認知症ケア

認知症で昔に戻るのはなぜ?輝いていた時代がある「回帰型」

2024年9月12日

認知症の周辺症状は3つのタイプに分けられます。

①葛藤型:状況に対して強く反応する
 興奮、暴言、暴力、徘徊、収集癖、異食

②遊離型:無反応、無関心
 無感動、無為、無動

③回帰型:過去への回帰
 昔の良かった時代へ戻る

今回は③の回帰型について、原因と対処方法についてお伝えします。

※周辺症状とは
BPSD(行動・心理症状)とも呼ばれるもので、不安、うつ、不眠、幻覚、妄想などの心理症状や、徘徊、焦燥、攻撃性、介護への抵抗や拒否、異食といった行動症状を指します。これらの症状は、認知症などの疾患に伴い現れる場合があり、本人や介護者にとって大きな負担となることがあります。

この記事でわかること

  • 「回帰型」の原因がわかる
  • 「回帰型」の対処法がわかる
  • 4つの基本ケアも同時に行うと効果的

周辺症状の「回帰型」とは

回帰型は妄想の一種で、過去の自分が最も輝いていた時代に戻るという特徴があります。この状態は、認知力の低下により現実世界に混乱や不安を覚え、何らかのきっかけで過去に意識が戻ってしまうことが原因とされています。

自分が一番輝いていた時代に回帰する

ある方は、20代の頃に短期間だけ女優として活動していた経験があります。その時代が彼女にとって非常に幸せで、一番輝いていた瞬間だったのかもしれません。その方は、電話が鳴ると『撮影の依頼が来た』と思い込み、服を選んでは着替えることを繰り返していました。

また、別の方は小学校の教師として働いていたことがあります。認知症を発症してからは、毎朝決まった時間になると手元の荷物をまとめ、「学校に行く」と言って外出しようとします。

回帰型のケアは「過去へ一緒に戻る」こと

先ほどの教師の例では、介護者が「今日は日曜日で学校はお休みですよ」と声を掛けたり、時には一緒に外出するなど、過去の行動に付き合うようにしました。
「学校が休み」と聞いて納得し、家に留まることもあれば、一緒に外へ出て家の周囲を一回りして戻ることもあります。家に戻ったあとは、落ち着いて過ごすことができていました。

このような行動に何度か寄り添った結果、過去に戻る症状は徐々に消失しました。回帰型は、誰かが過去の記憶や行動に付き合ってくれることで、混乱や不安に満ちた現実の中に安心感を見いだし、現在に意識を取り戻せるようになるとされています。

回帰型は幸せな時代がないと出現しない?

回帰型の人は、幸せだった時代に戻っているため、現実に戻すことが本当に良いのか悩んでしまうこともあります。しかし、過去は過去であり、どうしても現実との矛盾が生じてしまいます。そのため、現実の世界も悪くないと思ってもらい、症状が自然と消失していくことが望ましいでしょう。

さらに、回帰型は「幸せで自分が輝いていた時代」が存在しなければ現れない症状であると言われています。

生活歴から過去を探る

回帰型は、生活歴を調べることで、どの時期に戻っているのかを把握しやすくなります。

回帰型に限らず、認知症ケアでは生活歴を通じてその人の生い立ちや性格を理解することが重要です。過去を知ることで、他者には異常に見える行動も、「もし自分がこの人だったら、同じ行動を取るかもしれない」と共感できるようになります。

ただし、家族が介護をする場合、生活歴に家族自身も深く関わっているため、客観的な視点を持つのが難しくなることがあります。気持ちに余裕がない時は、介護保険サービスを利用して一度距離を置き、ケアを専門家に任せるのが望ましいでしょう。

4つの基本ケアも同時に行う

回帰型の方は食事や水分を問題なく摂取できることが多いため、4つの基本ケアを同時に行うとより効果的です。

  • 1日1,500ml以上の水分摂取
  • 1日1,500lcalの食事
  • 便秘であれば解消(自然排便)
  • 1日2km程度のウォーキング、あるいは30分程度の運動

水分不足や便秘を起こすと、回帰型の症状と共に葛藤型の症状が現れることがあります。そのような状況を防ぐためにも、4つの基本ケアを欠かさずに行うことが大切です。

まとめ

認知症の周辺症状3つのタイプから、回帰型の原因や対処方法をお伝えしました。

回帰型は現実世界に不安や混乱を感じ、その状況から逃れるために最も輝いていた過去へ戻っています。
その過去に一緒に寄り添いつつ、「現実もそう悪くないよ」と感じてもらえるようなケアを心がけましょう。

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