
こんなお悩みはありませんか?
- 高齢の親の便秘に、何を食べさせればいいのかわからない
- 食物繊維をとらせているのに、なかなか出ない
- 認知症の親の落ち着かなさが、便秘と関係しているのか気になる
ヨーグルトを毎朝出しているのに、親のお通じがなかなか整わない。高齢者の便秘対策というと食物繊維が思い浮かびますが、どの食材を選ぶか、水分とどう組み合わせるかで、効き方は変わってきます。
便秘は、認知症の方の落ち着きのなさや不快感を強めることもあります。食事から腸内環境を整えることは、家庭で無理なく続けやすいケアのひとつです。
この記事では、腸内環境を整える食材を「食物繊維・オリゴ糖・発酵食品」の3つに分けて、食べ方のコツとあわせて紹介します。便秘と認知症の関係(脳腸相関)についても、あわせてお伝えします。
元ケアマネジャー歴14年(支援300件以上、相談1000件以上)。便秘が続くと落ち着かなくなる認知症の方は少なくありません。食事から腸を整える方法を、食材の例とあわせてまとめました。
この記事でわかること
- 便秘と認知症の関係(脳腸相関)のしくみ
- 腸内環境を整える食材(食物繊維・オリゴ糖・発酵食品)
- 食物繊維の効果を活かす水分の合わせ方
- 便秘が続くときの受診の目安
便秘が認知症の方に影響する理由(脳腸相関)
緊張すると腹痛を感じたり、便意をもよおすことがあります。逆に便秘が続くと気持ちが落ち込んだり、やる気が起きなくなったりします。
このように考えると「脳」と「腸」はお互い影響しあっているように思えます。
脳と腸のコミュニケーション
脳と腸は、複雑な神経回路を介してコミュニケーションを取っています。
脳が不安やストレスを感じると腹痛やお腹の張りを経験したことは誰しもあるのではないでしょうか。これは脳から腸への情報伝達が影響しています。同じように腸も脳に向けて感情、ストレス、食欲、免疫応答などに影響を与えていることがわかってきました。

このように脳と腸が密接に関係し、影響しあっていることを「脳腸相関」といいます。
認知症への影響
便秘は、腸内環境が乱れた状態のひとつです。脳と腸の関係から考えると、便秘は認知症の方の不快感や意欲の低下につながることがあります。
排せつされない便は大腸で水分を吸収され続け、硬くなっていきます。腹部が張り、体が重く感じて疲れやすく、気分も落ち込むことで意欲や活動性が低下します。
認知症の方では、元気がなくなったり、物事を拒んだり、横になりたがったりすることが増える場合があります。
出そうで出ないときは興奮状態になる
直腸に便が留まると自律神経が刺激され続け、排せつがあるまで落ち着かない状態が続くことがあります。

イライラしたり、歩き回ったり、強い言動が出てきたりと、怒りが外に向かうことが多くなります。介護者はなだめようとしますが、認知症の人は自分自身でコントロールできない不快感に襲われているため、どうにもできません。
このように認知症の方は便秘を起こさないように、腸内環境を整えていくことが大切になります。
腸内環境のカギは腸内細菌
「脳腸相関」のカギとなるのが腸内細菌です。
腸内環境が乱れると便秘につながり、便秘は認知症の方の不快感や落ち着きのなさを強めることがあります。
腸内には約1,000種類、約100兆個の細菌が生息しており、重さにすると約1〜1.5kgにもなると言われています。
注目はバクテロイデス菌(日和見菌)
約100兆の細菌は、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌、大腸菌やウェルシュ菌などの悪玉菌、そしてバクテロイデス菌などの日和見菌に大きく分類されます。日和見菌は、善玉菌が優位になれば善玉菌として働き、悪玉菌が優位になれば悪玉菌として働いて、有害物質を発生させます。

注目されているのが、バクテロイデスという腸内細菌です。国立長寿医療研究センターが、もの忘れ外来を受診した128人を調べた研究(2019年)では、認知症の人はバクテロイデスが多いタイプの割合が低い傾向がありました。ただし、腸内細菌が認知症に影響しているのか、認知症になったから腸内環境が変わるのかは、まだ分かっていません。
それでも、便秘が続くと不快感から落ち着かなくなる方が多いのは、ケアの現場でよく見られることです。無理なくできる腸内環境のケアは、取り入れる価値があります。
参考:認知症と腸内細菌の関連について(国立長寿医療研究センター・2019年)
便秘解消に効く食べ物 3つのポイント
腸内環境を整えるには、善玉菌が働きやすい食事を心がけることが基本です。食物繊維・オリゴ糖・発酵食品の3つを、毎日の食事に少しずつ取り入れてみましょう。
食物繊維
便のかさを増やし、腸の動きを促します。水溶性は便をやわらかくし、善玉菌のエサにもなります。
食材例
海藻(ワカメ・ヒジキなど)、きくらげ、寒天、切り干し大根、ライ麦・オートミール、らっきょう、りんご・キウイなどの果物
オリゴ糖
ビフィズス菌などの善玉菌のエサになり、増えるのを助けます。
食材例
牛乳、はちみつ、アスパラ、玉ねぎ、大豆、バナナ
発酵食品
乳酸菌などを含み、腸内環境を整える働きが期待できます。
食材例
キムチ、ヨーグルト、味噌、納豆、ぬか漬け
きくらげ・切り干し大根・らっきょうなど、かたくて噛みにくい食材は、やわらかく煮るなどして食べやすくしましょう。のみ込みに不安がある方は、汁物にとろみをつける方法もありますが、食材や調理の形は、かかりつけ医や歯科医、言語聴覚士に相談してください。
⚠ 注意
便秘が数日以上続く、強い腹痛や吐き気がある、お腹が極端に張る、便に血が混じるといった場合は、食事で様子を見ずに、かかりつけ医に相談してください。また、ワーファリンを服用中の方の納豆や、腎臓病でカリウム制限のある方のバナナ・キウイなどの果物のように、控える必要のある食材があります。食事を変える前に、主治医や薬剤師に確認しましょう。
食物繊維を手軽に補いたいときは、飲み物や食事に混ぜて使える製品もあります。
食物繊維は水分とセットで
食物繊維をとるときは、水分も一緒にとることが大切です。食物繊維は腸の中で水分を吸って膨らむため、水分が足りないと、かえって便が硬くなり、便秘を悪化させることがあります。
MEMO
高齢者の1日の水分量の目安
高齢者が1日に失う水分は約2,500mlです。食事に含まれる水分(約700〜800ml)と、体内でつくられる水(約200〜300ml)を除くと、飲み物で補いたい量は約1,500mlになります。心臓や腎臓の病気などで水分制限のある方は、主治医の指示に従ってください。
食事のときのお茶や汁物に加えて、朝起きたときにコップ1杯の水を飲むなど、こまめな水分補給を心がけましょう。
お茶や水が進まない方には、ゼリーのように食べて水分を補う方法もあります。
よくある質問
食物繊維(海藻・きくらげ・寒天など)、オリゴ糖(玉ねぎ・バナナ・大豆など)、発酵食品(ヨーグルト・納豆・味噌など)が基本です。毎日の食事に少しずつ組み合わせて取り入れましょう。
水分が足りないと、食物繊維が腸の中で水分を吸って、かえって便が硬くなることがあります。食事のときのお茶や汁物に加えて、朝起きたときの水など、水分も一緒にとりましょう。
バナナはオリゴ糖や食物繊維を含み、便秘対策に取り入れやすい果物です。りんごやキウイも食物繊維を含みます。ただ、腎臓病でカリウム制限のある方は、主治医に確認してください。
まず水分を十分にとり、食物繊維や発酵食品を取り入れて様子を見ます。ただ、便秘が数日以上続く、強い腹痛や吐き気、お腹の極端な張り、血便がある場合は、様子を見ずにかかりつけ医に相談してください。
便秘が不快感や落ち着きのなさを強めることはあります。ただ、ほかの原因も考えられるため、排便の記録をつけて様子を見て、気になる変化が続くときは医師に相談してください。
まとめ
腸は「第二の脳」と言われるほど重要な器官です。
認知症の方にとっても、腸を健康に保つことは、落ち着いて過ごすためのヒントになります。
日々スッキリとした排便ができるように、食事と水分を見直して、腸内環境を整えましょう。
それが、認知症の方の落ち着きを支えるケアのひとつになります。




