介護保険制度

「親の介護、いつから必要?」元ケアマネが見たサインと相談先

2024年4月13日

こんなお悩みはありませんか?

  • 介護は突然始まるって本当?
  • 介護を始めるタイミングが、いまいちよくわからない…
  • いざという時、どこに相談すればいいんだろう?

介護は突然始まるとよく聞きますが、本当にそうでしょうか。

実は介護には2通りの始まり方があります。ひとつは「突然始まる」分かりやすいタイミング。そしてもうひとつは、「じわじわ始まる」と表現されるような、変化が察知しにくいタイミングです。もしかしたら、後者の「じわじわ始まる」介護の方が多く、その兆候を見逃しやすいという特徴があります。

今回は、介護の始まりのタイミングを見分ける方法と、適切な相談窓口について解説していきます。

「介護が始まる前の方」「すでにスタートラインに立っている方」「介護への不安がある方」、どんな方でもぜひ最後までお読みください。

この記事でわかること

  • 介護の開始タイミングを見極めることの難しさがわかります
  • 介護の相談窓口について知ることができます
  • 介護の開始タイミングに早く気づくためのヒントが得られます

介護はこんなタイミングでスタートする

介護はどんなタイミングでスタートするのでしょうか?

そのタイミングは、誰にでもわかるほど明確な場合もあれば、なかなか気づきにくい場合もあります。

問題となるのは、介護のタイミングが判断しにくい場合です。気づかないうちに家族の負担が大きくなってしまうことがありますし、介護が必要な高齢者にとっても、介護保険サービスなどの利用が遅れることで、体や生活にさまざまな支障が生じ、元の状態に戻すことが難しくなる可能性もあります。

わかりやすいタイミング

  • 病気や転倒などで入院し、退院後に介護が必要になる

これは非常にわかりやすい介護のタイミングです。医療関係者から「退院後は介護が必要です」と具体的なアドバイスがあったり、リハビリの様子を見て「一人での生活は難しいかもしれない」と、自分自身で判断することもできます。

また、入院した高齢者自身の予後や回復の見通しなどについて、医師や看護師、リハビリ専門の理学療法士などに積極的に質問し、アドバイスをもらうこともできます。場合によっては、リハビリ専門の病院へ転院し、身体機能を回復させた後に自宅に戻るという選択肢もあります。

わかりにくいタイミング

困るのは「じわじわと始まる」介護で、いつからスタートしているのか分かりにくい場合です。

例えば、少しずつ高齢なの体力が衰え、同居の家族が身の回りの世話を始めていく… こうしたことが、「じわじわと始まる介護」の典型例です。

  • 認知症になり、買い物や料理のサポートをするようになった
  • お風呂の浴槽をまたぐことができなくなり、入浴を手伝うようになった
  • 通院や外出が一人でできなくなり、仕事を休んで付き添いを行っている
  • 薬の管理ができなくなったので、薬カレンダーに仕分けをしている

これらは「介護」でしょうか? それとも「身の回りの手伝い」でしょうか?

「何となくしていた手助けが、実は介護だった」ということは珍しくありません。入院のような明確な出来事がないため、介護する側もその変化を認識しにくく、気がついたときには仕事や自分自身の生活に支障をきたすほど負担が大きくなっていることもあります。

さらに、介護が必要な親と離れて暮らしている場合は、会う機会が少ないため、こうした変化に気づくことがより一層困難になっていきます。

介護のタイミングに早く気付くには

分かりにくい介護のタイミングに気づくにはどうすればいいのでしょうか。見逃さないポイントは5つあります。

Point1:親の「老い」を受け止める意識を持つ

大切なのは、親が「高齢になったこと」を、家族が意識することです。「外出しなくなった」「痩せてきた」「間違いが多くなった」「物忘れが増えた」などの変化を、年齢と結びつけて「もしかして…」と考えることができれば、次の行動につながっていきます。

自分の親が老いていく姿を受け入れるのは、時に難しいことかもしれません。特に認知症になると、「なぜできないの?」「なぜ忘れるの?」と、つい強く指摘したり、感情的に否定するような言葉が出てしまうこともあるでしょう。しかし、それは決して親を嫌いになったわけではありません。 焦りや不安、そして親を思う気持ちがあるからこそ、感情的になってしまうのです。

そんな時は、自分自身の気持ちを抱え込まず、地域包括支援センターなど、適切な相談先につなげていくことが解決への第一歩になります。

memo

  • 地域包括支援センターとは、高齢者の健康面や生活全般などの相談を受け付けている**総合相談窓口です。介護が始まる前でも、高齢者に対する不安や悩みがあれば気軽に相談できます。
  • 民生委員とは、社会福祉の増進のために、地域住民の立場から生活や福祉全般の相談や援助活動を行っています。
  • 「介護予防・日常生活支援総合事業」とは、高齢者が安心して住み続けられるように、市町村が中心となって取り組む介護予防のサービスです。
こちらの記事もチェック!

Point2:変化を客観的に観察する

例えば、「最近外出しなくなった」という変化に疑問を感じたら、しばらく注意して観察してみましょう。 「寒いから」「膝が痛いから」といった身体的な理由、あるいは「気力がない」といった精神的な理由など、外出しなくなった背景が見えてくるかもしれません。

「寒さ」が原因であれば、暖かくなれば元に戻るかもしれませんし、「膝の痛み」なら早めの受診が必要になります。「気力がない」場合や、理由がわからない状況であれば、これも地域包括支援センターなどの相談先につなげていく必要があります。

「間違い」や「物忘れ」が増えたのであれば、その頻度を観察してみましょう。 2〜3日に1度程度なのか、1日の中で何度も起こっているのかで、深刻さが変わってきます。

Point3:積極的にコミュニケーションを取る

一緒に暮らしていても、実はあまり話す機会がない家族も珍しくありません。しかし、何かしら変化を感じたときは、積極的にコミュニケーションを深めることが大切です。普段の生活でも、話してみないとわからないことは多いですよね。

「痩せてきた」のであれば、「食事が美味しく食べられているかな?」「偏りはないかな?」などと、優しく聞いてみると、状況がわかってくることがあります。歯の不具合や、朝食を抜いている、あるいは買い物に行けなくなっていたなど、理由がわかれば解決策が見えてくることも少なくありません。

Point4:離れて暮らしている場合は「見守る目」を増やす

親と離れて暮らしており、年に1回程度しか帰省しない場合、介護のタイミングを察知することは非常に難しくなります。そのような場合には、見守る目を可能な限り増やしておくことが重要です。

親の住まいにある地域包括支援センターや民生委員に「高齢の親が一人で暮らしている」ことを伝え、何か異変があれば連絡してほしいと伝えておくとよいでしょう。特に地域包括支援センターは、高齢者に関する総合的な相談窓口であるため、介護に関する不安や心配事があれば、早めに相談してみることを強くおすすめします。

可能であれば、親地域の体操教室へ参加してもらったり、「介護予防・日常生活支援総合事業」のサービスを利用したりすることで、見守る目がさらに増えていきます。

近隣の住民や親しい友人がいれば、自分の連絡先を添えて「気になることがあれば連絡してください」と伝えておくのも一つの方法です。

見守る目を増やすことで、親の変化や異常に早く気づけるようになります。特に地域で取り組む介護予防のサービスは、介護の専門家や医療関係者が関わる場合も多いため、変化があれば対応まで含めて関わってくれることも期待できます。

Point5:親の持病を把握する

親の病状や現在受けている治療状況を把握しておくことも大切です。

例えば糖尿病であれば、食事制限のみなのか、毎日服薬しているのか、インスリン注射を打っているのかで、病気の管理の程度がわかります。もっと病状を詳しく知りたければ、通院に同行して医師の話を直接聞くと良いかもしれません。

病気について尋ねても詳しく答えてくれない場合は、服用している薬をさりげなくメモして、インターネットで調べてみるという方法もあります。飲んでいる薬がわかると、おおよその病気の状況が見当つきます。親自身が病状を正確に認識していないこともありますので、処方された薬から得られる情報を知り、正しく服用できているかどうかも併せて確認してみると良いでしょう。


まとめ:介護は「早く気づく」と「早く相談する」がカギ

介護が始まったタイミングを認識できない期間が長くなると、家族への依存度が強まり、新たに介護保険サービスを利用しようとしても親自身が拒否してしまい、導入が難しくなることがあります。専門的なアプローチが遅れてしまい、結果として身体状況や生活の質が低下する可能性が高まります。

介護がスタートしたタイミングを早く見極め、必要な人や窓口に早い段階で相談することが、家族も親も安心して過ごすための大きなカギとなります。

こちらの記事も参考に!

-介護保険制度
-, , , ,