認知症ケア

耳が遠い高齢者は認知症になりやすい?リスクと対策を知る

2024年11月16日

実は、難聴を放置すると認知症のリスクが高まることが、近年の研究でわかってきています。

「テレビの音量が大きくなった」「聞き返すことが増えた」——そうした小さな変化に気づいた段階で対策を始められれば、認知症の予防にもつながります。

今回は、難聴が認知症リスクを高める理由と、今日からできる対策をご紹介します。

tefutefu

元ケアマネジャー歴14年(支援300件以上、相談1000件以上)の支援を経験。難聴をきっかけに孤立してしまう高齢者はめずらしくありません。

この記事でわかること

  1. 難聴が認知症のリスクを高める理由(孤立→認知機能低下の悪循環)
  2. 見逃しやすい難聴のサイン
  3. 難聴を引き起こす主な疾患
  4. 補聴器を含む、今日からできる対策

聴力低下は認知症のリスク要因

認知症のリスクを高める要因には、以下のようなものがあります。

  • 年齢

認知症の発症率は、年齢が上がるにつれて増加します。60代では約3%の発症率ですが、70代後半では男性12%、女性14%に増加し、80代後半では男性35%、女性44%に達します。90代後半になると、男性51%、女性84%と非常に高い割合で認知症が発症します。

  • 生活習慣

【運動不足】定期的な運動は脳への血流を増加させ、酸素と栄養素の供給を促進します。身体活動が少ないと脳が活性化せず、認知症のリスクが高まります。

【喫煙】喫煙は脳血管の健康に悪影響を与えます。たばこの煙に含まれる有害物質は血管を損傷し、脳への血流を減少させます。

【過度の飲酒】アルコールは脳細胞にダメージを与え、長期間にわたる過剰な飲酒は認知機能の低下を引き起こす可能性があります。

  • 慢性疾患

【高血圧】血圧が高い状態が長期間続くと、動脈硬化が進行します。これにより、脳への酸素供給が不十分になり、認知機能の低下を引き起こす可能性が高まります。

【糖尿病】血糖値のコントロールが不十分だと、神経損傷や血管の変化(動脈硬化など)が脳の機能に影響を与えます。

  • 難聴

聴力の低下が認知機能の低下につながることがあり、難聴が認知症のリスクを高めることがあります。

  • 精神的な問題

うつ病やストレスが認知症のリスク因子となることがあります。

  • 社会的孤立

社会的なつながりが少ないと、認知症のリスクが高まるとされています。

  • 栄養

不十分な栄養摂取や特定の栄養素の不足が関連しています。

これらの要因は、単独でもリスクを高める可能性がありますが、複数の要因が重なることでさらにリスクが増加します。特に難聴は、認知症のリスクを著しく高める要因として注目されています。

聴力の低下と認知機能の関係

音は私たちの生活の中で非常に重要な役割を果たしています。人とのコミュニケーションや感情表現に欠かせないものであり、聴覚を通じて得られる情報が脳を活性化させます。高齢者が聴力を失うと、周囲とのつながりが薄れ、孤立感を感じやすくなります。これがさらに認知症のリスクを高めていきます。

ケース1(補聴器導入前)

軽度の認知症があるAさんは、老人性難聴のためデイサービスでの会話にうまく加われず、聞こえないことを笑顔で誤魔化していました。スタッフも異変に気づけないまま、Aさんは次第に通うのを嫌がるようになり、自宅に引きこもりがちに。孤立が進み、認知症の症状も悪化していきました。

このように難聴が原因で孤立してしまい、認知症の進行を加速させる可能性があるのです。

実際、国立長寿医療研究センターによると、中年期に難聴があると、高齢期の認知症発症リスクがおよそ2倍に上昇するという海外の研究データが報告されています。

難聴を引き起こす主な疾患

難聴はさまざまな原因によって発生します。以下に代表的な疾患をいくつか紹介します。

  • 加齢性難聴(老人性難聴)

年齢を重ねることによって徐々に聴力が低下します。このタイプの難聴は通常、両耳で同時に進行し、高音域から聴き取りにくくなることが一般的です。聴力低下の原因は一つではなく、遺伝的要因や環境要因が複雑に絡み合って発症します。

  • 突発性難聴

突然片耳が聞こえなくなる疾患です。原因は不明ですが、ウイルス感染や血流障害が関与していると考えられています。

  • 滲出性中耳炎

中耳に液体がたまることによって発生する難聴です。風邪やアレルギーが原因となることが多いです。

  • 耳垢塞栓

耳垢が耳の中で固まることで聴力が低下します。耳掃除で取れることが多いですが、場合によっては医療機関での処置が必要です。

  • メニエール病

内耳の異常によってめまい、耳鳴り、難聴が発生する疾患です。ストレスや生活習慣が関与しているとされています。

  • 外リンパ瘻

内耳のリンパ液が漏れることで発生する難聴です。頭部外傷や手術が原因となることがあります。

これらの疾患は、早期発見と適切な治療が特に重要です。定期的に聴力検査を受けることで、見逃しを防ぎましょう。早めの対策によって、生活の質を維持し、認知機能の低下リスクを抑えることができます。特に高齢者は、聴力の状態に注意を払い、必要な検査を受けることが大切です。

難聴に気づいたら補聴器を検討する

こんな症状に気づいたら、耳鼻咽喉科を受診しましょう。

  • 会話の中で聞き返しや聞き間違いが多くなったと感じる
  • 人の話す声が聞き取りづらくなっているようだ
  • 周囲の雑音があると、会話が聞き取りにくそうにしている
  • テレビやラジオの音量を以前よりも大きくするようになった
  • 地声が大きくなってきた
  • 電子レンジや体温計のお知らせ音が聞こえていないようだ
  • 耳鳴りを訴えることが増えた

これらの症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診して適切な診断と治療を受けることが重要です。

補聴器で調整

補聴器は、聴力が低下した場合に非常に有効な助けとなります。近年、補聴器の技術は飛躍的に進化しており、音質や装着感が格段に向上しています。最新の補聴器は、周囲の環境音を自然に取り込むことができ、日常の会話がより明瞭に聞こえるようになります。

補聴器を活用することで、再び周囲の音や会話を楽しむことができ、社会とのつながりが深まります。これにより、意識が外に向き、積極的に外出やコミュニケーションを取ることが可能になります。

補聴器は、単に聴力を補うだけでなく、生活を豊かにし、心の健康をサポートするための重要なツールとなります。

ケース2(補聴器導入後)

家族の勧めで補聴器を使い始めると、Aさんは周囲の声がはっきり聞こえるようになり、デイサービスでも自然に会話に参加できるように。孤立感が解消され、認知症の症状にも良い変化が見られています。

補聴器の導入により、Aさんの生活は大きく改善しました。周囲の音や声がはっきりと聞こえるようになり、デイサービスに対して積極性や意欲が高まってきました。他の利用者との交流も増え、認知症の症状にも変化が見られました。

聴力を守るためにできること

聴力を守るためには、いくつかの具体的な方法があります。以下に挙げる対策を実践することで、聴力を維持し、認知機能の低下を防げる可能性が高まります。

  • 定期的な聴力チェック

聴力の低下を早期に発見するためには、定期的な聴力検査が重要です。特に50歳以上の方は、年に一度は検査を受けることをお勧めします。

  • 音環境を整える

過度な騒音は聴力に悪影響を及ぼします。仕事や生活環境で耳を酷使しないようにし、静かな環境でのリラックスを心がけましょう。

  • 健康的なライフスタイルの確立

1日に必要な水分(1,500ml)、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠は、全身の健康と同様に聴力の維持にも役立ちます。アルコールやタバコの摂取を控えることも、聴力を守るために重要です。

まとめ

高齢者の聴力と認知症の関係は密接です。聴力を守るためには、定期的な聴力チェックや音環境の整備、健康的なライフスタイルの確立が重要です。また、難聴が疑われる場合は早めに耳鼻咽喉科を受診し、適切な対策を講じることが大切です。高齢者の聴力を守ることで、認知症のリスクを低減し、より健やかな生活を送る手助けとなるでしょう。

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この記事を書いた人

tefutefu

元ケアマネジャー(支援300件以上、相談1000件以上)。企業向け「仕事と介護の両立」セミナー、一般の介護者向けセミナーの講師としても活動。これまでの経験をもとに、在宅介護者向けの認知症ケア情報や、介護をひとりで抱え込まないための情報を発信中。

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