
「休んでいるはずなのに、疲れが取れない」——親の介護をしていて、そう感じることはありませんか。
その背景には、更年期の不調が重なっていることがあります。40〜50代は、親の介護が始まる時期と、更年期が重なりやすい年代です。
私自身、更年期に入ってから体の変化に戸惑うことが増えました。これまで大きな病気をしたことがなかったのに、急に腰痛が出たり、動悸や過呼吸のような症状に悩まされたり。この時期に自分の不調と介護が重なったら、想像以上にしんどいはずだと、身をもって感じています。
この記事では、更年期と介護が重なるとなぜつらいのか、そして体と心の不安それぞれへの対処法を、事例とともに解説します。
元ケアマネジャー歴14年(支援300件以上、相談1000件以上)。体調を崩しながら介護を続けるご家族を、現場でも見てきました。自分の体を後回しにしないための方法をまとめました。
この記事でわかること
- 更年期と親の介護が重なると、疲れが取れなくなる理由
- 受診の目安と相談先
- 腰痛など、体の不安への対処法
- 気持ちの不安・遠距離介護の不安への対処法
更年期と親の介護が重なると、なぜつらいのか

更年期の不調と親の介護は、どちらも40〜50代に始まりやすいものです。ここでは、更年期とは何か、介護と重なると何が起こるのか、そして受診の目安を整理します。
更年期とは
更年期とは、閉経をはさんだ前後5年ずつ、合わせて10年間のことです。日本では、おおむね45〜55歳ごろにあたります。
この時期は女性ホルモンが大きく減るため、ほてりや発汗、動悸、肩こり、腰痛、不眠、気分の落ち込みなど、さまざまな不調が出やすくなります。こうした症状が重く、日常生活に支障が出る状態を「更年期障害」といいます。
なお、男性にも、ホルモンの低下による更年期の不調があります。
出典:厚生労働科学研究「更年期障害における治療と仕事の両立を啓発するための研究」(令和6年度)
介護の負担と重なると起こること
更年期は体力が落ちやすい時期ですが、親の介護では、体を支えたり持ち上げたりする場面が増えていきます。疲れが抜けないまま介護を続けるうちに、腰や肩を痛めることもあります。
また、親の通院や介護サービスの手続きが優先になり、自分の不調は「年のせい」「そのうち治る」と後回しにしがちです。
私自身も、急な腰痛や動悸に悩まされましたが、受診して治療を受けたことで落ち着きました。つらさを我慢し続けるより、早めに相談したほうが、介護も続けやすくなります。
受診の目安と相談先
疲れが取れない、眠れない、気分が落ち込むといった不調で、家事や仕事、介護に支障が出ているときは、受診を考える目安です。
女性は婦人科(女性外来)で、更年期の症状について相談できます。男性は泌尿器科などが相談先になります。どこに行けばよいか迷うときは、かかりつけ医に相談しても大丈夫です。ほかの病気が隠れていないかを確かめるためにも、自己判断で我慢しないことが大切です。
更年期の不調には治療法があり、症状に合わせて選べます。「このくらいで受診していいのかな」と迷う段階で、相談してかまいません。
ケアマネ目線メモ
介護する人の体調も、ケアマネジャーに遠慮なく伝えてください。「最近、腰が痛くて入浴の介助がつらい」と伝えてもらえれば、デイサービスでの入浴を増やすなど、サービスの量や内容を見直せます。介護する人の体調は、ケアプランを考えるうえで大切な情報です。
体の不安への対処法|腰痛などを防ぐ3つの方法

介護は着替えや入浴、排せつなど、日常生活で必要な介助のほか、通院や外出の付き添いなど、体力を要する場面が意外と多くあります。
加えて、家族の多くは介護の初心者です。介護のプロ(介護職)であれば、ボディメカニクスという介護技術を学びますが、家族介護者にはそのような機会がなかなかありません。
MEMO
ボディメカニクスとは
最小限の力で、安全に体を動かすための技術です。骨や筋肉に負担をかけず、力を効率よく使う動作や姿勢のことで、「重い物を持ち上げるときは、腰ではなく膝を曲げて持ち上げる」といった方法が含まれます。
介護を要する人の状態が悪くなればなるほど身体的な介護が増え、介護者の足腰に負担がかかってきます。腰痛を悪化させたり、手首や背中に痛みが生じることもあり、場合によっては介護を続けられなくなることもあります。
体の不安に対しては、以下の解決方法を参考にしてみてください。
体の不安・解決法①:介護保険サービスを利用する
介護サービスを利用して身体的な負担そのものを、可能な限り解決していきましょう。
日帰りのデイサービスでは入浴や昼食も含めた日常的な世話や、適度な運動、専門職による機能訓練などを提供しているのでおすすめです。特に同居の場合は、定期的に介護から離れる時間を確保する意味でも利用するとよいでしょう。
介護保険施設などに泊まりで利用できるショートステイも、一定期間介護から離れることができます。定期的に利用すると「介護からの一休み」が確保できるので、おすすめです。
ケース1
右大腿骨を骨折したAさんは、退院後は妻と娘さんが体を支えないと歩けない状態でした。週4日のデイサービスで機能訓練と入浴を任せたことで、再び歩行器で歩けるまでに回復。今はデイサービスを週2日に減らし、散歩で歩く力を維持しています。身体介護の負担が減り、家族の腰痛も改善しました。

体の不安・解決法②:介護事業所から介護技術を学ぶ
介護の方法を教わりたいときは、利用中の介護サービス事業所に相談してみましょう。家族向けに、体に負担の少ない介助の方法を教えてくれることがあります。ケアマネジャーを通じて頼むとスムーズです。
ケース2
ベッドから車いすへの移乗を力任せに行っていた息子さんは、腰を痛めたことをきっかけに訪問介護を導入。ヘルパーが手すりと声かけ、軽い介助だけで移乗させる様子を見て、技術を教えてもらいました。それ以来、腰を痛めることなく介護を続けられています。
体の不安・解決法③:ストレッチやトレーニングを生活に取り入れる
日頃からストレッチを習慣にしたり、スポーツジムに通うなど、気分転換も兼ねて体を動かす機会を作っておくと良いでしょう。介護が大変になってくると、気持ちが内向きになり、体も強張ってしまいます。血流が悪くなることで肩こりや腰痛など、体の弱い部分に痛みが生じることもあります。
何をするかは、自分の興味があることや楽しいと思えることがいいでしょう。気持ちや体をリセットするつもりで、時間や曜日を決めて体を動かす習慣を身につけましょう。
ケース3
認知症の夫を介護する妻は、デイサービス利用中に週1回、地域の体操教室へ。教わったストレッチを自宅でも続けるうちに肩こりや腰痛が軽減し、同じ立場の友人もでき、気持ちのリフレッシュにもつながっています。
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介護の合間に、自分の体をいたわる時間を少しだけ。忙しい日でも取り入れやすいセルフケアの道具を紹介します。痛みや不調が続くときは、自己判断せず受診してください。
気持ちの不安への対処法|心のゆとりを取り戻す3つの方法

同居していると、ほぼ毎日介護に関わることになり、自分の時間や外出の予定も介護次第になります。介護サービスを使っても、ヘルパーやケアマネジャーとの関係に気を遣い、疲れてしまうこともあるでしょう。
離れて暮らしていれば、「倒れていないか」「食事はとれているか」「火の不始末はないか」と、見えない不安が続きます。
そこに更年期の不調や、ほかに頼れる人がいない、子育てや仕事と重なるといった事情が加わると、心の負担はさらに大きくなります。
気持ちの不安・解決法①:介護保険サービスで「心のゆとり」を
肉体的な不安と同様に、精神的な不安にも介護保険サービスの利用が効果的です。デイサービスやショートステイの利用で介護から離れる時間を持つのも良いですが、訪問介護の利用も心の大きな支えになります。
家に他人が出入りするようになりますが、介護関係者はより良い理解者となります。最初は少し気を遣うかもしれませんが、介護のプロからのアドバイスや支援は、精神的な不安や負担を和らげ、介護者の心のゆとりを生み出してくれます。
ケース4
認知症の父の朝の身支度に手こずり、仕事に遅刻しがちだった娘さんは、訪問介護を利用して起床からデイサービス送り出しまでを任せることに。ヘルパーとの相性も良く身支度がスムーズになり、遅刻がなくなったことで気持ちにも余裕が生まれました。
気持ちの不安・解決法②:毎日誰かが安否確認できる体制にしていく
遠距離介護になると、親の状況が見えないことで不安が高まります。特に認知症介護になると、電話で話が噛み合わなかったり興奮状態になっていたりすると、急いで帰省しなければならないかと、気持ちが焦ってきます。
そのような状況の場合は、毎日誰かが一度は様子を見てくれるような介護体制を整えておくと良いかもしれません。
ケース5
離れて暮らす軽度認知症の母を心配し、毎日電話をしていた息子さん。しかし母が電話にうまく出られず、不安は募るばかりでした。ケアマネジャーの提案でデイサービス・訪問介護・配食サービスを組み合わせ、毎日誰かが様子を確認できる体制に切り替えたことで、安心感が生まれました。

気持ちの不安・解決法③:体調を安定させるケアができるようにする
親の体調が安定すると、急な呼び出しや心配ごとが減り、介護する側の気持ちも落ち着きます。親の体調を安定させるには、次のことが大切です。
- 1日に水分を1,500ml以上飲む
- 1日の食事は最低1,500kcalを確保する
- 便秘にならない
- 1日30分程度のウォーキング、もしくは30分程度の体操を行う
- 規則正しい生活を過ごす
- 薬の飲み忘れを防ぐ
これらの管理が不十分になることで体調が不安定になり、認知症の悪化や低栄養、持病の悪化、転倒など、さまざまなリスクが生じます。
普段の生活や食事を整えることは非常に重要で、介護の基本となります。
ケース6
認知症の父のトイレ介助にストレスを感じていた息子さん。自立支援介護の「4つの基本ケア」に力を入れるデイサービスに切り替え、水分摂取を増やして下剤をやめたところ、認知力が改善しトイレの場所を間違えることも減少。排便トラブルへの対応負担も軽くなりました。
MEMO
自立支援介護の「4つの基本ケア」とは
介護業界で注目されているケア方法で、「水分・食事・排便・運動」を人間の体の仕組みを理解した上で行う理論的なケアです。
よくある質問
更年期は、ホルモンの変化で疲れやすさや不眠などが出やすい時期です。そこに体を使う介護が重なるうえ、自分の不調を後回しにしやすいため、疲れがたまりやすくなります。
女性は婦人科(女性外来)、男性は泌尿器科などが相談先です。どこに行けばよいか迷うときは、かかりつけ医に相談しても大丈夫です。
親がデイサービスやショートステイを利用している日に、受診の予定を合わせる方法があります。それでも難しいときは、ケアマネジャーに相談して、一時的にサービスを増やしてもらいましょう。
遠慮なく伝えてください。介護する人の体調は、ケアプランを考えるうえで大切な情報です。伝えることで、デイサービスでの入浴を増やすなど、サービスの見直しにつながります。
力任せに持ち上げず、膝を曲げて体の近くで支えるなど、体に負担の少ない介助の方法を身につけることが大切です。利用中の介護サービス事業所に頼むと、家族向けに教えてもらえることがあります。
最後に
更年期と親の介護が重なると、心と体の両方に負担がかかります。疲れが取れない、眠れないといった不調を、「年のせい」と我慢し続けないことが大切です。
自分の体調は早めに受診して整え、介護は介護保険サービスやケアマネジャーの力を借りて、ひとりで抱え込まないようにしていきましょう。





