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認知症の人はなぜ便秘になる?高齢者の便秘の原因とイライラの関係

2024年8月17日

怒りっぽさの原因は便秘かも?|怒っている高齢者のイラストと「認知症の人が便秘になりやすい理由とケア」の文字

「最近、親が急に怒りっぽくなった」「認知症が進んだのかもしれない」――そう感じて、どう接したらいいのかわからなくなっていませんか。

その変化は、認知症の進行ではなく、便秘が引き金になっていることがあります。お腹の苦しさをうまく言葉にできない分、イライラや落ち着かなさとして表に出てくるのです。反対に、便秘が解消されると、穏やかな表情に戻ることも少なくありません。

では、なぜ認知症になると便秘になりやすいのか。そして、家族は何から始めればいいのか。この記事では、その理由と、今日からできるスッキリ便のためのケアを、デイサービスでの実際の事例とあわせてお伝えします。

tefutefu

元ケアマネジャー歴14年(支援300件以上、相談1000件以上)。急に怒りっぽくなった方の排便の記録をさかのぼると、便秘が続いていたことがありました。この記事では、認知症の人が便秘になりやすい理由と、家でできるケアをまとめています。

この記事でわかること

  • 認知症の人や高齢者が便秘になりやすい理由
  • 便秘でイライラ・怒りっぽくなる仕組み
  • 便秘で落ち着かなくなった実際の事例
  • スッキリ便を目指すための毎日のケア

認知症の人が便秘になりやすい理由

便秘は高齢者に多い悩みですが、認知症があると、さらに便秘になりやすくなります。その理由の多くは、これまで本人が自然にできていた「体の自己管理」が、少しずつ難しくなることにあります。

自分で水分や食事の管理ができなくなる

年を重ねると、のどの渇きを感じにくくなります。認知症があると、さらに「飲んだかどうか」を覚えていられなかったり、飲み物を用意すること自体を忘れたりします。体の水分が足りなくなると、便も水分を失って硬くなり、出にくくなります。

食事も同じです。献立を考えてバランスよく食べることが難しくなり、食べる量が減ったり、やわらかいものや同じものばかりになったりします。すると、便のもとになる量や食物繊維が足りなくなります。

体を動かす機会が減る

認知力の低下に加えて、水分や食事の量が減ると、意欲や注意力も落ちていきます。そのため、外出や家事をする機会が減り、日中も座ったまま、うとうとして過ごす時間が長くなります。

体を動かさない時間が増えると、腸の動きも鈍くなります。歩くことは、腸を動かすための大切な刺激です。動かない、便が出ない、さらに元気が出ない、という悪循環に陥りやすいのも、認知症の人の便秘の特徴です。

便意を伝えられず、がまんしてしまう

便意を感じても、うまく言葉で伝えられなかったり、トイレの場所がわからなかったりして、トイレに行けないまま時間が過ぎてしまうことがあります。周りがトイレに誘うタイミングを逃して、結果的にがまんさせてしまうこともあります。

こうしたことが続くと、直腸に便がたまった状態に体が慣れて、だんだん便意そのものを感じにくくなっていきます。

このほか、飲んでいる薬の中には、便秘を起こしやすいものもあります。

✓ 薬が便秘の原因かもしれないと思っても、自己判断でやめずに、医師や薬剤師に相談してください。

このように、認知症の人の便秘は、本人の努力だけではどうにもならない理由が重なって起きています。だからこそ、周りの家族やサービスが、水分・食事・運動・トイレの環境を整えることが大切になります。

便秘で怒りっぽくなるのはなぜ?

デイサービスで「家に帰る」と怒っていたAさんが、スタッフのすすめで水分を摂り、排便後にすっきりした表情になるまでの流れを描いたイラスト

便秘が続くと、認知症の人は急に怒りっぽくなったり、落ち着かなくなったりすることがあります。まずは、デイサービスであった実際の例を紹介します。

ケース1

デイサービスに通っていた認知症のAさんは、ある朝、とてもイライラしていました。座ってもすぐに立ち上がり、「家に帰りたい」と出口へ向かいます。スタッフが引き止めると、大きな声を出して拳を振り上げます。

しばらくしてトイレに入ったAさんは、なかなか出てきません。便が出ずに力んでいる様子だったため、スタッフは冷たい水や経口補水ゼリー、麦茶などで水分を摂ってもらうようにしました。

昼食後に大量の排便があると、Aさんは笑顔になり、すっかり落ち着きを取り戻しました。家族に確認すると、その日は便秘5日目でした。

便秘がイライラにつながる仕組み

便は大腸を通る間に水分が吸収され、少しずつ固まっていきます。体の水分が足りないと、便に含まれる水分も少なくなり、硬い便になって直腸にとどまりやすくなります。

便が直腸の壁を刺激し、その信号が脳に伝わって便意が起こる仕組みを示した図

本来は、便が直腸に届くと、その刺激が脳に伝わって便意が起こり、トイレに行きたくなります。ところが、硬い便がうまく出せずに直腸にとどまると、「出そうで出ない」不快感が続きます。この状態が自律神経を乱し、体が興奮した状態になります。

認知症の人は、この不快感を言葉で伝えることが難しいため、イライラや怒りっぽさ、落ち着きなく歩き回るといった行動として表れやすくなります。

「怒りっぽい日」と「便秘の日」を見比べる

怒りっぽさと便秘の関係を確かめるには、排便の記録をつけてみるのがいちばんです。排便があった日と、落ち着かなかった日をカレンダーに書き込むだけでも十分です。Aさんのように2つが重なっているようなら、便秘のケアを優先してみましょう。

スッキリ便を目指す毎日のケア

認知症の人の便秘は、本人の努力だけでは防げません。前の章で紹介した理由に合わせて、周りができるケアをまとめました。

水分は周りが管理する

自分で水分を管理できなくなった人には、周りが「いつ、どのくらい飲んだか」を管理することが大切です。水分は食事以外で1日1,500mlを目安に、時間を決めて少しずつすすめましょう。

特におすすめなのが、朝起きたときの冷たい水や牛乳です。空っぽの胃に飲み物が入ると、その刺激で大腸が動き出す「胃・結腸反射」が起こり、朝食後の排便につながりやすくなります。

高齢者の脱水は認知症症状を悪化させることがあります。ゼリータイプで飲み込みやすく、日々の水分補給を無理なく続けられます。

食事は食物繊維と、噛める状態を整える

食物繊維には、便をやわらかくする「水溶性」と、便のかさを増やして腸の動きを促す「不溶性」があり、水溶性1:不溶性2くらいの割合で摂るのが理想とされています。ヨーグルトや納豆などの発酵食品も、腸の環境を整える助けになります。

ただ、歯の具合が悪いと、食物繊維の多い野菜や海藻は食べにくくなり、やわらかいものばかりの食事になりがちです。噛みにくそうにしているときは、歯科を受診して、しっかり噛める状態を整えておきましょう。

食物繊維を多く含む食べ物のイラスト。海藻類、大麦・ライ麦、豆腐、きのこ類、豆類、野菜全般、干し柿・柿など

日中に体を動かす

立ったり歩いたりすると、その刺激で大腸の動きが活発になります。激しい運動は必要なく、散歩や家の周囲を歩くだけでも十分です。日中に体を動かす時間をつくることは、昼夜のリズムを整え、夜にぐっすり眠ることにもつながります。

決まった時間にトイレに誘う

便意を伝えられない人には、便意を待つのではなく、周りからトイレに誘うことが大切です。特に朝食後は便意が起こりやすい時間なので、毎日同じ時間にトイレに座る習慣をつくりましょう。座るときは、足の裏が床につき、少し前かがみになる姿勢が、便を出しやすくします。

下剤に頼りすぎない

下剤を使うと、かえって排便のリズムが乱れることがあります。

  • 夜中に排便があるなど、リズムが不安定になる
  • 毎日飲んでも、排便は数日に1回で、すっきり出ない
  • 急に強い腹痛が起こり、思わぬタイミングで大量の排便がある

認知症の人は、下剤で急にお腹が痛くなり、強い便意に襲われることで落ち着かなくなったり、便失禁につながったりすることもあります。下剤は医師と相談しながら必要なときに使い、水分・食事・運動・トイレの習慣を整えて、自然な排便を目指していきましょう。

よくある質問

まとめ

認知症の人が便秘になりやすいのは、水分や食事を自分で管理できなくなり、体を動かす機会が減り、便意を伝えにくくなるためです。そして、便秘のお腹の苦しさは、イライラや怒りっぽさとして表れることがあります。

急に怒りっぽくなったと感じたら、次の3つを確かめてみてください。

  • 排便の記録をつけて、怒りっぽい日と便秘の日が重なっていないか
  • 1日の水分が足りているか
  • 日中に体を動かし、決まった時間にトイレに座れているか

便秘のケアは、本人のお腹の苦しさを和らげるだけでなく、家族が振り回される毎日を変えることにもつながります。できるところから始めてみてください。

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この記事を書いた人

tefutefu

元ケアマネジャー(支援300件以上、相談1000件以上)。企業向け「仕事と介護の両立」セミナー、一般の介護者向けセミナーの講師としても活動。これまでの経験をもとに、在宅介護者向けの認知症ケア情報や、介護をひとりで抱え込まないための情報を発信中。

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