介護をもっと楽にする 認知症ケア

デイサービスを嫌がる認知症の親へ|元ケアマネが教える解決策3選

2025年2月22日

はじめに:15年以上の経験から断言できること
デイサービスの準備を整えたのに、お迎えの車を前に「行かない!」と拒絶される。その瞬間の脱力感と、仕事や家事の予定が狂う焦燥感は、計り知れないものがあります。

私はケアマネジャーとして10年以上、デイサービスの管理者として5年、多くの方の相談を受けてきました。その経験からお伝えできるのは、適切なアプローチを続けることで、多くの方が無理なく通えるようになるということです。

拒否には必ず理由があり、その理由に合わせた適切な対応策が存在します。この記事では、家族だけで抱え込まず、専門職と連携して現状を打破するための具体的な手順を解説します。

拒否の背景にある理由を整理する

認知症の方にとって、デイサービスへの外出は不安を伴うことがあります。まずは、なぜ拒絶が起きるのか、その背景を理解することから始めましょう。

  • 環境の変化に対する不安

記憶の連続性が保ちにくくなると、場所や人に対して馴染みが持てず、警戒心が生じやすくなります。

  • 身体的な不快感

体調が優れない、あるいは便秘などの不快感があるときに、それをうまく言葉にできず「行きたくない」という拒否として表れる場合があります。

本人の内側にある「行きたくない原因」が見えてくると、家族だけで解決しようとして無理を重ねてしまいがちです。しかし、こうした心理的・身体的な壁を一つずつ取り除くには、プロの視点による「環境の再構築」が欠かせません。

そこで、家族の負担を減らし、デイサービスを安定して利用するための具体的な方法を整理しました。ケアマネジャーや施設の担当者と共有し、状況を整えていくための参考にしてください。

チームで取り組む「通所の仕組みづくり」

施設側の細かな工夫を引き出すには、ケアマネジャーを窓口として連携することが重要です。具体的には、以下のポイントをケアマネジャーへ伝え、施設側と調整してもらいましょう。

1. 頻度を調整して習慣化を促す

特に認知症の方は、時間の経過とともに記憶が曖昧になりやすいため、生活の中に「毎日同じリズム」を作ることが安心感に繋がります。間隔が空きすぎると、通うたびに「知らない場所へ行く特別なイベント」になってしまい、緊張や拒絶が強まる原因となります。

導入初期はあえて通所頻度を多めに確保し、デイサービスを日課の一部として組み込んでみてください。たとえ内容を具体的に覚えていなくても、「ここは安心できる場所だ」という感覚的な印象が定着すれば、通所への抵抗は自然と減っていきます。

【事例:週1回から週4回へ増やしたことで安定したケース】
導入当初、週1回の利用では毎回「ここはどこだ」「帰る」と混乱されていた方の事例です。ご家族と相談し、あえて1カ月間だけ週4回に増やしたところ、デイサービスが「たまに行く場所」から「いつもの場所」へと変化しました。スタッフの顔や建物の雰囲気に馴染んだことで、次第に笑顔で過ごせる時間が増えていきました。

もちろん、ずっと回数を多くしなければならないわけではありません。生活リズムが整い、本人の状態が安定した段階で、徐々に回数を減らして様子を見ることも可能です。まずは「慣れること」を最優先に、ケアマネジャーとスケジュールを検討してみましょう。

2. 顔なじみのスタッフを増やす

毎回違うスタッフが迎えに来ると、本人の戸惑いや警戒心は強くなります。一定期間、送迎スタッフを固定してもらうなど、「安心できる人」との接点を重点的に作るよう依頼してみましょう。

スタッフとの信頼関係が深まれば、「この人が言うなら行ってみようか」と、通所のきっかけに繋がります。また、お迎えを担当したスタッフが施設に到着してからも継続して関わることで、環境の変化による不安を和らげ、スムーズな定着に結びついたケースも多くあります。

【事例:お迎えを「お散歩」に変えた工夫】
デイサービスを拒んでいたある利用者の事例です。自宅と施設が近距離だったこともあり、導入初期の数回、決まったスタッフが車いすでお迎えに来てくれました。

そのスタッフは「施設へ行きましょう」ではなく「一緒にお散歩に行きましょう」と声をかけ、外の空気を楽しみながら自然な形で連れ出してくれました。このように本人に合わせた関わり方を共有することで、家族の負担が軽減されることがあります。

こうした「人を限定する」工夫は、介護サービス全般に共通する視点です。

例えば、訪問介護を毎日2回利用する場合、毎回違うスタッフが来れば1週間で14人と接することになります。これでは認知症のない方でも落ち着かないのは容易に予想できます。

導入当初こそ関わる人数を絞り、特定の顔ぶれに慣れてもらうことが、本人の安心と環境への定着を早めることにつながります。

3. ヘルパーによる「送り出し」の検討

家族が声をかけると反発してしまう場合でも、ヘルパーという「他者」が介在することで、スムーズに身支度が進むことがあります。プロの手を借りることで、朝の心理的な摩擦を減らすことが可能です。

【事例:ヘルパーの介在で通所が安定したケース】
デイサービスの拒否が強く、家族が通所を諦めかけていた方の事例です。朝の送り出しをヘルパーに依頼したところ、本人は驚くほどスムーズに身支度を済ませ、車に乗り込むことができました。

家族は「自分たちの時はあんなに嫌がったのに」と複雑な心境でしたが、これは第三者が入ることで本人に「外向きの意識」が芽生えた結果です。2カ月後には通所が習慣化し、家族による送り出しでも拒否なく通えるようになりました。

施設側で取り組める工夫の事例

デイサービス側でも、専門的な視点から以下のようなアプローチを行うことで、本人の意欲を引き出せる場合があります。ケアマネジャーを通じて、施設側へ以下のようなアプローチが可能か確認してみましょう

1. 利用者同士の交流を活用する

スタッフではなく、同年代の利用者に「一緒に行きましょう、楽しいですよ」と声をかけてもらう方法です。第三者に迎えられることで、本人の中に「歓迎されている」「自分を待っている人がいる」という外向けの意識が芽生え、スムーズな通所に繋がることがあります。

2. 到着時間の個別調整

他の利用者が乗っている送迎車が自宅前で待っていると、家族も本人も焦りを感じ、それが拒絶を強める原因になることもあります。デイサービスの利用が定着するまでは、他の利用者と時間をずらした「個別での送迎対応」が可能か相談してみましょう。

本人のペースに合わせて迎えに来てもらうことで、周囲に気兼ねすることなく、落ち着いて車に乗り込めるようになります。

3. 専門職へ相談する際の「適切な進め方」

デイサービス側への細かなリクエストは、家族が直接施設へ交渉するよりも、まずはケアマネジャーに相談するのが最もスムーズです。ケアマネジャーは「家族の困りごと」と「施設の対応可能範囲」を客観的に判断し、プロ同士の視点で調整を行ってくれます。

もし、送迎時間の調整やスタッフの固定など、複数の課題を同時に解決したい場合は、「サービス担当者会議」の開催を依頼するのも一つの方法です。

Memo

サービス担当者会議とは
本人に関わる専門職(ケアマネジャー、デイサービス職員、ヘルパー等)と家族が一堂に会する会議です。

この場で「朝の拒否をなくし、安定して通えるようにする」という目標を全員で共有することで、各サービスがバラバラではなく、一つのチームとして動けるようになります。

身体面からアプローチする

精神的な安定は、身体のコンディションと深く結びついています。一見、拒絶とは無関係に思える以下のポイントが、実は解決の糸口になることが多くあります。

1. 水分管理:1日1,500mlの目安

軽い脱水状態になるだけで、認知症の方は意識の混濁やイライラが生じやすくなります。これが「理由のない拒絶」の正体であることも少なくありません。日頃から1日1,500mlを目安に、こまめな補給を意識しましょう。

特にデイサービス通所日の朝は、お迎えまでに200〜300mlの水分を摂るように心がけてみてください。また、食事から摂取できる水分も非常に重要です。朝食をしっかり摂ることで、水分とエネルギーの両方が補給され、穏やかな朝を迎える土台となります。

2. 排便のケア:不快感の除去

便秘による腹部の膨満感や不快感は、周辺症状(BPSD)を悪化させる大きな要因です。排便のリズムを整え、身体的なスッキリ感を得ることで、気分のムラが落ち着くケースが多く見られます。

本人にとって、言葉にできない「お腹が苦しい」「なんとなく不安だ」というモヤモヤした気持ちが、「デイサービスなんて行かない!」という激しい拒絶として表れてしまうのです。

ただし、下剤の使用は慎重に行いましょう。激しい腹痛や、夜中の排便による不眠を招くと、かえって翌朝の拒否を強める恐れがあります。まずは食事や水分でリズムを整え、お薬については主治医に相談しながら調整するのが安心です。

※周辺症状(BPSD)とは:認知症の症状で、「急に怒り出す」「ソワソワして歩き回る」「ひどく落ち込む」といった心の混乱や行動のこと。

家族としての向き合い方

プ最も大切なのは、「本人の言葉を真っ向から説得しようとしない」ことです。

認知症の方は、論理的な正論で説得されるほど「責められている」と感じ、頑なになる傾向があります。もしその日、どうしても行けなかったとしても、それは家族の責任ではありません。

介護関係者と「今日はこういう日だった」と現状を共有し、まずは2週間から1ヶ月程度を試行期間と考え、焦らずに環境を整えていきましょう。状況は必ず変化していきます。

まとめ

デイサービスの拒否は、本人の不安や体調のサインでもあります。

  • 通所を習慣化させる
  • 「人」を通じた安心感を作る
  • 身体の不快感を取り除く

これらを専門職と共に進めていくことで、状況は少しずつ変化します。家族だけで抱え込まず、プロの知恵と手を借りながら、無理のない介護生活を目指していきましょう。

結構大事なこと、こちらも参考に!

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