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その「認知症の悪化」、実は水分不足かも|元ケアマネが教える解決の科学

2024年5月4日


「昨日は穏やかだったのに、今日は急に怒り出す」
「午前中は動けていたのに、夕方になると足もとがふらついて危なっかしい」

こうした「時間帯や日によって生じる症状の激しい変動」にどう対応すべきか悩み、心身ともに疲れ果ててはいないでしょうか。実は、これらの症状の裏側には、認知症そのものだけでなく、「細胞レベルでの水分不足(脱水)」が隠れているケースが非常に多くあります。

私はケアマネジャーとして10年以上、多くの在宅介護の現場を見てきました。そこで確信しているのは、「1日の水分量を整えるだけで、不穏な行動が消失し、立ち上がりや歩行といった日常の動作が目に見えて安定する」高齢者は驚くほど多いという事実です。

なぜ水分だけでこれほど劇的な変化が起きるのか。その理由を科学的な数値とともに解説します。

高齢者の体は「常にカラカラ」という事実

若い人の体は約60%が水分ですが、高齢になると筋肉量の減少に伴い、貯水能力が低下して約50%まで減少します。

体重50kgの方であれば、体内の水分量はわずか25リットル。ここから1日の「出入り」を計算すると、綱渡りのようなバランスで生活していることがわかります。

体から排せつされる水分量を示した図。
摂取するべき水分量を示した図。

この「飲み物1,500ml」の不足に加え、食欲が落ちて食事の摂取量が減ることも、脱水を加速させる大きな原因となります。こうして体内の水分がわずか1〜2%減るだけで、脳や体の機能に狂いが生じ、「認知症が悪化した」と見間違えるような混乱や不調を引き起こしてしまうのです。

体内の水分が減ると、どうなる?

転倒した高齢者の写真

たった数百ミリリットルの不足が、具体的にどのような不調を招くのか。段階別に見ていきましょう。

1~2%の水分が減少して起こること

(体重50kgの方なら、コップ1〜2杯分:250〜500mlの不足)

わずかな量に思えますが、高齢者の体にとっては大きな変化です。血液の濃度が上がり、脳へ酸素が届きにくくなることで、心身の機能に影響が出始めます。

脱水で起こる症状

  • 体がだるく、疲れやすくなる
  • うとうと、ぼんやりしている時間が増える
  • 集中力や注意力が落ち、反応が遅くなる
  • 認知症の場合
    脳の血流不足による「頭がすっきりしない不快感」が、理由のないイライラや感情の爆発として現れます。落ち着きを失って不穏な状態になり、周囲を困惑させる行動が目立ち始めます。

2~3%の水分が減少して起こること

(体重50kgの方なら、500〜750mlの不足)

体の中から熱を逃がすための水分が足りなくなり、まるでお風呂でのぼせたときのように、体の中に熱がこもった状態になります。

脱水で起こる症状

  • 体が熱っぽくなる(微熱が出る)
  • 血液の濃縮がさらに進み、**血管が詰まりやすくなることで、脳梗塞などのリスクが急上昇する
  • 認知症の場合
    脱水によって意識がぼんやりすると、さらに認知力が低下してしまいます。その結果、物事を理解し、判断することがより難しくなります。周囲の介助(着替えや排泄介助など)を「攻撃」と誤解しやすくなり、強い拒否や激しい言動など、パニックに近い状態に陥ることがあります。
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5%の水分が減少して起こること

(体重50kgの方なら、1,250mlの不足)

筋肉や神経をスムーズに動かすための水分が枯渇し、身体のコントロールが効かなくなります

脱水で起こる症状

  • 足もとがふらつき、一つひとつの動作が不安定になる
  • 持久力が落ち、少しの距離でも歩くのが辛くなる
  • 動悸や息切れがしやすくなる
  • 認知症の場合
    動作のふらつきに加えて混乱も深まるため、転倒や骨折のリスクが非常に高い、極めて危険な状態です。

7%の水分が減少して起こること

(体重50kgの方なら、1,750mlの不足)

脳細胞が正常に機能できなくなる限界に近い状態です。

脱水で起こる症状

  • いない人と話すなど、幻覚・幻聴が現れる
  • 意識が混濁し、会話が成立しなくなる
  • 認知症の場合
    興奮を伴う「せん妄」状態となります。理性が失われているため、必要な水分補給すら拒否してしまい、さらに脱水が悪化するという負のループに陥りやすくなります。

10%の水分が減少して起こること

(体重50kgの方なら、2,500mlの不足)

体内の水分が10%失われると、生命を維持するための臓器が正常に動かなくなり、「死に至る」極めて危険な状態です。

脱水で起こる症状

  • 各臓器の機能が停止し、腎不全などを引き起こす
  • 強い意識障害が起こり、呼びかけにも反応しなくなる

知っておきたいリスク
夏の猛暑で熱中症になり亡くなるのは、この「10%の脱水」が原因です。高齢者は喉の渇きを感じにくいうえ、最初に意識がぼんやりしてしまいます。そのため、「自分から助けを呼ぶことができない」まま、手遅れになってしまう恐れがあります。

事例

水分1,500mlで「穏やかな日常」を取り戻したAさん
私が担当した80代の女性Aさんは、夕方の興奮と激しい介護拒否に家族が限界を感じていました。しかし、1日の飲水量を計測すると、わずか600mlでした。

そこで、以下の対策を徹底しました。
・習慣化: 起床時、毎食後、おやつ、入浴前後、寝る前にコップ1杯(150ml)ずつ飲む
・工夫: お茶を拒むときは、寒天ゼリーなど「本人が好む味と食感」を活用。

2週間後、Aさんの夕方の興奮は消失しました。脳への血流が安定したことで、立ち上がりなどの動作も安定し、ご家族と笑顔で会話できるまでに回復したのです。

どうしても「水やお茶」が進まない時の工夫

脱水で座り込むシニアの写真

「1,500mlも飲めない」という時は、飲み物だけでなく、形を変えて取り入れてみましょう。

  • つるんとした食感で補給

寒天ゼリーやところてんは、そのほとんどが水分です。同時に食物繊維も摂れるため、脱水による便秘を防ぐのにも一役買います。

  • 「好きなもの」を優先する

「体に良いもの」を無理に勧めるより、サイダーやコーヒー、ジュースなど、ご本人が昔から好きだった味を楽しみとして取り入れましょう(※糖分の摂りすぎには注意が必要です)。

  • 「経口補水液」を賢く使う

効率よく水分が吸収されるよう調整された飲料です。「最近あまり食べていない」「急に認知症の症状がひどくなった」など、脱水が疑われる際の心強い味方になります。
※塩分が含まれるため、腎臓などの持病がある方は、必ず事前に医師へ相談してください。

【大切なお願い】
心不全や腎機能の低下などにより、医師から「水分制限」の指示が出ている方は、必ず主治医の指示に従って摂取量を調整してください。

飲まない、困った!の答えあります

まとめ:水分補給は「最高の介護技術」である

「水を飲ませるだけ」のこと。しかし、脱水を防ぐことは、薬以上に以下の効果を発揮します。

  • 不穏な行動の抑制: 脳の血流不足による不快感を取り除く。
  • 動作の安定: 筋肉と神経の連携をスムーズにし、ふらつきを抑える。
  • 便秘の解消: 便秘による腹痛や不快感からくる不穏を防ぐ。
  • 嚥下機能の維持: 唾液が増え、誤嚥性肺炎のリスクを下げる。

認知症の症状だと思い込んでいた「困った行動」の多くは、実は水分不足のサインかもしれません。まずは今日から、「あとコップ2杯」増やす工夫から始めてみませんか?

参考文献:高齢者の脱水症|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)

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