仕事と介護の両立

親の介護と仕事の両立|絶対にしてはいけない3つのこと

2024年10月30日

元気だった親が突然、病気や介護が必要になったとき、「親孝行のために」と無理をしていませんか?よかれと思ってした行動が、かえって共倒れを招いてしまうことも少なくありません。

在職14年・相談実績500件以上の元ケアマネジャーとして、仕事と介護を両立するご家族に数多く関わってきました。その経験から見えてきた、絶対に避けたい3つの行動と、今の時代に合った新しい両立の考え方を、事例とともに解説します。

この記事でわかること

  1. 親の介護を「やりすぎる」ことでかえって親の心身機能が低下してしまう理由
  2. 仕事を長期間休んで介護に専念することが、なぜ両立をより難しくするのか
  3. リモートワーク中に介護をしてしまうことの落とし穴
  4. 「介護は親孝行」という考え方をアップデートする、今の時代に合った両立の視点

これはNG①:介護をやりすぎてしまう

親に介護が必要になった際、「いい機会だから親孝行をしよう」という気持ちになることがあります。しかし、親を大切にしすぎると思わぬ結果を招くことがあります。

ケース1

高齢の母親が肺炎で入院し、退院後に日常生活の一部でサポートが必要となりました。息子のAさんは親孝行の気持ちから、10日間仕事を休み、家事全般を引き受けながら、母親が安静に過ごせるよう心がけて介護を行いました。しかし1週間後、母親はトイレに行く距離も歩けなくなり、車いす生活に。これにより介護の負担が増え、Aさんは職場復帰の目途が立たなくなりました。

大切にしすぎることで筋力が低下する

筋肉の伸縮が行われない寝たきりの状態では、1週間で約3~5%、2週間で約10%の筋力が低下すると言われています。さらに、筋力だけでなく関節の動きも悪化し、全身の機能が低下する悪循環が生じます。

ケアマネ目線メモ

Aさんの適切な介護方法は、母親のできない部分のみをサポートし、それも徐々に減らしていくことでした。介護保険サービスを活用してデイサービスなどに通い、回復と悪化の予防を図ることが重要です。

「親の介護はやりすぎない」が重要なポイントです。親の自立を促すためには、できる範囲でサポートを行い、必要に応じて介護の専門職に任せることが大切です。また、介護者自身も無理をせず、負担を減らしながら取り組むことを心がけましょう。

これはNG②:仕事を長期間休み、介護に専念する

介護のために長期休暇をとると、職場復帰が困難になり、経済的負担も増加する可能性があります。

ケース2

Bさんは久しぶりに帰省した際、両親の生活がうまくいっていないことに気づきました。母親は認知症を発症し、父親も体調を崩しており、家の中はゴミが散乱している状態でした。Bさんは長期休暇をとり介護に専念しましたが、両親が介護保険サービスを拒否し、介護から抜け出せなくなりました。その結果、仕事復帰ができず、プロジェクトから外されることになりました。

介護のために長期休暇を取るのはNG

長期間の介護に専念すると、以下の問題が生じる可能性があります。

  • 親が家族に依存する:長期的な家族介護は依存を引き起こし、介護者がいないと生活できなくなる恐れがあります。
  • 介護保険サービス導入のタイミングが遅れる:家族が介護に専念すると、「身内の介護の方が良い」と考え、介護保険サービスの利用を拒む場合があります。その結果、体を動かす機会が減り、症状が悪化しやすくなり、回復のチャンスを失う恐れがあります。
  • 介護者自身が仕事に復帰しづらくなる:介護から抜け出せない状況が続くと、職場復帰が難しくなり、介護離職のリスクが高まります。

これらの理由から、介護のために長期休暇を取るのは避け、早いタイミングで介護保険サービスを利用しながら、仕事と介護を両立させることが重要です。

ケアマネ目線メモ

Bさんは帰省して異変に気づいた段階で、地域包括支援センターに相談すべきでした。早期に介護保険サービスを導入し、ケアマネジャーと連携すれば、両親の生活を安定させられます。サービスを拒まれる場合は、専門職からの説得を頼るのも有効です。

Bさん自身も早めに職場復帰し、上司や人事部と相談しながら「介護休暇」「介護休業」を計画的に活用することが、両立への近道です。

介護と仕事を両立させるには、早めに適切な支援を受けることが欠かせません。計画的に介護保険サービスを利用し、周囲の協力を得ながらバランスを保つことで、介護者自身の心身の健康を守ることにもつながります。

これはNG③:リモートワークの落とし穴

リモートワークは介護を両立する方法の一つですが、仕事と介護の境界線が曖昧になり、実際には多くの問題を引き起こすことがあります。

ケース3

Cさんはリモートワークをしながら認知症の父親を介護していました。しかし、仕事中に父親が徘徊したり、危険な行動への対応に追われることが多く、仕事と介護を両立するのが困難でした。その結果、Cさんは心身ともに疲れてしまい、体調を崩してしまいました。

境界線の曖昧さ

リモートワークでは、常に介護ができる体制になりがちです。その結果、頻繁に仕事を中断する必要が生じ、集中が難しくなります。これにより、仕事の効率が低下し、最終的にはパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。

さらに、仕事と介護の境界が曖昧になることで、どちらにも十分な力を注ぐことが難しくなります。この状況は精神的なストレスを増大させ、長期的には健康に悪影響を与える可能性があります。

ケアマネ目線メモ

Cさんに必要だったのは、リモートワーク中に自分で介護をするのではなく、介護保険サービスを活用することでした。特にデイサービスは送迎付きで、約5〜6時間は介護から解放される時間を確保できます。介護の質を保ちながら、仕事にも集中できる環境を整えることが、両立のポイントです。

リモートワークは、仕事と介護を両立させるために導入する企業が増えています。しかし、常に介護ができる環境になることで、かえって介護負担や精神的なストレスが増加することもあります。そのため、リモートワークを活用する場合でも、介護保険サービスを積極的に利用し、適切な距離を保つことが大切です。

考え方を変える・見方を変える

仕事と介護を両立するためには、考え方や視点を柔軟に変えることが不可欠です。現在の人口構造の変化により、50年前の介護の考え方は今の時代には適応しづらくなっています。そのため、時代に合った新しい考え方を取り入れることが求められます。ここでは、仕事と介護を両立させるために役立つ「新しい視点」をご紹介します。

出社はレスパイトになる

出社することは、介護から一時的に解放される大切な休息(レスパイト)の時間になります。職場で仕事に集中することでリフレッシュでき、心身の負担を軽くする効果も期待できます。また、仕事仲間との会話や友人とのランチを楽しむことで、自分の時間を大切にする機会にもなります。

出社中は、デイサービスなどの介護保険サービスを利用して、介護を専門家に任せるのがおすすめです。これにより、安心して仕事に専念できる環境を整えることができます。

介護をプロジェクトとして考える

介護をプロジェクトとして捉えることで、計画的かつ効率的に進めることができます。まず、ケアマネジャーや介護の専門家と連携し、目標を明確にしましょう。役割分担を行い、定期的に進捗を確認することで、状況に応じた適切な対応が可能になります。

また、デイサービスや訪問介護を活用して「介護をアウトソーシング」することで、負担を軽減できます。家族内で役割を分担し、直接介護に関われない家族には金銭面での支援をお願いするなど、柔軟な考え方が重要です。

さらに、時間管理やプロジェクトマネジメントの手法を取り入れることで、仕事と介護のバランスをより効果的に整えられます。このように、計画的なアプローチと専門家の力を借りることで、負担を減らしながら効率的な介護が可能になります。

介護で親孝行はしない

現代では高齢者を支える側が減少しているため、家族だけで介護を行うのは現実的ではありません。親孝行の気持ちから過度に介護をすると、介護者の負担が増し、親の自立を妨げるだけでなく、仕事との両立も難しくなります。

「介護は家族がやるべき」「介護は育ててもらった恩返し」「介護は親孝行だ」といった考え方は、現役世代10人で1人の高齢者を支えていた約70年前(昭和25年時点)のものです。実際、内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、令和6年には現役世代2.0人で高齢者1人を支える状況となっており、「介護は親孝行」という考え方は現実にそぐわなくなっています。

親孝行は愛情や感謝の気持ちを示す形で行い、食事や会話を楽しむなど、一緒に過ごす時間を大切にすることに重点を置きましょう。

まとめ

仕事と介護を両立させるには、過度な介護を避けること、介護のために長期休暇を取らないこと、そしてリモートワークでの介護の限界を理解することが大切です。

また、介護に対する考え方を今の時代にアップデートし、新しい視点を持つことも欠かせません。適切な支援を受け入れ、効率的な介護方法を取り入れることで、仕事と介護のバランスを上手に保つことが可能になります。

tefutefu

この記事を書いた人

tefutefu

元ケアマネジャー(支援300件以上、相談1000件以上)。企業向け「仕事と介護の両立」セミナー、一般の介護者向けセミナーの講師としても活動。これまでの経験をもとに、在宅介護者向けの認知症ケア情報や、介護をひとりで抱え込まないための情報を発信中。

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