排便のケア 認知症ケア

高齢者の下剤、このままで大丈夫?種類と効果、見直しのサイン

2024年8月5日

高齢者の下剤の種類と効果|大腸の模型をおなかに当てた人と、薬のイラスト

下剤は、高齢者のつらい便秘を助けてくれる薬である一方、使い方によっては体の負担にもなる薬です。

「便秘がつらそうだから」と始めた下剤を、何年も同じように飲み続けている。気づけば種類が増えていたり、効きが悪くなって量が増えていたりする。それでも「医師が出した薬だから」「市販薬だから大丈夫」と、見直すきっかけがないまま続いていることは少なくありません。

この記事では、高齢者によく使われる下剤の種類と効き方、使うときの注意点に加えて、家族が気づける「見直しのサイン」と、下剤を減らしたいときの相談の進め方を、実例をもとにお伝えします。

tefutefu

元ケアマネジャー歴14年(支援300件以上、相談1000件以上)。処方一覧を確認すると、下剤が何種類も重なっていたことがありました。この記事では、家族が気づける見直しのサインと、医師や施設への相談の進め方をまとめています。

この記事でわかること

  • 高齢者によく使われる下剤の種類と効き方
  • 高齢者が下剤を使うときの注意点
  • 家族が気づける「下剤が合っていない」サイン
  • 施設・デイで下剤を使っているときの確認ポイント
  • 下剤を減らしたいときの相談の進め方

下剤の種類と効き方|高齢者によく使われる3タイプ

高齢者によく使われる下剤の3タイプ。便をやわらかくするタイプ、腸を動かす刺激性下剤、新しいタイプの違いを示した図

下剤にはたくさんの種類がありますが、家族が知っておきたいのは「どのタイプの薬を、どう使っているか」です。処方一覧やお薬手帳を見るときは、次の3つのタイプに分けて考えるとわかりやすくなります。

便をやわらかくするタイプ

腸の中に水分を集めて、硬くなった便をやわらかくする薬です。効き方がおだやかで、毎日続けて飲み、便の状態を整えることが多いタイプです。

✓ 代表的な薬
酸化マグネシウム(マグミットなど)、ラクツロース、ポリエチレングリコール(モビコール)

食物繊維で便のかさを増やす薬(膨張性下剤)も、便の状態を整える目的で使われます。

腸を動かすタイプ(刺激性下剤)

腸を直接刺激して、便を押し出す動きを強める薬です。効き目が強く、早く出したいときに使われます。

✓ 代表的な薬
センノシド(プルゼニドなど)、センナ(アローゼンなど)、ピコスルファートナトリウム(ラキソベロンなど)、ビサコジル(坐薬のテレミンソフトなど)

✓ 効き方
飲み薬は、飲んでから数時間〜半日ほどで効くことが多い

市販の便秘薬にも、このタイプの成分を含むものが多くあります。

新しいタイプ

2012年以降に使われるようになった薬です。腸の中の水分を増やしたり、腸の動きを助けたりして、排便を促します。

✓ 代表的な薬
ルビプロストン(アミティーザ)、リナクロチド(リンゼス)、エロビキシバット(グーフィス)

慢性的な便秘の治療では、「便をやわらかくするタイプ」や「新しいタイプ」を中心に使い、「腸を動かすタイプ」は必要なときに使う、という考え方が基本になっています(日本消化管学会「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」)。

高齢者が下剤を使うときの注意点

薬のボトルを手に処方を確認する医師と、注意マークと錠剤のイラスト。下剤の長期使用に注意をうながすイメージ

下剤は、つらい便秘をやわらげてくれる大切な薬です。ただ、高齢者が長く使う場合には、気をつけておきたい点がいくつかあります。

酸化マグネシウムは「高マグネシウム血症」に注意

酸化マグネシウムは、高齢者によく処方される下剤です。おだやかな薬ですが、血液中のマグネシウムが増えすぎる「高マグネシウム血症」という副作用が報告されています。

PMDA(医薬品医療機器総合機構)では、長く飲んでいる人、腎臓の働きが落ちている人、高齢の人、便秘症の人は特に起こりやすいとして、注意を呼びかけています。長く飲んでいる場合は、定期的に血液検査でマグネシウムの値を確認することがすすめられています。かかりつけ医に、検査をしているか一度聞いてみましょう。

⚠ 注意

酸化マグネシウムを飲んでいる人に、吐き気や嘔吐、立ちくらみ、脈が遅い、顔が赤くなる、力が入らない、うとうとする、ひどくだるそうといった様子が見られたら、高マグネシウム血症の可能性があります。服用をやめて、すぐに医療機関を受診してください。

腸を動かすタイプは、続けるほど効きにくくなることがある

腸を動かすタイプの下剤(刺激性下剤)は、長く使い続けると腸が刺激に慣れてしまい、同じ量では効きにくくなることがあります。その結果、量や種類がだんだん増えていく、ということが起こりがちです。

また、このタイプの下剤は、腸の中の便を一度にまとめて出します。そのため、次の便がたまるまで数日出ないことがあります。この間を「また便秘だ」と思って下剤を足すと、下痢と便秘をくり返す原因になります。

自己判断でやめたり、量を変えたりしない

ここまで読んで「下剤を減らしたほうがいいのでは」と感じても、自己判断で急にやめたり、量を変えたりするのはやめましょう。 急にやめると便秘が悪化して、かえって苦しい思いをすることがあります。医師が理由があって、毎日飲むように出していることもあります。

下剤の見直しは、医師や薬剤師に相談しながら進めることが大切です。相談の進め方は、後半で紹介します。ただし、上の赤い枠のような症状があるときは、すぐに受診してください。

家族が気づける「下剤が合っていない」サイン

下剤が今の体に合っているかどうかは、毎日そばにいる家族のほうが気づきやすいものです。次のような様子があれば、下剤の見直しを考えるサインです。

  • 下痢と便秘をくり返している
  • 便がゆるすぎて、トイレが間に合わないことや失禁が増えた
  • 下剤を飲んだ日に、お腹を痛がったり苦しそうにしたりしている
  • 前より効きが悪くなり、量や回数が増えている
  • 処方一覧やお薬手帳に、下剤が何種類も出ている
  • 排便の前後に、落ち着かなくなったり怒りっぽくなったりする

ひとつでも当てはまるときは、後半で紹介する「相談の進め方」を参考に、医師や薬剤師に相談してみましょう。

認知症の人は、お腹の苦しさをうまく伝えられない

認知症があると、お腹の張りや痛みを言葉で伝えることが難しくなります。便が出そうで出ないときや、下剤で急に腸が動いてお腹が痛むときに、その苦しさが「落ち着かない」「怒りっぽい」といった行動として表れることがあります。

ケース1

デイサービスに通っていた認知症の方で、便秘になると、お腹を押さえながら何度もスタッフを呼ぶ方がいました。トイレに行きたいのだと察して付き添うと、苦しさから自分で便をかき出そうとしたり、怒鳴りながらスタッフを叩こうとするしぐさを見せたりすることもありました。

こうした様子は、認知症が進んだからではなく、お腹の苦しさから起きていることがあります。急に落ち着かなくなったときは、ここ数日の排便の様子や、下剤を飲んだタイミングも振り返ってみましょう。

施設・デイで下剤を使っているときの確認ポイント

施設やデイサービスでは、便秘を防ぐために下剤が使われることがあります。便秘のたびに下剤が足されていき、気づけば何種類も重なっていることも珍しくありません。家族が次の3つを確認しておくと、見直しのきっかけになります。

  • 処方一覧:下剤が何種類出ているか、最近増えていないか
  • 排便の記録:何日おきに出ているか、下剤をいつ使ったか
  • 水分と食事の量:1日の水分が足りているか(3日分ほどの記録を見せてもらう)

水分は、食事以外で1日1,500mlが目安です。便秘の原因が水分不足にあることは多く、水分が増えるだけで下剤を減らせることもあります。

実例アドバイス

施設のスタッフから「薬が変わりました」と連絡があり、処方一覧を確認すると、下剤が3種類も出ていました。施設に問い合わせると、食事や水分の量が減っていて、1日の水分は500ml程度しか摂れていないことがわかりました。水分を増やしてもらうようお願いしたところ、排便の状態に改善が見られました。

「薬が変わった」という連絡は、見直しのチャンスです。下剤が増えていたら、まず水分と食事の量を確認してみてください。

施設への伝え方

記録を見せてもらうときは、責めるような言い方ではなく、「一緒に確認したい」という形で伝えると、施設側も協力しやすくなります。

“

伝え方の例

「最近、下剤の種類が増えているようなのですが、どのような理由で出ているか教えていただけますか。あわせて、ここ数日の水分と食事の量、排便の記録も見せていただけると助かります。」

下剤を減らしたいときの進め方

「下剤を減らしたい」と思ったら、次の順番で進めると、本人の体に負担をかけずに見直しやすくなります。

1.2週間ほど、排便の記録をつける
排便があった日、便の硬さ、下剤を飲んだ日と量、だいたいの水分量を書き留めます。便の硬さや色の見方は、下の記事で紹介しています。

2.記録とお薬手帳を持って、医師や薬剤師に相談する
市販の便秘薬を飲んでいる場合は、それも必ず伝えましょう。市販薬はお薬手帳に載っていないことが多く、医師が把握していないことがあります。

3.生活の見直しと並行して、医師の指示で少しずつ調整する
水分や食事、体を動かす時間を見直しながら、薬の種類や量を医師と一緒に調整していきます。急にゼロにするのではなく、少しずつ減らしていくのが基本です。

介護サービスを利用している場合は、ケアマネジャーにも相談内容を伝えておきましょう。デイサービスでの水分補給や排便の記録など、サービスの中でできることを一緒に考えてもらえます。

“

伝え方の例

「便秘の薬を長く飲んでいて、最近は効きが悪くなってきました。2週間分の排便の記録を持ってきたので、薬の種類や量を見直せないか相談させてください。市販の便秘薬も飲んでいます。」

実例アドバイス

一人暮らしで、市販の下剤を長く飲み続けていた方がいました。だんだん効きが悪くなり、飲む量が増えていたため、医師に相談してもらいました。食生活を見直し、市販の食物繊維(ファイバー)を続けたところ、下剤に頼らなくても定期的に排便があるように変わっていきました。

市販薬は自分で量を増やしやすく、周りも気づきにくいものです。「効きが悪くなった」と感じたら、量を増やす前に相談するタイミングです。

下剤に頼りすぎないための基本ケア

食物繊維の多い食材、温かいお茶、目覚まし時計の写真。下剤に頼りすぎないための食事・水分・生活リズムのイメージ

下剤を減らしていくためにも、毎日の生活の見直しは欠かせません。慢性的な便秘の治療は、まず食事や生活習慣の改善から始めるのが基本とされています。

水分をしっかり摂る

必要な水分が摂れていると便がやわらかくなり、排便しやすくなります。高齢者は体の中にためておける水分が少ないため、食事以外で1日1,500mlを目安に摂りましょう。前の実例のように、水分が増えるだけで便秘が改善するケースは少なくありません。

高齢者の脱水は認知症症状を悪化させることがあります。ゼリータイプで飲み込みやすく、日々の水分補給を無理なく続けられます。

食事を見直す

食物繊維は便のかさを増やし、腸内の環境を整える助けになります。野菜や海藻、きのこ、豆類などを毎日の食事に取り入れましょう。ヨーグルトや納豆などの発酵食品もおすすめです。食事の量そのものが減っていると便も作られにくくなるので、まずは食べる量が保てているかも確認してみてください。

体を動かし、生活リズムを整える

毎日同じ時間に起きて、決まった時間に食事をとり、日中は散歩などで体を動かす。こうした生活リズムが定着すると、腸の動きも整い、同じような時間帯に排便しやすくなります。特に朝食のあとは便意が起こりやすいので、朝食後にトイレに座る時間をつくるのもおすすめです。

トイレでの姿勢を見直す

便が出にくいときは、トイレでの座り方も見直してみましょう。足が床にしっかりつき、少し前かがみになる姿勢のほうが、便を出しやすくなります。足が浮いてしまう場合は、足台を置くのも効果的です。

よくある質問

まとめ

下剤は、つらい便秘をやわらげてくれる大切な薬です。一方で、何年も同じように飲み続けていたり、種類や量が増えていたりするときは、今の体に合っているかを見直すタイミングかもしれません。

家族ができるのは、次の3つです。

  • 下痢と便秘のくり返しや、排便の前後の様子の変化など、「見直しのサイン」に気づく
  • 施設やデイでは、処方一覧・排便の記録・水分の量を一緒に確認する
  • 減らしたいときは自己判断でやめず、記録を持って医師や薬剤師、ケアマネジャーに相談する

水分や食事、体を動かす時間を整えることで、下剤を減らせたり、下剤に頼らなくても出せるようになったりすることがあります。本人にとっていちばん負担の少ない「自然排便」を目指して、できるところから見直していきましょう。

参考文献

  • 日本消化管学会 編「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」(南江堂、2023年)
  • 酸化マグネシウム製剤製造販売会社「酸化マグネシウム製剤 適正使用に関するお願い ―高マグネシウム血症―」(2020年8月)
    PMDA(医薬品医療機器総合機構)掲載資料

tefutefu

この記事を書いた人

tefutefu

元ケアマネジャー(支援300件以上、相談1000件以上)。企業向け「仕事と介護の両立」セミナー、一般の介護者向けセミナーの講師としても活動。これまでの経験をもとに、在宅介護者向けの認知症ケア情報や、介護をひとりで抱え込まないための情報を発信中。

-排便のケア, 認知症ケア
-,