仕事と介護の両立

親の介護は仕事をしながらできる?できない?職場にどう伝える?

2024年4月22日

こんな悩みはないでしょうか?

  • 仕事と介護は両立できる?
  • 支援制度って何があるの?
  • 職場や上司への伝え方がわからない

仕事と介護を両立する際、職場に相談している人はどのくらいいるのでしょうか。企業の規模や支援制度の整備状況によっても、その割合は異なるかもしれません。

本記事では、働きながら家族の介護を行うことになった場合に活用できる制度の内容や、職場への相談方法について詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 仕事と介護の両立支援制度の内容がわかる
  • 勤め先が相談に応じてもらえない場合の相談先を知る
  • 職場や上司に「介護をしている」と伝える方法がわかる

仕事と介護を両立するための制度「育児・介護休業法」を知っていますか?

仕事と介護の両立は決して容易ではなく、心身の負担から仕事を辞めてしまう「介護離職」も少なくありません。

こうした状況を受け、国は「育児・介護休業法」(以下、介護休業法)を制定し、仕事と育児・介護の両立を支援するための制度を設けています。

育児に関しては、「育休」という言葉が広く浸透し、「育児休業」や「産後パパ育休」を導入する企業が増えてきました。一方で、介護に関する制度として「介護休暇」や「介護休業」がありますが、育児休業と比べると利用率が低く、認知度も十分とは言えません。

あなたの職場はどうなっていますか?介護休業法とは

法律で定められた「育児・介護休業法」の内容は以下の通りです。

制度概要
介護休業介護が必要な家族1人につき通算93日まで取得可能で、最大3回まで分割して取得できます。
介護休暇介護が必要な家族1人につき年5日まで、2人以上であれば年10日まで取得可能で、1日単位・半日単位・時間単位で分割して取得できます。
所定労働時間の短縮等の措置介護が必要な家族1人につき利用可能で、勤務時間の短縮・フレックスタイム制度・時差出勤・テレワークなどの方法で調整でき、一定期間の利用が可能です。
所定外労働の制限介護期間中は、所定外労働(企業が定めた勤務時間以外の労働)を行わないことを請求できます。請求回数に制限はありません。
時間外労働の制限介護期間中は、時間外労働が1カ月24時間、1年で150時間を超えないことを請求できます。請求回数に制限はありません。
深夜業の制限介護期間中は、22時~5時までの深夜時間勤務の免除を請求できます。1~6カ月以内の期間で請求でき、請求回数に制限はありません。
転勤に対する配慮事業主は、就業場所の変更を伴う配置転換を行うことで介護が困難になる労働者がいる場合、その労働者の介護の状況に配慮しなければなりません。
不利益取り扱いの禁止事業主は、介護休業などの制度の申請や取得を理由として解雇や降格、減給などの不利益な取り扱いをしてはなりません。
介護休業等に関するハラスメント防止措置事業主は、介護休業などの制度の申し出や利用において、労働者の就業環境が害されないように、労働者からの相談に応じ、適切に対応するための必要な体制などを整えなければなりません。
介護休業給付金雇用保険の被保険者が家族を介護するために介護休業を取得した場合、一定の要件を満たせば原則として介護休業開始前の賃金の67%が支給されます。
※労使協定を締結している場合、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者は対象外
※対象家族:配偶者、父母及び子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹及び孫。

介護休業制度|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

勤務先の就業規則に制度が定められていなくても、育児・介護休業法に基づき、介護休業などの制度を利用することができます。
また、企業によっては「介護休業法」以外にも、「仕事と介護の両立支援制度」として独自の制度を設けている場合があります。

勤め先の制度は、将来的に介護を行う可能性がある人も含め、事前に確認しておくことをおすすめします。

制度の認知度は低め制度を周知していない企業は全体の約6割

勤め先が介護休業法を導入しているか、またその利用方法が明確に説明されているかによって、制度の利用しやすさは大きく変わります。制度を導入している企業の割合は年々増えているものの、認知度や理解度が十分ではなく、詳細な説明が不足しているケースも少なくありません。

企業が仕事と介護の両立支援制度の周知をしている割合のグラフ。

厚生労働省 雇用環境・均等局 職業生活両立課「育児・介護の両立に係る現状及び課題」より作成

もし勤め先に相談できる窓口がない場合は、人事部や労務課、または直属の上司などに相談してみましょう。

余裕のある介護をするためにも制度は利用するのが必須

介護は、家族など身近な人が対応しなければならない場面が多くあります。介護保険の手続きや通院介助、急な体調の変化への対応などで、仕事を数日間休む必要が生じることもあります。また、時短勤務が必要になったり、残業が難しくなることもあるでしょう。

こうした状況に備えるためには、勤め先の制度を事前に確認し、積極的に活用することが重要です。仕事と介護を両立するために利用できる支援策を調べ、活用しながら無理のない働き方へと調整していきましょう。

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相談に応じてもらえない・・・勤め先が理解してもらえない場合の相談先

職場で介護について相談できない、または相談を受け付けてもらえない場合は、「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)」へ相談することができます。各都道府県に設置されており、介護に関する問題解決のサポートを行っています。

この窓口では、育児・介護休業、男女均等取扱い、パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理、職場のパワーハラスメントなど、労働者と事業主の間で生じた民事上のトラブルに対し、解決に向けた援助を提供しています。

介護と仕事の両立で悩んでいる場合は、一人で抱え込まず、専門家に相談しながら解決策を探していきましょう。

職場や上司にどう伝える?

仕事と介護の両立支援制度を利用するには、職場の上司や担当窓口への相談が必要です。しかし、どのように伝えればよいか悩むこともあるでしょう。次に、職場へ相談する際のポイントや伝え方のコツについて詳しく説明していきます。

前提として介護の話は相談しにくい

育児に比べて、介護は相談しづらいと言われています。確かに、育児は子どもの成長に伴い前向きな気持ちで話しやすいですが、親の介護となると病気や体調不良などの問題が中心となり、積極的に話すことに抵抗を感じることもあるでしょう。

特に認知症の家族を介護している場合、相談相手に病気の知識がないと、状況を理解してもらうのが難しいことがあります。例えば、外出時に道に迷ってしまう、予期しない言動で周囲を戸惑わせる、夜中に大きな声を出すなど、説明しづらく、相談することに抵抗を感じることもあるでしょう。

相談するからといって事情をすべて話す必要はない

仕事と介護の両立支援制度を利用する際の手続きでは、自分の介護状況の詳細を話す必要はありません。もちろん、具体的な状況を伝えたほうが、介護の負担や早退・遅刻への理解を得やすい場合もあります。しかし、「介護をしている」という事実だけでも、制度を利用するためには十分です。

ただし、キャリアプランを考えるうえで、職場の上司など信頼できる人に対して、介護の見通しや必要なサポートについてある程度共有しておくと、より適切な支援を受けやすくなります。

介護を続ける中で相談しなければならないこと

職場の上司や人事担当者と相談すべき内容は、仕事と介護の両立の段階によって変わってきます。以下の3つの段階に分け、それぞれの時期に適した相談のポイントを押さえることが重要です。

【1.相談・調整期】
介護が始まったばかりの時期です。この段階では、介護の見通しが立っていないため、当面の働き方や両立支援制度の利用について希望を伝え、相談しながら調整を進めます。

【2.両立体制構築期】
在宅介護のプランが定まり、介護サービスの利用が始まる時期です。仕事と介護のバランスを見極めながら、中長期的な働き方について検討していきます。

【3.両立期】
介護サービスの利用が安定し、仕事と介護のスケジュールが定着する時期です。この段階では、定期的に上司や人事担当者とフォローアップの面談を実施し、必要に応じて働き方の見直し・調整を行うことが求められます。

どの段階でも、面談を通じて働き方の希望を明確に伝え、協力しながら最適な環境を整えていくことが大切です。

まとめ:後に続く人のことも考え、制度を利用する

介護は相談しづらいことから制度を利用せず、限界に達すると仕事を辞めてしまう「介護離職」が今後さらに増加すると予測されています。

より多くの人が仕事と介護を両立できるよう、企業は制度の利便性を高め、迅速に整備を進める必要があります。

また、後に続く人たちのためにも、仕事と介護を両立する際は制度を積極的に活用し、育児と同様に安心して働きながら介護ができる社会を目指していきましょう。

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