認知症ケア

認知症の暴言・暴力・暴れる理由とは?周辺症状「葛藤型」の原因と介護を楽にする対応策

2024年9月14日

認知症の方が突然怒鳴ったり、手が出てしまったり……。介護する家族にとって、暴言や暴力、徘徊といった症状は、最も精神を消耗させる悩みの一つです。

「なぜ、あんなに優しかった親が?」と悲しくなることもあるでしょう。しかし、こうした言動は性格が変わったわけではありません。周囲からの抑制的な関わりや、脱水・便秘といった身体的な不快感が引き金となって現れる「周辺症状(BPSD)」です。

なかでも、このように周囲に対して強い反応が出てしまう状態を、「葛藤型(かっとうがた)」と呼びます。

今回は、元ケアマネジャーの視点から、葛藤型を悪化させないための「言葉がけ」や、見落としがちな「ケアのポイント」について具体的にお伝えします。

「徘徊」という表現について

最近では「徘徊」という言葉に否定的なニュアンスが含まれることから、「ひとり歩き」と言い換える動きが広がっています。
しかし本記事では、切実な悩みを抱え、解決策を探しているご家族が「徘徊」という言葉で検索される現状を鑑み、必要な情報を確実にお届けするために、あえてこの表現を使用しています。当事者の方への敬意を欠く意図ではないことを、あらかじめご理解いただければ幸いです。

認知症の周辺症状「葛藤型」とは

認知症の症状は、現れ方によって大きく3つのタイプに分類されます。

  • 葛藤型: 興奮、暴言、暴力、徘徊など、周囲に対して強く反応する状態。
  • 遊離型: 無気力、無関心、ぼーっとしている状態。
  • 回帰型: 過去の「自分が最も輝いていた時代」や「安心できる場所」に意識が戻る状態。

なかでも今回解説する「葛藤型」は、状況に対して非常に強い拒否や抵抗を示します。症状が外へ向かって現れるため、片時も目が離せない状況になることも少なくありません。介護者にとっては、最も対応が難しく、精神的にも肉体的にも追い詰められやすい症状といえます。

葛藤型の主な症状

  • 激しい拒否・攻撃: 大声を出す、暴言、暴力、介護への強い抵抗
  • 落ち着きのない行動: 興奮を伴う歩き回り、徘徊
  • こだわりや異常行動: 特定の物を集める(収集癖)、食べられない物を口にする(異食)

一見バラバラに見えるこれらの言動も、実は本人を取り巻く環境や心理的な要因が複雑に絡み合って現れています。

Memo

【周辺症状(BPSD)とは】
物忘れなどの「中核症状」とは別に、本人の性格、不安、体調、周囲との関係などが重なって現れる「行動や心理面での症状」のことです。環境や関わり方、身体的なケアによって改善できる可能性があるのが特徴です。

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葛藤型の症状を引き起こす「原因」と対処法

葛藤型の行動は、主に「抑制」「孤独」「不安」の3つの状況下で現れます。それぞれの具体的な原因と、対処法を見ていきましょう。

1. 興奮や暴力:原因は「抑制」

介護に対して大声を出す、手を上げるといった行動は、本人が「無理やり何かをさせられている」と感じる「抑制」がきっかけであることが多いです。

よくある例(抑制を生む声掛け

  • 時間ないから早く食べて!
  • お風呂だから服脱いでよ
  • 夜だから外に出ないでってば
  • お迎え来ちゃうから、早く準備して!

これらの声掛けは、すべて介護者側の都合による指示と受け取れます。本人の目線では、自分の意思とは関係なく「受動的に動かされている」と感じてしまい、この思い通りにならない不快感が、強い拒否や怒りといった症状に繋がるのです。

対処法:選択をゆだねる

相手に主導権があると思えるような、選択肢のある声掛けが効果的です。

  • 時間がないから早く食べて
  • お風呂だから服を脱いで
  • 夜だから外に出ないで
  • (デイサービスの)迎えが来るから早く支度して

このように、次にどう行動するかを本人に委ねる(選択してもらう)形にすることで、「自分で決めた」という納得感が生まれ、抵抗としての症状が落ち着いていきます。

2. 収集癖や異食:原因は「孤独」

ゴミを拾い集めたり、特定の物を溜め込んだりする「収集癖」、さらには食べられない物を口にしてしまう「異食」は、介護者にとって非常に不安で、目が離せない行為です。

これらの行為は、「孤独感」に対する反応であることが少なくありません。ここでいう孤独とは、単に一人でいることではなく、社会や周囲とのつながりを感じられず、意識が自分の内側の不安ばかりに向いてしまっている状態を指します。

対処法:意識を「外の世界」へ向ける環境づくり

「ダメ!」と禁止するのではなく、孤独感を感じない環境づくりが重要です。

  • スローショッピングの活用

スーパーや商店街に出かけ、商品を眺めながらゆっくりと歩きます。デイサービスによっては、定期的にスローショッピングをプログラムに取り入れているところもあります。認知症の方が興味深そうに商品やお店の人を見ている様子があれば、それは意識がしっかりと「外」に向いている証拠です。

  • 社会との接点を持つ

デイサービスなどの通所サービスを利用し、家庭以外のコミュニティに身を置くことも有効です。ただし、無理に馴染ませようとすると逆に孤独感を強める場合があるため、本人が「周囲を眺めていられる」ような、心理的に安全な環境設定が重要です。

週に1~2回程度、公園の花を眺めたり、街の様子を感じたりするだけで、収集癖や異食といった症状が嘘のように落ち着くケースがあります。意識が「外」へ向かうことで、内面的な不快感や不安が緩和されるためです。

用もないのに呼び出したり、介護者から離れたがらなかったりするのも、孤独が原因で「人を集めてしまう」ケースと言えます。この場合も同様に、孤独感を感じない環境や生活に変えていくことで、少しずつ落ち着きを取り戻していきます。

3. 落ち着きがなくウロウロする・徘徊する:原因は「混乱と不安」

徘徊には、興奮を伴って歩き回る、自分の居場所がわからずオロオロする、「家に帰る」と言って外に出ようとするケースなどがあります。

これらは、認知機能の低下からくる「混乱と不安」が引き金となって現れる症状です。よくある対応として、徘徊する理由を聞き出したり説得したりすることが挙げられますが、これらは混乱を深めるだけで逆効果といえます。

このような場合は、言葉での説得よりも、まずは認知力が向上するケアが重要となります。次項で解説する「身体的なケア」を通じて体の不調や不快感を改善することが、結果として徘徊症状の緩和に繋がります。

「葛藤型」を鎮めるカギは身体ケアにあり|4つの基本ケア

心のケアと同時に、極めて重要なのが身体的なアプローチです。葛藤型の方は、脱水による認知力の低下や、便秘が交感神経を刺激することによる不快感から、強い混乱やパニックを起こし、攻撃性が増大しやすくなります。

以下の「4つの基本ケア」を習慣化することで、脳と体のコンディションを整えましょう。

  • 水分摂取(1日1,500ml目安):脳の血流を維持し、意識をハッキリさせます。
  • 食事(1日1,500kcal目安): 低栄養による意識の混濁や体力の低下を防ぎます。また、十分な食事量は便の材料となり、スムーズな排便を促します。
  • 排便管理:便秘による不快感は、交感神経を刺激し、粗暴な言動を悪化させます。
  • 適度な運動:特に2km程度のウォーキングがおすすめです。週3~4日ほど続けると全身状態に良い影響をもたらします。

特に「水分不足と便秘」を解消するだけで、暴言や徘徊が嘘のように落ち着く事例を私は何度も見てきました。

認知症と便秘の関係がわかります

最後に:葛藤型は本人もつらい

葛藤型の症状は、介護者にとって最も精神を消耗する場面です。しかし、実は誰よりもつらいのは、自分の意志を伝えられず、不快感や孤独に苦しんでいる本人かもしれません

力で押さえ込んだり、言葉で説得したりするのではなく、まずは以下の3点を「本人のつらさを取り除く鍵」として意識してみてください。

  • 本人に選択をゆだねる言葉がけ: 「受動的に動かされている」という不快感を解く(抑制の解除)
  • 外の刺激に触れる機会をつくる: 内面に向いた不安を外へ向ける(孤独の解消)
  • 水分と排便を整える: パニックや攻撃性の引き金となる身体的な不快感を取り除く(生理的要因の除去)

これらを一つずつ丁寧に整えていくことで、ご本人の混乱が鎮まり、介護の負担も必ず軽減していきます。

一人で抱え込む必要はありません。デイサービスやケアマネジャーなど、私たち専門職の力を借りながら、無理のない範囲でこれらのケアを組み合わせていきましょう。

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