
親の介護が始まって、「ケアマネジャーを選んでください」と言われても、正直どう選べばいいか分からない——そんな戸惑いを感じる人は多いのではないでしょうか。
ケアマネジャーは、介護サービスの窓口であり、困ったときに最初に頼る相手です。誰を選ぶかで、在宅介護のしやすさが大きく変わります。
この記事では、はじめてケアマネを選ぶときに本当に確認すべき7つのポイントを、初回面談で使える質問例とあわせてお伝えします。
元ケアマネジャー歴14年(支援300件以上、相談1000件以上)。ケアマネの側にいたからこそ分かる「頼れる担当者に共通すること」を、面談で確かめられる形にまとめました。
この記事でわかること
- ケアマネ選びで確認したい7つのポイント
- 前職の資格や「併設型・独立型」の見方
- 初回面談でそのまま使える質問例
- 担当が決まったあとの付き合い方と、合わないと感じたときの対処法
選ぶ前に知っておきたい、ケアマネジャーの基本

ケアマネジャー(正式名称:介護支援専門員)は、ケアプラン(介護サービス計画書)を作成し、介護サービス事業所との連絡・調整を行う専門職です。
また、ケアマネジャーは介護で困ったときに、最初に相談する窓口でもあります。費用は介護保険から全額支払われるため、利用者や家族の自己負担はありません。
ケアマネジャーは自分で選べる
要介護認定が出た後、担当のケアマネジャーは自分で決める必要があります。市区町村や地域包括支援センターでリストを入手することはできますが、公平性の観点から特定の事業所を紹介してもらうことはできません。
はじめての介護であれば、どの事業所を選べばいいか見当もつかない——そう感じる方がほとんどではないでしょうか。
どこに連絡すればいいか、事業所の一覧をどこでもらえるかは、次の記事で状況別にまとめています。
ケアマネを見極める7つのポイント

ケアマネジャーの良し悪しは、資格や肩書きだけでは分かりません。実際に会って話してみて初めて分かることが多いのも事実です。
ただ、事前に知っておくべき「見極めのポイント」はあります。以下の7つを参考に、面談時の確認に役立ててください。
ポイント1:前職の資格より「ケアマネジメント力」で選ぶ
ケアマネジャーは、看護師や介護福祉士、社会福祉士などとして現場経験を積んだ人がなる資格です。「看護師出身なら医療に強い」と考える方もいますが、最も大切なのはケアマネジメント力です。
✓ ケアマネジメント力とは、利用者や家族の課題を正確に把握し、必要な情報を集め、適切なサービスを組み合わせて生活を支える力のことです。
医療知識が足りなくても、医師や看護師に確認して補えるケアマネジャーは頼りになります。前職の資格は、次の傾向を参考程度に見ておきましょう。
| 前職 | 得意なケース |
|---|---|
| 元・看護師 | 医療ニーズが高い(点滴・酸素・病状不安定など) |
| 元・介護福祉士 | 現場の介助の工夫、現場スタッフとの連携 |
| 元・社会福祉士 | 制度・お金・家族間の意見調整など複雑なケース |
面談や電話口で、「実は〇〇で困っているのですが、そうした経験が豊富な方はいますか?」と率直に尋ねてみてください。
ケアマネ目線メモ
前職が介護福祉士でも看護師でも、ケアマネになってからの学び方や姿勢で、サポート力は大きく変わります。資格よりも「この人は動いてくれそうか」という印象を大切にしてみてください。
ポイント2:経験年数と「事業所の体制」を確認する
経験年数が長いほど、支援件数も多く、地域の事業所とのネットワークも広がります。制度の細かい運用や、地域ごとのサービスの特徴も熟知しています。
ただし、新人ケアマネジャーでも、事業所内にベテランがいてフォロー体制が整っていれば問題ありません。多くの事業所では、ケアマネジャー同士で情報を共有しながら支援しています。
初回の電話や面談で「事業所に何人のケアマネジャーが在籍しているか」「困ったときに相談できる体制があるか」を聞いてみると良いでしょう。
ケアマネ目線メモ
経験豊富なケアマネが必ずしも良いとは限りません。件数をこなすだけで、一人ひとりに向き合う時間が取れていないケースもあります。年数よりも「話を聞いてもらえそうか」を最初の面談で確かめてみてください。
ポイント3:「併設型」か「独立型」かを確認する
居宅介護支援事業所には、大きく分けて2つのタイプがあります。
独立型
ケアマネのみが在籍するタイプです。訪問介護やデイサービスなど他のサービスを持たないため、中立性が高いとされます。
併設型
訪問介護・デイサービスなど他の介護サービスも同じ事業所内に併設されているタイプです。
「併設型は自社サービスを優先して勧めがち」という意見もありますが、現場の実感としては、併設型の方が利点は多いと感じます。
たとえば、ケアマネジャーが同じ事業所のヘルパーやデイサービスのスタッフと日頃から顔を合わせているので、本人の小さな変化に気づきやすく、緊急時の対応も速くなります。
併設型を選ぶときは、次の2点を確認しておきましょう。
- 自社のデイサービスなどを勧める理由が、本人の性格や趣味、自立支援に合っているか
- ほかの事業所の選択肢も紹介してもらえるか(ケアマネジャーには、利用者が複数の事業所の紹介を求められることを説明する決まりがあります)
実例アドバイス
「うちのデイサービスに来てください」と最初から自社ありきで提案してくるケアマネには、「本人に合っていると思われる理由を教えてください」と聞いてみてください。きちんとした理由を説明できるかどうかが、その担当者の力量を測るバロメーターになります。
ポイント4:分かるまで説明してくれるか
介護保険制度は複雑で、「なんとなく分かったつもり」のまま話が進んでしまう家族は少なくありません。
信頼できるケアマネジャーは、専門用語を使わず、分かりやすい言葉で説明してくれます。また、その場で答えられなくても「調べてご連絡します」とフォローしてくれます。
初回面談で、あえて「ケアプランって何ですか?」と聞いてみてください。その説明の丁寧さが、そのまま付き合いやすさにつながります。
ケアマネ目線メモ
家族側も「分からないことは遠慮なく聞く」姿勢が大切です。質問しやすい雰囲気かどうかも、最初の面談で確かめてみてください。
ポイント5:話をちゃんと聞いてくれるか
「話を聞いてくれない」「要望がケアプランに反映されない」——こうした不満が積み重なると、良好な関係を築くことが難しくなります。
初回の面談では、ケアマネジャーの「聞き方」を見てみてください。
- こちらが話している途中で遮らないか
- ケアマネジャーが一方的に話し続けていないか
- 記録を取りながら、最後まで聞いてくれるか
小さなことですが、その姿勢が日頃の支援にそのまま表れます。
ケアマネ目線メモ
最近は、面談の内容をスマホなどで録音し、文字に起こして記録する「音声メモ」を活用するケアマネも増えてきました。手元でメモを取っていなくても、聞き流しているわけではありません。録音する前に「記録のために録音してもいいですか」と確認してくれるケアマネなら、個人情報の扱いにも気を配っているサインです。
ポイント6:すぐに動いてくれるか(フットワークの軽さ)
急な体調変化、転倒事故、サービス事業所とのトラブル——介護の現場ではいつ何が起きるか分かりません。そんなとき、すぐに折り返しの連絡をくれるか、必要なら訪問してくれるかが、頼れるケアマネジャーかどうかの目安になります。
「電話してもなかなか折り返しがない」「訪問が必要な状況でも電話だけで済まされる」というケアマネジャーは、緊急時に頼りにくい可能性があります。
ケアマネ目線メモ
ただし、ケアマネも休日があり、24時間対応しているわけではありません。連絡が取れない時間帯にどうすればいいかは、利用する介護サービスの事業所も含めて、事前に確認しておきましょう。
ポイント7:初回面談で「答え方」を確かめる
ここまでのポイントは、初回面談での質問で確かめることができます。大切なのは、答えの「正しさ」よりも、「どう答えてくれるか」です。
| 面談で聞いてみたいこと | 答え方で見るポイント |
|---|---|
| 「実は〇〇で困っているのですが、そうした経験のある方はいますか?」 | 経験の有無だけでなく、困りごとを具体的に聞き返してくれるか |
| 「事業所には何人のケアマネジャーがいますか?困ったときは誰に相談していますか?」 | 事業所の中で相談できる体制があるか |
| 「このサービスを勧める理由を教えてください。ほかの事業所も紹介してもらえますか?」 | 本人に合う理由を説明し、ほかの選択肢も示してくれるか |
| 「ケアプランって何ですか?」 | 専門用語を使わずに、分かる言葉で説明してくれるか |
| 「家族ができること・できないことも、伝えておいていいですか?」 | 家族の事情まで、遮らずに最後まで聞いてくれるか |
| 「急に具合が悪くなったときや、連絡がつかない時間帯は、どうすればいいですか?」 | 連絡方法や対応の流れを、具体的に答えてくれるか |
すべてを聞く必要はありません。気になるものを2〜3つ選んで、紙やスマホにメモしておくだけでも十分です。
ケアマネジャーと上手に付き合うコツ

良いケアマネジャーを選んだ後も、関係を育てる努力がお互いに必要です。
要望は具体的に伝える
「なんとなく分かってもらえるだろう」では、思いはなかなか伝わりません。
- 家族が対応できる介護の範囲(曜日・時間帯・身体的な限界)
- 本人が嫌がること・好きなこと
- 本人にこれからどんな生活を送ってほしいか
これらを言葉にしてはっきり伝えることで、ケアマネジャーは的確なケアプランを立てやすくなります。
日常の変化をこまめに報告する
「最近食欲が落ちた」「認知症の症状が少し悪化した気がする」「薬が変わった」——こういった日常の変化を早めに伝えることで、サービスの見直しや専門家への相談を迅速に行うことができます。食事や水分、排便の変化なども、必要に応じて医師や看護師につないでもらえます。
遠距離介護の場合は、帰省のタイミングで気づいたことをまとめてケアマネジャーに伝える習慣をつけるといいでしょう。
不満は我慢せず言葉にする
介護がうまくいかない時期は、「ケアマネジャーが何もしてくれない」と感じてしまうこともあります。そういうときほど、思っていることをそのまま伝えてください。
ケアマネジャーにとっては、「家族が困っている」という情報が課題解決のきっかけになります。黙って不満を抱えるより、率直に話す方がお互いにとってプラスになります。
合わないと感じたら、ケアマネジャーは変更できる

担当のケアマネジャーとどうしても合わないときは、我慢し続ける必要はありません。変更の方法は主に3つです。
- 担当ケアマネジャー本人、または居宅介護支援事業所の管理者に相談する
- 別の居宅介護支援事業所に変更の相談をする
- 地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談する
交代を考えるときの基準や、角を立てない伝え方は、次の記事で詳しく解説しています。
よくある質問
選べます。要介護の認定を受けたら、利用者や家族が居宅介護支援事業所を選んで契約します。市区町村や地域包括支援センターで事業所の一覧はもらえますが、特定の事業所をすすめてもらうことはできないため、この記事のポイントを参考に比べてみてください。
決めておけます。認定結果を待たずに相談し、仮のケアプランでサービスを使い始めることもできます。ただし、結果が要支援になった場合は担当が変わることがあるため、迷ったら先に地域包括支援センターへ相談しておくと安心です。
経験年数だけで判断する必要はありません。新人でも、事業所にベテランがいて相談できる体制が整っていれば、十分に頼りになります。面談で「困ったときは誰に相談していますか?」と聞いて、フォロー体制を確かめてみてください。
本人に合う理由をきちんと説明してくれるなら、心配はいりません。ケアマネジャーには、利用者が複数の事業所の紹介を求められることを説明する決まりがあります。気になるときは「ほかの事業所も紹介してもらえますか?」と遠慮なく聞いてみてください。
話を最後まで聞いてくれるかどうかです。家族の困りごとを遮らずに受け止め、分からないことは「確認してご連絡します」と動いてくれるケアマネジャーなら、長く付き合っても安心です。初回面談で、聞き方と答え方を確かめてみてください。
間違いではありません。ケアマネジャーとは長く付き合うことが多いため、「話しやすい」と感じられることは大切な判断材料です。そのうえで、説明の分かりやすさや連絡の取りやすさも確かめておくと安心です。合わないと感じたら、あとから変更することもできます。
まとめ|ケアマネ選び7つのポイント
はじめてのケアマネ選びで押さえておきたいポイントを7つにまとめました。初回の面談前に、ぜひ確認してみてください。
- 前職より「ケアマネジメント力」で選ぶ
情報を調べ、つなげる姿勢があるか - 経験年数と事業所の体制を確認する
フォロー体制が整っているか - 併設型か独立型かを確認する
勧める理由を説明し、ほかの選択肢も示してくれるか - 分かるまで説明してくれるか
専門用語を使わず丁寧に話すか - 話をちゃんと聞いてくれるか
話を遮らず、話を受け止める姿勢があるか - すぐに動いてくれるか
緊急時に迅速に連絡・訪問してくれるか - 初回面談で「答え方」を確かめる
質問への答え方で、本人に向き合う姿勢を見る
はじめての介護は、分からないことだらけです。だからこそ、最初の「ケアマネジャー選び」を大切にしてください。
「こんな些細なことを相談していいのかな」と思うことでも、ケアマネジャーに言葉にして伝えることが、良い介護への近道になります。



