
高齢な親にスマートフォンやパソコンを教えようとしたものの、「どうせ年だから無理」「説明してもわからない」と諦めていませんか? 多くの人が抱えるこの悩みは、親自身の「もう新しいことは覚えられない」という思い込みが原因かもしれません。
しかし、これは大きな間違いです。高齢な親にとって、ITは生活の質を劇的に向上させ、将来、介護が必要になった時の備えにもなります。
この記事では、親がITを使いこなせるようになるための心構えと、実践的な教え方のコツを、具体的なステップでお伝えします。ITは、親の生活を豊かにするだけでなく、将来的な介護者の負担を減らす大きな味方になります。諦める前に、ぜひこの記事を読んで、親子の新しいコミュニケーションに挑戦してみてください。
ステップ1:教える前に、あなたの心構えを変える

親にITを教える際、最も重要なのは、教える側のあなたの心構えです。イライラや焦りは、親の学習意欲を損なう最大の敵。次の3つのポイントを意識しましょう。
- あなたの「普通」は通用しない
私たちは、日頃からITに触れているため、当たり前だと思っていることが多すぎます。画面をスワイプする、アイコンをタップする、といった操作も、初めての人には全く新しい概念です。高齢であることで、新しいことを覚えるのに時間がかかるのは自然なこと。親のペースに合わせ、一歩ずつ丁寧に教える忍耐力が不可欠です。
- 「教える」から「一緒に楽しむ」へ
あなたが「親切に教えてあげている」という意識でいると、親は「迷惑をかけている」「できない自分はダメだ」と感じてしまいます。「すごい!できたね!」「一緒にやってみよう!」という声かけを心がけ、親が自分でできた喜びを感じられるようにサポートしましょう。
- 失敗は当たり前。笑い飛ばせる関係を
誤って画面を消してしまったり、どこを押せばいいかわからなくなったり、失敗は必ず起きます。そんな時、「なんでわからないの」と責めるのではなく、「ああ、そういう操作もあるのか!」と二人で笑い飛ばせるような関係を築くことが大切です。失敗を恐れずに挑戦できる環境が、学びを加速させます。
ステップ2:好奇心を引き出す「ITの魅力」を伝える

親にITを教えるには、まず「なぜITが必要なのか?」という動機付けが不可欠です。「便利だから」という漠然とした理由だけでは、なかなかやる気にはつながりません。親の興味や関心に合わせて、具体的なITの魅力を伝えましょう。
- 趣味の世界を広げる
もし親がガーデニング好きなら、珍しい植物の育て方をインターネットで検索したり、同じ趣味を持つ人々のブログを見たりする方法を教えてあげましょう。料理が好きなら、レシピサイトや動画を一緒に見つけるのも良いでしょう。ITは、趣味の世界を無限に広げるツールになります。
- 孫や家族とのコミュニケーションを深める
「〇〇(孫)が送ってくれたLINEのスタンプ、見てみない?」「ビデオ通話で、〇〇(孫)と顔を見ながら話せるよ」と、身近な家族とのコミュニケーションツールとしてITを紹介します。メッセージアプリやビデオ通話アプリなど、簡単な操作で家族とつながれる楽しさは、何よりのモチベーションになります。
- 脳の活性化と社会とのつながり
ITの操作は、脳の新しい回路を刺激し、認知機能の維持・向上に役立つことが科学的に証明されています。また、地域の情報や行政サービスをスマートフォンで確認できるようになることで、社会とのつながりを保ち、孤立を防ぐことにもつながります。
ステップ3:実践!親の好奇心を刺激する教え方のコツ

親の「やってみたい!」という気持ちが芽生えたら、いよいよ実践です。最初は簡単な操作から始め、小さな成功体験を積み重ねていきましょう。
- ハードルを低くする
いきなり複雑なアプリを教えるのではなく、まずは最もシンプルな操作から始めます。
スマホの場合:ロック解除、電話の発信・受信、カメラの使い方など。
パソコンの場合:電源のオン・オフ、マウスの動かし方、インターネットの開き方など。
- 具体的な目的を持たせる
「ただやってみて」と言われるだけでは、何のためにやるのか分からず、すぐに飽きてしまいます。「この前撮ったひまわりの写真、家族みんなで見れるように送ってみようか」といった具体的な目的を持たせることで、親の集中力とモチベーションを維持できます。
- 質問しやすい環境を作る
「いつでも聞いてね」「何度聞いても大丈夫だよ」という言葉を常にかけ続けましょう。親が「こんなこと聞いたら恥ずかしい」と思わないように、質問を歓迎する雰囲気を作ることが大切です。
ステップ4:日常にITを組み込む

親がITに慣れてきたら、日常生活にITを自然に組み込んでいきましょう。
- 毎日の習慣にする
「今日のニュースを一緒に見てみようか」「天気予報を調べてみて」と、日々のルーティンにITを組み込みます。
- 買い物に活用する
ネットスーパーやオンラインショッピングの利用を一緒に試してみましょう。重い荷物を運ぶ負担が減り、生活の質が向上します。
エンターテイメントに活用する:YouTubeで昔の歌手のライブ映像を見たり、好きな映画を一緒に探したりしてみましょう。共通の話題が生まれ、会話が弾みます。
ステップ5:介護で役立つ3つのメリット(応用)

ITは、親の好奇心を刺激するだけでなく、将来、介護が必要になった時にも大きな力を発揮します。親がITをある程度使えるようになれば、離れて暮らす家族も安心できる、安全な介護環境の構築につながります。
- メリット1:安全な見守りと緊急時の連絡
スマート家電とITを連携させることで、安全な見守り環境を整えることができます。例えば、室内の温度や湿度を遠隔で確認したり、センサーで親の活動状況を把握したりすることで、離れて暮らしていても安否確認がしやすくなります。また、スマートフォンがあれば、緊急時にビデオ通話で親の顔色や状況を直接確認でき、迅速な対応が可能になります。
- メリット2:家族や専門家とのスムーズな情報共有
親がITを使いこなせるようになれば、離れて暮らす家族との連携が格段にスムーズになります。例えば、家族や親戚とオンラインで日々の状況を共有するグループチャットを作れば、親の状況を全員がリアルタイムで把握でき、スムーズな連携につながります。また、親自身がオンラインで介護サービスについて調べたり、専門家と相談したりできるため、あなたの負担も軽減できます。
- メリット3:将来の介護サービスの選択肢が広がる
ITに慣れておくことは、将来的に利用できる介護サービスの選択肢が広がります。オンラインでの介護相談サービスや、ITを活用した見守りサービス、遠隔でのオンライン診療など、今後ますます普及するであろう新しいサービスを、親自身が抵抗なく利用できるようになります。これにより、家族のニーズに合わせた、より柔軟で質の高い介護プランを立てることが可能になります。
最後に:ITは親子の絆を深めるツール
「年だから無理」と決めつけるのは、親の可能性を狭めてしまうことになります。ITは、親の生活を豊かにし、社会とのつながりを保つだけでなく、親子間の新しいコミュニケーションのきっかけにもなります。
そして、ITを使いこなせることは、将来の介護に対する備えにもなります。親とあなたの両方にとって、安心できる未来をつくるための投資だと思ってください。
焦らず、イライラせず、「一緒に楽しむ」という気持ちで、親とITの距離を縮めてみてください。その小さな一歩が、親子の絆をより深くし、お互いの人生を豊かにする第一歩となるでしょう。

