合は、利用料がかかります。金額や自己負担の割合は、利用を決める前に説明を受けて確認しましょう。

相談から支援までの流れ(一例)
対応は自治体やセンターによって異なりますが、一般的には次のように進みます。
- 電話または窓口で相談し、困りごとや状況を伝える
- 必要に応じて、自宅訪問や面談で本人の様子や生活状況を確認する
- 状況に合わせて、介護保険の申請の支援、サービスや医療機関の紹介、地域の支援へのつなぎなどを行う
- その後も必要に応じて、見守りや相談を続ける
相談したからといって、サービスの利用や申請を必ずしなければならないわけではありません。まずは状況を伝えるだけでも大丈夫です。
ケース1
最初の相談は地域包括支援センターで受け、その後、民間の事業所のケアマネに引き継いだケースです。センターとケアマネの間で情報のやり取りが行われたため、家族の負担は少なく、利用していたサービスも途切れることなく続けることができました。
地域包括支援センターへの相談は早めが吉
元気なうちから地域で行われている介護予防体操や集まりに参加することで、人との交わりを持つことが良い刺激となっていきます。
高齢者がいつまでも介護を必要としないように、介護予防の意味でも地域包括支援センターを利用するとよいでしょう。
さらに、「地域で見守る目」も増えるため、何か異変や病状の変化があれば気づく確率も高まります。
それが「介護の備え」になっていきます。
早めに相談できた場合と、様子を見ているうちに状態が進んだ場合の例です。
ケース2
親が骨折して入院しました。退院後は買い物や家事に制限が出るため、家族は「一人暮らしを続けるのは難しいのでは」と心配していました。そこで退院前に地域包括支援センターへ相談し、退院後の生活を支える体制を整えました。その結果、一人暮らしを続けることができ、できることも増えて、安定した生活を送れるようになりました。
ケース3
帰省したとき、親が急激に痩せていることに気づいたものの、本人の「大丈夫」という言葉を信じて、様子を見ることにしました。半年後の帰省では、体力が落ちて、日常の家事ができなくなっていました。慌てて地域包括支援センターに相談し、栄養バランスの良い配食サービスを一時的に利用したところ、体力が回復しました。その後は介護予防の体操教室にも通い、見守ってくれる人の目も増えました。
よくある質問
まずは、親が住んでいる地域の地域包括支援センターです。親の住所の市区町村名と「地域包括支援センター」で検索すれば連絡先が見つかります。介護保険の申請前でも相談でき、必要に応じて申請の支援やサービスの紹介につなげてもらえます。
地域包括支援センターへの相談は無料です。一方、介護保険サービスなどを実際に利用する場合は、利用料がかかります。金額や自己負担の割合は、利用を決める前に説明を受けて確認しましょう。
いいえ、相談したからといって、申請やサービスの利用が必須になるわけではありません。まずは状況を伝えるだけでも大丈夫です。今すぐ必要でなくても、選択肢を知っておくと、いざというときに動きやすくなります。
はい、本人が同席しなくても、家族だけで相談できます。高齢者は遠慮して困りごとを話さないことも多く、家族が先に状況を伝えることで、早めの備えにつながります。本人への声かけの仕方も、あわせて相談してみましょう。
はい、電話でも相談できます。親が住んでいる地域のセンターに連絡し、困りごとや親の様子を伝えてみましょう。事前に相談したいことをメモしておくと、話がスムーズです。その後の進め方は、状況に応じて案内してもらえます。
地域包括支援センターは、介護保険を使う前の段階でも相談できる総合窓口です。ケアマネジャーは、介護保険サービスを使い始めるときにケアプランを作り、サービスを調整する担当者です。センターには主任ケアマネジャーも配置されています。
まとめ
地域包括支援センターは、高齢者に関わることを幅広く相談できる窓口です。家族でなくても、ご近所の高齢者が心配な場合でも応じてくれます。
高齢者自身は困っていることがあっても遠慮したり、「自分はまだ大丈夫」と過信している場合もあり、相談しないケースが目立ちます。
そのため、家族や近所の人が「おかしいな」と感じて相談することで大ごとに至らない場合もあります。
高齢者に対して不安や心配があれば、ささいなことでも躊躇せずに相談してみましょう。


