仕事と介護の両立

ワンオペ介護と仕事を両立する方法|乗り越えるためのポイント

2024年8月18日

「ワンオペ介護」という言葉を耳にする機会が増えていませんか?最近では、仕事とワンオペ介護を両立せざるを得ないケースが増加しており、多くの課題が浮き彫りになっています。

ワンオペ介護の深刻な課題

「ワンオペ」の語源は「ワンオペレーション」で、飲食店やコンビニなどで従業員が一人で営業を行う状況を指す言葉です。この言葉が転用され、さまざまな事情で一人で子育てを行う状況を「ワンオペ育児」と呼ぶようになりました。

同様に、「ワンオペ介護」は、頼れる身内などがいない中で、一人で介護を行うことを指します。

ワンオペ介護は増えていく

少子高齢化が進む中、在宅でのワンオペ介護はさらに増加していくと予測されています。

一人っ子や独身の場合、介護が始まるとその負担が一人に集中してしまいます。また、兄弟姉妹がいる場合でも、「住まいが遠く離れている」「子どもが幼い」などの理由から協力が難しい状況が生じることがあります。

身体的な負担が大きくなる

ワンオペ介護では、必要な介護や家事をすべて1人で担うため、身体的な負担が大きくなりがちです。トイレ介助や車いすへの移乗、入浴介助、歩行介助といった作業は、腰痛や肩こりを引き起こしやすく、体調不良に悩む人も少なくありません。

さらに、日々の家事も欠かせません。食事の準備は毎日必要ですし、買い物や洗濯も適度に行う必要があります。やり残した家事を休日にまとめて行う場合、介護との負担が重なり、休息を取る時間がほとんどなくなることもあります。

精神的に追い込まれやすい

認知症の親を介護する場合、「目が離せない」状態が続き、時間的な拘束が増えることがあります。また、排せつや入浴の介助は、介護者にとって精神的な負担になることも少なくありません。

ワンオペ介護では、時間的な拘束や苦手な介助に直面しても、頼れる人がいないため、1人で対応せざるを得ない状況に陥りやすいです。その結果、無理を重ねて限界まで頑張り続けてしまうことがあります。

こうした状況が長く続くと、ストレスが蓄積し、自分の気持ちをうまくコントロールできなくなる恐れがあります。その結果、「介護うつ」や「虐待」といった深刻な事態に発展するリスクが高まります。

仕事とワンオペ介護の両立

介護者が働いている場合、状況はさらに深刻化することがあります。夜中の認知症対応や排せつの介助で睡眠が妨げられると、疲労や睡眠不足が蓄積し、その影響で仕事のパフォーマンスが低下します。注意力も落ちるため、ミスが増えたり、思わぬ事故が発生するリスクが高まります。

さらに、職場に迷惑を掛けているという負い目から、介護を理由に仕事を辞める人も少なくありません。介護離職は年間約10万人にのぼり、収入が途絶えることで経済的不安が生じるため、これらの状況は深刻な社会問題となっています。

ワンオペ介護と仕事を両立するポイント

ここからは、働きながら1人で介護を担う場合に活用してほしい制度や心構えについてお伝えします。

ポイント1:地域包括支援センターに相談する

介護が始まったら、まず地域包括支援センターに相談しましょう。地域包括支援センターは、介護・医療・保険・福祉の面から高齢者を支える総合相談窓口で、各地域に設置されています。

高齢者に関わるあらゆる相談が可能で、適切なアドバイスや介護保険の利用につながるサポートを提供してくれます。介護が始まる前の段階でも、不安や心配事について相談することができます。

ワンオペ介護と仕事を両立するには、初動が非常に重要です。相談する際、自分が「ワンオペ介護者」であることを伝え、早い段階で介護の協力者とつながる体制を整えておきましょう。

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ポイント2:介護保険サービスを利用する

仕事と介護を両立するためには、介護保険サービスの利用が欠かせません。2000年に始まった介護保険制度では、介護を受ける人が要介護認定を受けることで、必要なサービスを1~3割の費用負担で利用できます。

【在宅介護で活用できるサービス例】

訪問介護(ホームヘルパー)
自宅を訪問し、身体的な介護や家事支援を行います。

通所介護(デイサービス)
日帰りの施設で、機能訓練、入浴、昼食、レクリエーションなどを提供します。

短期入所生活介護(ショートステイ)
介護施設に最短1日から宿泊し、必要な介護や生活支援が受けられます。

福祉用具貸与・福祉用具購入
電動ベッド、歩行器、車いすなどの用具をレンタルできます。排せつに関する福祉用具は購入費の補助も受けられます。※一部サービスには利用条件があります。

認知症の方がいる場合、日中「目が離せない」状況が続くことから、仕事とワンオペ介護を両立するのは非常に困難です。そのような場合には、デイサービスを連日利用するのも一つの方法です。

介護保険サービスは、介護を必要とする人の状態や介護者の事情に合わせて、複数のサービスを組み合わせて利用することが可能です。

Memo

ある認知症の方は、月1回の通院以外は毎日デイサービスを利用していました。本人が特に負担を感じていなければ、このような利用方法に問題はありません。

介護者の仕事が土日休みの場合、しっかりと休息を取れるよう、土日営業のデイサービスを利用するのも効果的な方法です。

ポイント3:介護休業制度等を利用する

厚生労働省は「介護離職ゼロ」を目指し、仕事と介護の両立を支援する施策として「育児・介護休業法」に基づく制度を設けています。勤務先に制度がない場合でも、法律に基づいて利用することが可能です。

制度を利用するには、勤務先に介護をしていることを伝える必要があります。職場の上司や人事・労務担当者に相談し、必要に応じて制度を活用していきましょう。

注意

介護休業制度等を利用して長期間休みを取り、介護に専念することがないようにしましょう。介護者自身が介護に深く関わる状況が続くと、それが日常化し抜け出せなくなる可能性があります。介護は介護保険サービスを活用し、プロに任せることが、仕事を続けながら介護を継続する秘訣です。

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ポイント4:頼る・任せる・依存する

「介護は親孝行」「親の介護を子が担うのは当たり前」と考え、誰にも相談せずに介護を始めるケースは少なくありません。

しかし、少子高齢化が進む現代では、担う側の負担が非常に大きく、特にワンオペ介護では限界に達しやすい状況です。

介護者自身の生活や仕事を犠牲にすることなく介護を続けるためには、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談することが大切です。「頼る・任せる・依存する」つもりで支援を受けながら進めていきましょう。

※ケアマネジャーとは、要介護・要支援認定を受けた方のケアプランを作成し、適切な支援につなげるスペシャリストです。

ポイント5:自分を優先した生活スタイルを維持

介護は「介護を受ける側」を中心に生活が組み立てられる傾向があり、介護者への配慮が後回しになりがちです。その結果、介護者は仕事への目標を失い、楽しんでいた時間を奪われ、気持ちに余裕をなくすことがあります。さらに、介護を受ける側との関係が悪化する可能性もあります。

こうした状況を防ぐためには、介護を受ける側の生活と自分自身の生活を分けて考えることが大切です。自分の生活を優先し、健康を保ちながら続けられる介護スタイルを取り入れていきましょう。

離れて暮らしている場合は、無理に同居する必要はありません。すでに同居している場合は、できるだけ介護の負担を減らせる体制を整えることが望ましいです。

介護に関わる専門家(プロ)に、自分が対応できる範囲を伝え、無理のない体制を構築するための協力をお願いしましょう。

Memo

ワンオペ介護では、テクノロジーの活用が欠かせません。介護が必要な親にスマートフォンを持たせたり、テクノロジーを活用した見守りサービスを利用したりすることで負担を軽減できます。また、介護関係者との連絡には電話ではなくSNSを活用するなど、便利なツールを積極的に取り入れて介護をより効率的に進めましょう。

まとめ

ワンオペ介護と仕事を両立するには、「介護はプロに任せる」「介護保険サービスを最大限活用する」という考え方が重要です。介護者自身が安心して仕事と介護を両立できるよう、専門家に依存して任せる体制を整えることが大切です。

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