
介護保険サービスを利用する際、最も身近なパートナーとなるのがケアマネージャーです。しかし、人間同士である以上、「相性が合わない」「対応に納得がいかない」という悩みが生じるのは自然なことです。
「お世話になっているのに、交代を切り出すのは申し訳ない」「変えた後に気まずくなるのでは?」と不安に思う必要はありません。実は、ケアマネージャーの交代は現場では決して珍しいことではないからです。
この記事では、元ケアマネージャーの視点から、「なぜその違和感を信じていいのか」という理由に加え、波風を立てずに担当を変更するための「具体的な言い回し」や「失敗しない次の選び方」まで詳しく解説します。読み終える頃には、現在のモヤモヤを解消し、前向きな一歩を踏み出す準備が整っているはずです。
※本記事では、検索されやすい「ケアマネージャー」という言葉を使用していますが、ここからは正式名称である「ケアマネジャー」と表記して解説を進めます。
なぜ「ケアマネジャーを変えたい」という直感は正しいのか

ケアマネジャーとの関係で感じる「なんとなく合わない」「この人で大丈夫かな?」という違和感。実は、その直感の多くは、介護現場における「必要な支援の役割がはたせていない」ことを正確に捉えているのです。
なぜ、あなたの直感を信じていいのか。その裏付けとなる3つの理由を解説します。
1.「相談のしやすさ」は、適切な支援に不可欠な要素だから
ケアマネジャーは、ご家族と情報を共有し、共に介護の方向性を考える「伴走者」のような役割を担っています。そのため、あなたが「連絡したら迷惑かな」「これを言ったらどう思われるだろう」と必要以上に気を遣ってしまっている状態は、本来の協力関係としては望ましくありません。
介護における不安を解消するには、本音で話せる環境が不可欠です。「話しにくい」と感じる直感は、相手を責める材料ではなく、「このままでは十分な連携が取れなくなるかもしれない」という、協力体制のミスマッチを知らせるサインと捉えてください。
2.「価値観のズレ」は、生活の質に影響を与えるから
ケアマネジャーとご家族の間で、介護に対する考え方(価値観)が一致していることは非常に重要です。
たとえば、「できるだけ住み慣れた自宅で過ごしてほしい」と願うご家族に対し、ケアマネジャーが「安全のために施設への入所を優先すべき」と考えている場合、提案されるプランにはどうしても違和感が生じます。また、「無理のない範囲で介護に関わりたい」という意向と、「ご家族が主体となって動くべき」というケアマネジャーの思い込みの間にズレがある場合も、知らず知らずのうちに生活に無理が生じてしまいます。
「なんとなく話が噛み合わない」という直感は、あなたとケアマネジャーの間で「介護の優先順位」が共有できていないことを示唆しています。この認識のズレを放置すると、最終的に作成されるケアプランが、あなたの意向とは異なる方向で進んでしまうリスクに繋がります。
3.「チームの連携」がスムーズに進まなくなるから
介護サービスは、ケアマネジャー一人ではなく、ヘルパーやデイサービス、訪問看護など、多くの専門職が連携して提供されるものです。その中心で連絡調整を担うケアマネジャーに対し、ご家族が「この人に伝えて大丈夫かな?」という不安を抱えていると、情報の共有がどうしても消極的になってしまいます。
大切な情報のやり取りが滞ってしまうと、結果としてご本人の状況に合わせた細かな調整が難しくなることがあります。
「安心して任せられない」と感じる直感は、単なる不満ではなく、「より円滑な介護チームの運営が必要である」という、前向きな改善のきっかけとして捉えることができます。
角を立てずに交代を伝える「そのまま使えるフレーズ集」

ケアマネジャーの交代を検討する際、一番気になるのは「相手にどう伝えるか」という点でしょう。ポイントは、相手を責めるのではなく、「これから先の介護をより良くするための相談」という形で伝えることです。
担当しているケアマネジャー本人に直接言う必要はありません。まずは事業所の責任者に相談するのが、円滑に進めるコツです。
1.「相性(性格の不一致)」を理由にしたいとき
「今の担当者が良くない」と否定するのではなく、今の本人の状態には「もっとこういう関わり方が合うのではないか」という提案の形を取ります。
2.「専門的な知識」を理由にしたいとき
ケアマネジャーは、もともと看護師だったり、介護福祉士だったりと、一人ひとりが持っている背景や得意な分野が異なります。 今の困りごとに合わせて、「より専門的な知識がある人に相談したい」という形を取る方法です。
3. やり取りに不安を感じているとき
連絡の遅さなどで信頼関係が崩れてしまい、今のままでは困るという状況のときに使います。
ケアマネジャーを変更する4ステップ

実際に担当を代えてもらう際は、以下の手順で進めるとスムーズです。
Step1:新しい依頼先を決める
まずは、現在のケアマネジャーが所属している事業所の「管理者(責任者)」に電話をしましょう。前述の「言い回し」を参考に、変更したい理由を伝えます。
交代のタイミングは、『新しい月のサービスが始まる前(中旬〜下旬頃)』に相談し始めると、事務手続きやサービスの引き継ぎが最もスムーズに進みます。
- 同じ事業所内で代える場合: 別の担当者に引き継いでもらうよう依頼します。
- 事業所ごと変える場合: 「他の事業所を探そうと考えている」と正直に伝えて問題ありません。
Step2:新しい事業所を探す(事業所を変える場合)
今の事業所以外に依頼したい場合は、新しい「居宅介護支援事業所」を見つける必要があります。
- 地域包括支援センターに相談: お住まいの地域の相談窓口に行けば、近隣の事業所リストがもらえます。
- 役所の介護保険課で確認: 自治体の窓口でも、事業所の情報を案内してくれます。
Step3:新しいケアマネジャーと会ってみる
新しい担当候補の方と実際に会って話をします(インテーク)。この際、今感じている不安や、今後の介護で重視したいことを率直に伝えましょう。この「顔合わせ」が、相性を見極める重要な機会になります。
Step4:引継ぎの手続き
新しいケアマネジャーが決まったら、あとの実務的な手続きはケアマネジャー同士で行ってくれます。あなたが自分ですべてを説明し直す必要はありませんので、安心してください。
失敗しないための「新しいケアマネジャー」の選び方

二度目のミスマッチを防ぐために、新しい担当者と会った際は以下のポイントを確認してみてください。
「こちらの要望」に対して、代替案を出してくれるか
希望するサービスが難しい場合でも、「できません」で終わらせず、「それなら、こういう方法は検討できます」と代わりの案を出してくれる人は信頼できます。
連絡の手段や頻度が自分と合うか
「電話だけでなく、メールやLINEでもやり取りが可能か」「不在の時の折り返しは当日中にくるか」など、連絡のスタイルが自分の生活に合うかを確認しましょう。
本人の目線に合わせて話をしてくれるか
家族(あなた)だけでなく、介護を受ける本人に対して、敬意を持って分かりやすく話しかけてくれるかは、良い関係を築くための大前提となります。
良好な関係を続けるために、家族側で気をつけたいこと

信頼関係は、ケアマネジャー側の努力だけでなく、お互いの配慮によって築かれるものです。新しい担当者と良い関係を長く続けるために、介護者として以下の点も意識してみましょう。
1.「時間外の連絡」は緊急時に絞る
ケアマネジャーにも勤務時間があります。夜間や休日の急ぎではない連絡が重なると、担当者が疲弊してしまい、スムーズな支援に支障が出ることもあります。 急を要さない相談は平日の日中に行う、あるいはメールや連絡帳を活用して「お手すきの時に確認してください」と一言添えるなど、お互いの生活リズムを尊重する姿勢が大切です。
2.「無理な要望」になっていないか見直す
介護保険にはルールがあり、ケアマネジャーができることには限界があります。「決まりだからできない」と言われた際は、単なる拒絶ではなく、「制度上の制限」があることを理解し、代替案を一緒に探る姿勢を持つことで、建設的な話し合いができます。
3.「小さな情報」も共有する
「最近、少し食欲が落ちている」「夜中に何度も起きるようになった」など、些細な変化を伝えてもらえると、ケアマネジャーはより精度の高いプランを作成しやすくなります。「一緒にチームを作っている」という意識で情報を共有することが、結果として手厚い支援に繋がります。
まとめ
ケアマネジャーを変更することは、決して「わがまま」ではありません。むしろ、介護という長期的な課題を乗り越えるために、「より良いチーム体制に整え直す」という前向きな決断です。
信頼できるパートナーが見つかることで、介護の負担感は大きく変わります。まずは一歩、相談することから始めてみてください。

