
日々の生活を支えてくれるホームヘルパーさんには感謝していても、時には「味付けの好みが違う」「掃除のやり方が気になる」といった、細かな認識のズレを感じることもあるでしょう。 このような違和感を抱えたまま我慢を続けると、利用者本人の意欲低下や介護疲れの悪化を招く恐れがあります。
この記事では、ヘルパーさんに角を立てずに要望を伝えるコツや、状況に応じた体制の見直し方(ヘルパーの交代検討など)を含め、サービスの質を向上させるための具体的で論理的な解決策を解説します。
1. 料理が「まずい」「食べられない」場合の対策

訪問介護において、利用者本人やご家族が「どう伝えたらよいか」と悩んでしまいがちなのが、料理に関する問題です。これは単なる技術不足だけでなく、「限られた時間内での調理」という制度上の制約や、利用者と作り手の「味付けの好みの違い」が根本的な原因です。
💡解決策:「個人の腕」や「時間」に左右されない仕組みを作る
「もっと美味しくしてください」という抽象的な要望は、現場のヘルパーを困惑させるだけです。訪問介護では、「限られた時間内」で「冷蔵庫などにあるもの」を使って即興で調理しなければなりません。この制約を踏まえ、以下の3つのアプローチで解決を図りましょう。
■ 味付けの「数値化」と「固定化」で好みを伝える
「薄味で」という曖昧な表現ではなく、「お味噌汁の味噌は計量スプーン1杯まで」と物理的な基準を指定します。これにより、短い調理時間の中でも、利用者の好みに確実に合わせることが可能になります。
■「合わせ調味料」で調理時間を短縮し、味を安定させる
現場で一から味を調えるのは時間がかかり、味のバラつきも生じます。「これを使えば味が決まる」という合わせ調味料(めんつゆ、白だし等)を常備し、「味付けはこれを使ってください」と伝えるだけで、誰が作っても短時間で一定の味を保てます。
■ 認知症による味覚変化への配慮
もし利用者が認知症を患っている場合、味覚の変化によって「まずい」と感じている可能性もあります。この場合、ヘルパーの技術を疑う前に、サービス提供責任者(以下、サ責)と相談し、健康状態に合わせた味付けの落とし所を検討することが重要です。
2. 掃除・洗濯の仕上がりに納得がいかない場合

家事の「きれい」の基準は人それぞれです。ここでのストレスの正体は、利用者とヘルパーの間にある「認識のズレ」にあります。
💡解決策:認識のズレを埋める「仕組み」を作る
家事の仕上がりは主観に左右されやすいため、以下のステップと具体的な工夫で調整を図りましょう。
【手順書の内容を現状に合わせて更新するステップ】
ヘルパーは、あらかじめ合意された「手順書」の内容に基づいてサービスを提供します。「もっと丁寧にしてほしい」など、現状と希望が食い違っていると感じる場合は、以下のステップで進めます。
① 現在の計画を確認する
まずは、現在の手順書に「どの場所を、どのような手順で掃除することになっているか」を改めて確認しましょう。
② サ責へ具体的な更新を依頼する
サ責に連絡し、現状の手順と照らし合わせながら、「ここを重点的に5分かけてほしい」といった具体的な要望を伝えます。
➂ 現場の認識のズレを解消する
サ責を通じて手順を書き換えてもらうことで、担当者が変わっても安定したサービスを受けられるようになります。
【仕上がりの差をなくす具体的な工夫】
■「道具」と「場所」を再定義する
「掃除機をかけた後に、このシートでここを拭いてほしい」と、道具を指定して作業を紐付けることで、ヘルパーによる仕上がりの差を埋めることができます。
■ 高価な衣類をサービスから除外する
洗濯でのトラブル(縮みや色落ち)を防ぐため、デリケートな衣類は「サービス外」と割り切り、クリーニング等を利用するルールを徹底することも、お互いのストレスを減らす賢い選択です。。
3. 買い物での思い違いとトラブル防止

買い物は、店頭の在庫状況などにより、ヘルパーのその場での判断が求められる項目です。良かれと思っての判断が利用者の希望と食い違わないよう、事前のルール作りが重要になります。
💡解決策:「買い物リスト」のブラッシュアップ
ヘルパーさんの「良かれと思って」が裏目に出ないよう、あらかじめ判断の目安を共有しておきましょう。まずは以下の2点から見直すのが効果的です。
■ サ責へ判断ルールの相談をする
希望通りにいかないことが続く場合はサ責に相談し、「欠品時は利用者にその場で確認する」「迷うようなら購入しない」など、現場での判断基準を明確に定めておきましょう。
■ 利用者本人との意思疎通を主軸にする
買い物は生活に密着した行為であり、判断の主体は利用者本人です。サ責を介して「本人にこだわりがあること」を事業所側へ改めて共有し、本人の意向が尊重されるようなコミュニケーション環境を整えてもらうことが、トラブルを防ぐ近道です。
4. 「物がなくなる」不安への対処法

家の中に他者が入る訪問介護では、物が一時的に見当たらなくなるだけで、利用者本人やご家族が大きな不安を感じてしまうことがあります。
こうした事態に直面した際は、感情的な対立を避けることが先決です。まずは「場所の移動」「記憶の不一致(認知症状)」「誤廃棄」など、何が起きているのかを客観的に切り分けることから始めましょう。
💡解決策:疑う前に「環境」を整える
トラブルを未然に防ぎ、お互いの信頼関係を守るためには、「疑わなくて済む環境」をあらかじめ作っておくことが最大の防衛策です。
【 盗難やトラブルを防ぐ「予防ルール」の徹底 】
■「片付けルール」の共有と徹底
良かれと思って場所を移動させるヘルパーさんも多いため、「物を移動させたら必ずメモを残すか、報告する」というルールを定めます。
■ 貴重品の隔離(物理的解決)
最も確実なのは、現金や通帳を鍵付きの金庫に保管することです。「最初から触れない、目に入らない環境」を作ることで、本人もヘルパーさんも余計な疑念を抱かずに済みます。
【「盗難か?」と疑わしいことが起きた時の対応 】
■ 記録と報告
万が一、紛失が続き「盗難の疑い」が極めて強い場合は、その場で相手を問い詰めず、まずは「いつ、何がなくなったか」の正確な記録を整理しましょう。その上で、事業所と事実確認の協議を行い、必要に応じて警察への相談を検討します。
5. 誰に・どう伝えるのが正解か?

不満を伝えるルートは、内容の深刻度によって使い分けましょう。
直接ヘルパーに伝える(軽度の調整)
- メリット
即時性があり、その場で解決できる。 - 伝え方のコツ
「ダメ出し」ではなく、「アイディアの共有」として伝えます。
例:「母は最近、少し飲み込みにくそうにしているので、野菜をいつもより一回り小さく切ってもらえますか?」
サービス提供責任者(サ責)に伝える(根本的な解決)
- メリット
ヘルパーの交代検討、手順書の変更、指導の徹底が可能。 - 使うべき場面
直接言っても改善しない、衛生面の問題、金銭トラブル、相性が致命的に悪い場合。
ポイント:「ヘルパーさんが悪い」ではなく、「現在のサービス内容が、利用者の生活実態に合わなくなっている」という文脈で相談すると、サ責も動きやすくなります。
まとめ:介護サービスを「最適化」するために
訪問介護は、利用者の「自立支援」が目的です。ヘルパーさんに遠慮して不満を溜め込むことは、自立を妨げる結果につながります。
不満が生じた時は、それを「サービスのチューニング(調整)」の機会だと捉えてください。感謝の気持ちをベースにしつつ、今回紹介したような「具体的で事務的な指示」へと切り替えることで、お互いにストレスのない快適な在宅介護が実現します。


