
「家族だから介護するのは当然」という考え方は、今の時代には合わなくなってきています。 家族だけで介護をすることは、心身ともに大きな負担となり、誰もが疲弊してしまう可能性があります。これからは、介護を適切にプロに任せ、家族は「家族にしかできないこと」や「無理なくできる範囲」で関わっていくのが「今どきの介護」です。
この記事では、「介護をデザインする」というキーワードを軸に、仕事も介護も、そしてあなたの生活も、 欲張りに生きられるヒントをお届けします。
この記事でわかること
- 介護を家族だけでやり切ることの難しさがわかります
- 介護保険サービスを賢く利用するタイミングが理解できます
- 介護者自身が「介護をデザインする」という新しい考え方を持てるようになります
「介護をデザイン」するとは?
「人生設計」や「ライフプラン」という言葉があるように、介護も同じように「介護を含めたあなた自身の生活全体」を、自ら設計し、組み立て、計画する発想が大切です。
介護のある生活を自分でデザイン(計画)できるようになると、振り回されることが減り、心にゆとりが生まれます。 介護を「自分でコントロールする」という意識を持ち、無理のない介護の体制を整えていきましょう。
家族だけで介護をするのは無理な時代に

介護をデザインする前に、大切な前提があります。それは、約50年前と現代とでは、家族の背景や社会状況が全く違うということです。
1970年頃は、約10人の現役世代が1人の高齢者を支えていました。しかし、2020年には約2人で1人の高齢者を支えるという人口構造に変化しています。少子高齢化が進み、核家族化も一般的になった今、「介護は家族だけでどうにかしよう」と最初から割り切ってしまうのは、現実的ではありません。
介護のある生活をデザインしていこう

仕事や子育て、趣味活動などで忙しい毎日を送る中で、介護の時間を無理に捻出すると、心身ともに疲弊してしまいます。 かといって、何かを諦めたり我慢したりするのは、大きなストレスをため込む原因となってしまいます。
介護が始まったら(あるいは介護が始まる前でも)、ご自身を主体にして「介護のある生活をどうデザインするか」を考えてみましょう。
介護をデザインするコツ1: 介護保険サービスの利用は「必須」と考えよう
2000年からスタートした介護保険は、高齢者を支える現役世代が減少していく未来を見据えて創設された、私たちにとって大切な制度です。度重なる法改正によってサービスの種類も増え、今や介護を必要とする方を支えるために欠かせない存在となっています。
介護保険サービスの利用を先延ばしにしてしまうと、その間に体力や認知機能が低下する可能性が高まります。そうなると、機能の回復に時間がかかったり、回復が難しくなったりすることも考えられます。
軽度の介護段階から介護保険サービスを積極的に利用することで、高齢者自身が元気でいられる期間が長くなると考えられます。また、介護を必要としない状態を保つための「介護予防サービス」の利用もおすすめです。

適切なタイミングで介護保険(介護予防)サービスを導入し、効果的に活用していきましょう。
介護をデザインするコツ2: 家族介護は「無理のない範囲」を目指す
介護には、どうしても家族が対応しなければならない場面があります。例えば「医師から病状を詳しく聞くこと」や「お金に関する手続き」などは、ご家族でなければできないケースが多いため、親御さんにとっても身内に行ってもらいたいと願うかもしれません。
まずは、「家族にしかできないこと」を絞り込んでみましょう。
同時に、自分自身が「できる範囲」も見極めることが重要です。介護が重度化してくると、排せつや入浴などの介助が必要となる場合もあります。「自分はどこまでの介護ならできるのか、受け入れられるのか」を、正直な気持ちで考えてみてください。
もし、介護者自身に持病がある、体力に自信がない、腰痛や膝の痛みがあるなど、健康面や体力に不安がある場合は、その旨をケアマネジャーなどの介護関係者にしっかりと伝えておくことも必要です。
介護を支援してくれるのは、介護保険サービスだけではありません。自治体独自のサービスや、民間の自費サービスもありますので、これらを上手に組み合わせて利用すると、ご家族の負担はかなり軽減されます。
介護をデザインするコツ3: 介護者が「休む時間」も大切に確保しよう
例えば、介護保険サービスは以下のような使い方も可能です。
- 土日に営業しているデイサービスがある場合、介護者自身が休むために利用する
- 月に3~5日間、宿泊型のショートステイを利用して介護者自身の自由な時間を作る
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- デイサービスとは、日帰りで施設に通う介護保険サービスです。車での送迎や機能訓練、入浴、食事、レクリエーションなどのサービスを提供しています。
- ショートステイとは、最短1日から施設に宿泊でき、日常生活に必要な介護が受けられるサービスです。
つまり、介護を「休む」ために介護保険サービスを利用するのです。これは「レスパイトケア」と言って、介護者支援の一つとして位置づけられています。
介護が必要な高齢者がショートステイを嫌がったり、不満を感じたりすると、レスパイトケアに罪悪感を感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、あなたが休息をとらなければ、心身ともに疲労し、ストレスが溜まって親御さんに強くあたってしまう可能性もあります。
定期的にリフレッシュして、ご自身が快適に介護を続けられるように自己管理することも、介護のデザインにおいて非常に重要な要素です。

介護をデザインするコツ4: 介護保険外サービスも賢く活用する
自己負担で利用できる民間のサービスも、上手に組み合わせて活用しましょう。ネット通販や日常の家事を楽にする機器、代行サービスなど、様々なものがあります。特に調理においては、冷凍食品やカット野菜など、時間短縮に役立つ商品が多く存在します。
- 週3回、夕食は冷凍弁当や配食サービスを利用する
- 自費でヘルパーを週に2回利用し、料理の作り置きを依頼する
- シーツなどの大型洗濯物は専門業者に依頼する
- 見守り機器を使用する(家族複数人が携帯やタブレットで見守れる機器もあります)
- オムツなどの大型商品はネット通販を利用する
実際の介護者は、ご自身が楽になるためのサービスを利用するという視点をあまり持っていないことがあります。少し費用はかかりますが、自分自身を優先して心の余裕を作るために、身の回りで活用できる自己負担型のサービスを積極的に利用していきましょう。
まとめ:自分で介護をデザイン(計画)する考えを持とう
働きながら介護している方や、子育てと介護が重なる「ダブルケア」の方は、気持ちや時間に余裕がなくなり、ストレスを抱えやすくなります。自分自身の生活をコントロールできなくなり、限られた時間を無理に削って介護をすると、あなた自身が心身ともに限界を迎えてしまうかもしれません。
介護は、介護が必要な高齢者を中心に物事を考えがちですが、「自分の生活は別だ」という認識を常に持つよう心がけましょう。
効率よく、無理なく、そして最小限のストレスで介護が続けられるよう、 今こそ「介護生活のデザイン力」を身につけていきましょう。