
「通院の付き添いで半日だけ休みたい」「でも介護休業を申請するほどではない」——そんなとき使えるのが介護休暇です。
介護休暇は年5〜10日、時間単位でも取得できる制度ですが、「そもそも自分が対象になるのか」「介護休業とどう違うのか」を正確に理解している方は多くありません。制度を知らないまま有給休暇を消化してしまっているケースも少なくないのが実情です。
この記事では、元ケアマネジャーの視点から、介護休暇を「適切に」使うための考え方と、会社への具体的な伝え方を解説します。
元ケアマネジャー(支援300件以上、相談1000件以上)。介護休暇の存在を知らないまま、有給をって相談に来られるご家族は少なくありません。使える制度を早く知っておくことが、続けられる介護の第一歩になります。
この記事でわかること
- 介護休暇の対象者・日数・取得条件
- 介護休暇を使うのに「適切な場面」の具体例
- 介護休業との使い分け方
- 会社への申請・伝え方
- 2025年4月法改正で変わったこと
介護休暇とは?基本のルール
介護休暇は、要介護状態にある家族の世話をするために、年単位で取得できる休暇制度です。対象家族1人につき年5日、対象家族が2人以上いる場合は年10日まで取得でき、1日単位だけでなく時間単位(中抜け)での取得も可能です。
介護休業のような2週間前の事前申出ルールはなく、急な通院同行やケアマネジャーとの面談にもその場で対応しやすい制度です。
介護休暇
年5日(対象家族2人以上は年10日)。1日・時間単位で取得可、事前申出は原則不要。給付制度なし。通院付き添いなど単発の用事に使う。
介護休業
通算93日まで(3回まで分割可)。原則2週間前までに申出。雇用保険から賃金67%給付あり。「介護体制を整えるための準備期間」として使うのが本来の趣旨。
こんな場面で使うのが「適切な使い方」

介護休暇は日数が限られているからこそ、どんな場面で使うかによって「後で足りなくなった」という事態を防げるかどうかが変わってきます。
介護休暇が向いているのは、単発で終わる用事です。例えば、通院の付き添い、ケアマネジャーとの面談、要介護認定調査への立ち会い、ショートステイの送り出し、急な体調不良への対応などが挙げられます。いずれも半日〜1日で完結し、その後は普段通りの生活・仕事に戻れる性質のものです。
一方で、退院後の生活立て直しや、介護サービスの手配・調整といった、数日〜数週間にわたってまとまった対応が必要な場面には、介護休暇ではなく介護休業(またはその他の制度)を検討した方が、後々の日数不足を防げます。
実例アドバイス
こんな場面は「介護休暇」向き
・親の通院に付き添う(半日〜1日)
・ケアマネジャーとの面談、サービス担当者会議への出席
・要介護認定調査の立ち会い
・ショートステイの送迎、施設見学
・急な発熱など、体調不良時の対応
こんな場面は「介護休業」を検討
・退院直後で、在宅の生活体制をゼロから整える必要がある
・ケアマネジャーを探し、サービスの手配を一から行う
・家族間で今後の介護方針を話し合う時間が必要
介護休業との使い分け方

「休暇と休業、どちらを使うべきか迷う」というケースでは、次の2つの問いを自分に立ててみると判断しやすくなります。
1つ目は「その用事は、今日・今週だけで完結するか」という問いです。完結するなら介護休暇、完結せず数日〜数週間にわたって対応が必要なら介護休業を検討します。
2つ目は「今、体制作りの段階か、すでに体制ができている段階か」という問いです。ケアマネジャーやサービスがまだ決まっていない、いわば土台作りの段階であれば介護休業、すでにサービスが決まっていて日々のスポット対応だけが必要な段階であれば介護休暇が向いています。
なお、介護休暇と介護休業は同じ対象家族について両方取得することも可能です。「まず介護休業でサービスを整え、体制が固まった後は日々のスポット対応を介護休暇でカバーする」という組み合わせ方をする方も少なくありません。
取得の手続きと会社への伝え方

介護休暇の取得に、介護休業のような複雑な手続きは必要ありません。就業規則で定められた方法(口頭、メール、社内システムなど)で、会社に取得の意思を伝えるだけで足ります。医師の診断書や介護保険の認定資料の提出を求められることは基本的にありません。
ただし、当日の朝に連絡することになる場合も多いため、日頃から上司や周囲に「介護をしている」という事実を伝えておくと、いざというときの連絡がスムーズになります。
上司への伝え方(そのまま使えます)
"母の通院の付き添いのため、明日の午前中に介護休暇を取得させていただきたく、ご連絡しました。業務については○○さんに引き継ぎ済みです"
ケアマネ14年の経験から|介護休暇を無駄にしない実践的な工夫

介護休暇は日数が決まっているからこそ、使い方に少し工夫を加えるだけで、消費するペースが大きく変わります。ここでは、元ケアマネジャーとして家族に実際にお伝えしてきた工夫を紹介します。
1.「できる範囲」の線引きを、最初にケアマネと共有する
「平日の日中は仕事で動けない」「通院の付き添いは月1回が限界」——こうした自分の対応できる範囲を、ケアプランを組む最初の段階でケアマネジャーに伝えておくことが、実は一番効果があります。
伝えていないと、ケアマネジャーは「ご家族が対応できるだろう」という前提でサービス量を少なめに組んでしまい、結果的に急な呼び出しが増えることがあります。
2.「仕事は辞めない」という意思表示を、早い段階でしておく
面談の中で「仕事を続けながら介護をしていきたい」とはっきり伝えることも大切です。
この意思表示があると、ケアマネジャーはそれを前提にサービスを厚めに組み、休暇に頼らずに済む体制を一緒に考えやすくなります。曖昧なままだと、「必要なら休んでもらえるはず」という前提でプランが組まれがちです。
3.認定調査やケアマネ訪問は、時間帯を交渉してみる
要介護認定調査やケアマネジャーの訪問は、始業前・終業後に近い時間帯(朝イチ、夕方など)を希望すると、介護休暇を使わずに済んだり、半休ではなく1〜2時間の中抜けで済んだりすることがあります。
相手にも勤務時間があるので、あくまで常識の範囲内でのお願いにはなりますが、聞いてみる価値はあります。
4.通院は「診察の説明を聞く場面」だけ立ち会う
通院は移動・待ち時間を含めると、丸1日仕事になりがちです。
そこで、送迎と待合室での待機は介護タクシーや自費の訪問介護サービスに任せ、自分は医師からの説明を聞く診察の場面だけ駆けつける、という分担にします。こうすることで、介護休暇の消費を最小限にできます。
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通院の送迎や待ち時間の付き添いを丸ごと任せられれば、介護休暇は「診察の説明を聞く」場面だけに集中できます。イチロウのような自費の訪問介護サービスなら、介護保険の枠にとらわれず柔軟に依頼できます。
5.対象家族が同じでも、きょうだいそれぞれが休暇を使える
介護休暇は対象家族ごとではなく、労働者一人ひとりに年5日与えられる権利です。
きょうだいがいる場合、一人で抱え込まず「今週はお姉ちゃんが休暇を使って、来週は自分が」というように、休暇を使える人を増やす発想も有効です。
6.いつ・何のために使ったか、簡単に記録しておく
介護休暇を取得した日付と目的を、スマホのメモ程度でよいので残しておくと、ケアマネジャーとの面談で「これだけ対応してきました」と客観的に示す材料になり、サービスの見直しを相談する際の説得力にもなります。
7.連絡手段がデジタル化されている事業所を選ぶ
電話でのやり取りは、日中に折り返しの時間を取れないと何往復もしてしまい、それだけで介護休暇に頼りたくなる場面が増えます。LINEやメールなど、隙間時間に返信できる連絡手段に対応しているかどうかは、事業所選びの意外と大きなポイントです。
特にLINEは普段から使い慣れている方が多く、通知にもすぐ気づけるため、電話よりもやり取りがスムーズになりやすい手段です。実際、LINEでの連絡を導入するケアマネジャー・事業所も増えてきています。契約前の面談で「LINEでの連絡は可能ですか」と聞いてみることをおすすめします。
有給になる?給与への影響

介護休暇には、介護休業のような雇用保険からの給付金はありません。取得中の給与を有給とするか無給とするかは法律で定められておらず、会社の就業規則によって異なります。無給の会社の場合、その日数分は給与から控除されるのが一般的です。
「有給扱いかどうか」は、就業規則や社内規定に目を通すか、人事・総務担当者に確認するのが確実です。
有給休暇を使い切りたくない場合や、有給休暇の残日数が少ない場合には、無給であっても介護休暇を優先して使う方が、結果的に収入面での選択肢を広く保てます。
2025年4月法改正のポイント
MEMO
対象者の要件が緩和されました
以前は労使協定により「勤続6か月未満の労働者」を対象から除外できましたが、2025年4月の法改正でこの規定が撤廃され、入社直後の従業員でも介護休暇を取得できるようになりました。
MEMO
会社にも「周知する義務」があります
同じ2025年4月の改正で、介護に直面した旨を会社に申し出た労働者に対して、会社側は介護休暇・介護休業などの制度内容や申出先を個別に説明し、利用意向を確認することが義務付けられました。制度について何も案内がない場合は、こちらから確認する姿勢も大切です。
よくある質問
介護休暇は半日だけ取れますか?
はい、時間単位(中抜け)での取得が可能です。通院の付き添いなど、数時間だけ休みたい場合にも使えます。
パート・契約社員でも取得できますか?
雇用期間の定めがある方でも、要件を満たせば取得可能です。2025年4月の法改正で「勤続6か月未満」の除外規定も撤廃されました。
会社に介護休暇の取得を拒否されました。どうすればいいですか?
要件を満たしていれば会社は原則拒否できません。人事担当者に法律上の位置づけを確認し、それでも改善しない場合は労働局の窓口へ相談する方法もあります。
介護休暇と有給休暇、どちらを優先して使うべきですか?
決まりはありませんが、介護休暇は対象家族の介護目的に限定される分、使い切っても有給休暇は別に残せます。まず介護休暇を優先するのが現実的です。
介護休業と介護休暇は同時に使えますか?
同じ対象家族について両方取得できます。まとまった体制作りは介護休業、日々のスポット対応は介護休暇と使い分ける方法もあります。
まとめ
介護休暇は、日数が限られているからこそ「単発の用事」に絞って使うのが適切な使い方です。退院直後の体制作りなど、まとまった対応が必要なときは介護休業と組み合わせることで、日数を無駄にせず両立を続けられます。
制度を正しく理解し、必要なときに迷わず使えるよう、今のうちに就業規則を確認しておくことをおすすめします。



